第17話 ゼルベットの悪事その2
アレンは母の死を知った翌日からも修業を弛む事なく遂行した。
いつしかゼルベット達は、食べ物を置かなくなっていました。
修業開始から60日が経過すると、アレンの両手が温かく光る様になりました。
エンゲメネーがそのことをソフィールに報告しますと、大聖の知るところともなりました。
大聖メノンは過去の100日間断食修業の際に、やはり両手が光る様になり、郷を訪れる人々をそれによって癒やしておりましたが、評判が評判を呼んで訪れる人々が増えていたので、アレンにそれを手伝って欲しいとの伝言が伝えられました。
アレンは快く承諾し、断食修業を続けたままメノンの癒しを手伝う事になりました。
アレンは人々を癒す際に病気を治すだけではなく、どうして病気に成ったのかを教え、他の人達が同じ病気にかからない様、村に帰って皆に教える様にと諭してから帰しました。
それらの知恵は瞑想によって得られたもので、あらゆる対立が病気を生み出している原因であるとアレンは人々に教えました。
人々は村に帰るとそのことを教えはじめましたので、少しづつ人々の争いが減ってゆきました。
その後、アレンの母の死の真相の噂がカミルの耳に入り、カミルが激しく怒ってゼルベットを殺しに行こうとしたことがありましたが、アレンはカミルを諭しました。
「カミル君、君が僕の母の事で怒ってくれている事はとても嬉しいよ。しかし、このことで君に汚れて欲しくないのだよ。これから良い事だけを積み上げて、ずっと人間として生まれて来られる様になって欲しいのだよ、それともオオカミのままの方が良かったかい?」
「いいえ、アレンさん。私はあなたと出逢って本当に幸せです。怒りに任せるよりもあなたを悲しませない事が最も大切です」
カミルはそう答えて槍を収めました。
「ありがとう」
100日間断食修業が90日を経過すると、アレンはもはや全身から金色の光が放たれる様になっていました。
集まった人々はアレンに触れるまでもなく、その神々しい姿を見るだけで癒やされてゆきました。
焦ったゼルベットは最後の手段に出ることにしたのでした。
ヤントスとサンドラーチェの物語を知って、アレンがヤントスの生まれ変わりに違いないと言う事が信じられ始めていました。
今のアレンの奇跡を目の当たりにすれば、そう思うのは自然なことでした。
ゼルベットは手下をサンドラーチェの館に赴かせ、寝ている彼女の特徴を覚えさせてから、国中を探してそっくりな少女を断食郷に連れて来るよう命じました。
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