チビッ子ギャングの生態

羽弦トリス

第1話担任・小山照代

1学期の始業式。

噂の5年1組の担任、小山照代こやまてるよは、朝から溜め息をついていた。

5年1組の名簿を見ると、この小学校のギャングと呼び声高い、杉岡健、山口洋一、江戸川阿南、中川理恵、出原友美の5人が勢揃いしている。


「わたし達の担任は小山よ!ウサギみたいに怖がりの先生」

中川理恵は、江戸川阿南えどがわあなんに言った。

「ボクに解けない謎はない!先ずは入り口の扉に黒板消しを挟むのです。そして、あの教師の出鼻をくじくのだ!」

「さっすが、阿南君。オレは先生の椅子に画ビョウを仕込んだぜ。みんな~、今日から5年1組は、オレたちのもんだ~」

山口洋一はにやけている。


キーンコーンカーコン


小山は扉を開いた。瞬間、頭に黒板消しが命中した。

「……誰?こんなことしたの」

「さぁね~、みんな授業放棄だ」

「君は杉岡健君だね?」

「あぁ、そうだよ!ネーム見りゃわか……」


ゴツッ


「あばばば、アゴが~」

「大人をなめんじゃねぇ」

「え、江戸川君が、やりました」


「君が江戸川君?」

「え、江戸川阿南です」


バッチーン


「グハッ!」

「江戸川阿南君、これでおあいこだね」

「お、お釣りが来ます」

阿南はほっぺたに手を当てている。


「さあ、みんな、今日から担任の小山照代です。皆さん一人ずつ自己紹介を」

小山は椅子に座った。


「って~誰、画ビョウを置いたの?」

「杉岡健君で~す」

「う、裏切りやがったな!」


バキッ!


「は、鼻血が~」

「先生のお尻に画ビョウ刺したんだから、お、あ、い、こ」


こうやって、1学期が始まったのである。

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