私、案内人と館長を務めます。佐藤と申します。
@ss9
第1話プロローグ
皆さま、お初にお目にかかります。私、汽車の案内人と人生シアターと呼ばれる映画館の館長を務めております。佐藤と申します。以後お見知りおきを。
さて、皆様は、さぞ「心残り汽車?」「人生シアター?」とは、と疑問を持たれたと思います。
その疑問を解消するため、早速ではありますが、案内人と館長を務めさせていただている私から、ご説明させていただきたいと思います。
はじめに、一つだけわかりやすくご説明しますと、私が担当しております役割は、亡くなられて生前に悔いや心残りをしてしまった人が、天国に安心して逝っていただけるように、お手伝いをさせていただく役割です。
このことを頭に留めておいていただければ、他のご説明は読み飛ばしていただいても構いません。気になる方は、続きをお読み下さい。
では、「心残り汽車」についてご説明させていただきます。まずは、外観についてです。
外観は、明治時代の日本で走っていたような時代を感じるSL風のような作りとなっております。
「心残り汽車」は、全5両編成となっております。その汽車の先頭からご説明いたします。
先頭にある車両を「蒸気室」と呼びます。汽車の心臓部でございます。車で例えますと、エンジンになります。
その後ろに、石炭を積んだ車両がございます。
さらに、後ろには、3両の客車がございます。木造の内装に、木造の椅子と両サイドに窓がある。現代の電車とは、違ったシンプルな作りになっております。
汽車の内装と外観については以上になります。
続きまして、なぜに汽車?について、お話しいたします。
はっきり申し上げますと、私を創造された主が、「なんか!レトロな汽車って好きなんだよな」という理由で採用されました。人生シアターも同様に決定されました。
その汽車では、「天の使い」と呼ばれる光り輝く存在が、亡くなられた方の魂の中で、心残りのある方をこの汽車までお連れしてきます。
私の役目は、汽車に連れてこられた方へのご説明と「人生シアター」へご案内する間の、心残りをお聞きすることが汽車での役目となります。
お話の際には、紅茶などのサービスもございます。
次に、シアターについて、ご説明させていただきます。
先程と同様に、外観からご説明させていただきます。
外観といたしましては、昭和レトロのような、昔ながらの映画館となっております。
まず、入り口の扉を開きますとシアターのあるお部屋まで続く一本の通路となっております。
その通路には、亡くなられた方々の思い出の写真が飾られます。
飾られているお写真は、お通夜の祭壇に飾られているものが壁に飾られるようになっています。
その通路を通って、シアタールームに行きますと、300人が入れる広い空間になっており、正面にスクリーンがございます。
あとは、好きなお席に腰掛けていただきます。
ご希望の方には、塩味のポップコーンとお茶かコーラをご提供しております。
え?他にもメニューを充実させて欲しいですか?
すみません。作っているのは、私でございまして、まともに作れるのが、ポップコーンしか作れないのです。私の努力不足なのですが、ポップコーンしかご提供できないことをご了承ください…
さて、話は戻りまして、スクリーンに流れるのは、亡くなられたご本人視点で振り返ってゆく、これまでの人生となっております。
振り返るのは、その方が印象的だった場面になります。
喧嘩別れした彼のあの時の気持ちって本当はどうだったんだろうなど、気になる場面では、その方の心のうちが、字幕となってスクリーンに描かれるようになっております。
もちろん!ご希望のある方には、映像を止めて、お話を聞いたり、巻き戻したり、最初から見直したりとどこまでもとことんお付き合いいたします。
観覧が終わりますと、大切な人たちの夢の中に現れて、最後に伝えたいことをお伝えするサービスもございます。自分がなくなった後の、大切な方々の気になるその後の日常も少しだけ見ていただけるようにもなっています。
早足でご説明いたしましたが、私が案内人と館長を務める、世界は、このようになっております。
さぁ、今日は、どんな方が来られるのか?
それでは……
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