第2話 届かなくても
「〈涼しげな一撃〉」
それは、空間を揺らし、元より空間を振動していたそれをぶつかり連鎖する。
5柱はそれを受けながら、確かな焦りを感じていた。
これはすぐに終わらせなければならない戦いだと。
白虎は自慢の爪と蛇の牙で、青龍は口を大きく開け水のブレスで太一にトドメを刺そうとする。
しかし、それは一点集中した攻撃であり、使っている間は体はガラ空き。
太一はその隙を決して逃さない。
「〈天喰い〉」
それは確かに当たった。
しかし受けたのは、玄武であった。
それは何度も起こった。
4柱がそれぞれ技を繰り出し隙が出来たところを、何度も玄武はカバーした。
玄武だけでは無い、5柱は、それぞれお互いを助け合っている。
こんなにも出来た連携は、テレビで見たSランク迷宮に潜るパーティーでも出来ていなかった。
「……俺はずっと玄武の単独犯だと思ってた」
『『……』』
太一のその発言に、今の時代の玄武、太一のペットであり相棒としてずっとそばにいた『フユ』、二柱は、反応する。
玄武や4柱の動きも停止する。
「簡単に考えればおかしいよな。お前ら5柱は神様だ、だからって世界を救わなきゃいけないとかそんなルールは無い。なのに世界構築の為とか言ってその礎にされる。そりゃ嫌だよな」
『……』
「フユ、お前の気持ち聞かせてくれよ」
『……白虎は厳格な見た目とは違ってユニークで、いつも中心で盛り上げてくれた。朱雀は結構鋭く突っ込むやつで、白虎とよく喧嘩してた。青龍はいつも止めてた、青龍が一番僕達の中で大人びてたかも。麒麟は発散しきれずに消化不良の二人に対して、話して、いつの間にか和やかにしてた、あの芸だけは何億年経っても真似できる気がしない。僕はそんなみんなと過ごす時間が大好きだったんだ! 聖剣はそれを聞いて私が全部背負うって言ってくれた。だからこの世界もそうする、それ以外に方法が無いから』
「いや、ある」
『え?』
太一は聖剣を構え、目を閉じ、集中する。
そうして、《一蓮托生》と唱えると、太一はあまりの負荷に、手を床に付け、どっと汗をかく。
「全員大人しく礎になって貰えば良いとか、5柱の意見ガン無視の思考に支配されてた。だからこれに辿り着けなかった」
太一は、聖剣を軽く振る。
すると世界が揺れる。
振った太一の周囲は、もはや新たな世界が生まれそうな勢いがあった。
「疑問なんだが、軽く数億年単位で時間を飛べて、全部でなくてもお前らの攻撃を受けれて、世界が一回滅んでも修復できるくらいのエネルギーを持った剣、作成者は何者だ?」
『『『『『っ?!』』』』』
太一の言葉に、何故自分達はその可能性に気付かなかったんだと困惑する。
「《一蓮托生》で、聖剣の記憶を全て見た。そうして辿り着いたんだ、生成された瞬間を。俺らが真に狙うべき神の名、それは、ニムエだ」
『名前がわかっても場所は……』
「フユ、力を貸してくれ」
『……ご主人様を、信じて良いの?』
「ああ、信じろ」
『分かった』
太一は、体全体に感じる懐かしさを噛み締めながら、唱える。
「《一蓮托生》」
玄武を持った太一の前で、見つけられないものなど無かった。
「見つけたぞ、ニムエ」
「私の存在は精神魔法で何故か頭から省かれるようになってるはずなのに……、面白いわ、少し遊んであげる」
ようやく辿り着いた。
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