繰り返し
……朝。その日は目が覚めたら、何だか変な感じがした。
白い壁紙に濃い褐色のフローリング。そこはいつも通りの私の部屋。……なのだけど、どこか空気が無機質というか。ガラスのベールに包まれたような、自分の身体が縮んだような。……そんな変な感じがした。
とりあえず、私が窓を開けると風がふわっと流れ込んだ。冷たいような、
それでも、外はいつも通りの青い空。どこかで見たようなモコモコの雲が浮かんでいた。
「綿菓子みたい」
自然と
――アホー、アホー……
そうそう。こんな風に人の言葉みたいに鳴いていた。
……って、え。えっ?嘘?
待って?何これ?どうして?何で?……どうして昨日と同じことが起きるわけ?
身体からスッと血の気が引いていく。きっと今の私は真っ青な顔をしているだろう。……こんなに良いお天気なのに。
窓越しの澄んだ青色に、思わず冷たい
時は進んで、お昼どき。
「……何かあったの?」
じっと私の顔を見つめる、友人の葉月。
「祢子。あんた、今日一日なんか変だよ」
そこは学生で溢れる大学の食堂。談笑する声や食器の音が響く。それはいつも通りなのだけど、今日の私は落ち着かなかった。
「……何か嫌なことあった?」
何かがあったわけではない。でも、何をしていても、既視感が付きまとう。というか、気にし始めると、常に既視感の有無が気になってしょうがない。おまけに、異世界に紛れ込んだように、すべてのことがぼんやりしていて他人事。
だぁーっ!もうっ、何なのこれ!
……この自分の身体の異変が、もう不安で不安で堪らなかった。
――誰かに相談したかった。だけど。
「……ごめん。……レポートが溜まってて。最近少し寝不足みたい。……ごめんね」
心配そうな彼女に、そう精一杯微笑んだ。だって、
だって、彼女を信頼してるから。いろんなことを相談している彼女だから。きっと彼女を困らせてしまうに違いないから。
「……そっか。大変やね。
でも、無理し過ぎちゃ駄目だよ」
彼女はそれだけ言って、明太子パスタを頬張った。口元に淡いピンクのソースをつけた彼女の笑顔に、私の頬もふにゃっと緩んだ。この優しさが私はとても嬉しくて。
……そして、とても申し訳なかった。だから、私は相談なんてできなかった。だから、私は。だけど、私は……もう――。
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