第2話 三年の終わり 十年の終わり
3/25、遂にこの日が来た。
中学校の卒業式だ。
俺はいつも通り早起きして、いつもよりかなり早めに学校を出た。
卒業前に話しておきたい人物が沢山居るからだ。
学校に到着すると、俺とおんなじ事を考えた中学生で三年間友達で居てくれた、正樹と花蓮である。
「よう! 期待の冒険者育成学校の特待生さん!」
「おはよー、特待生」
「その呼び方やめてくれ、母さんにも言われたんだ」
「おまっw まあマジでファンタジーもんみたいだもんな! 特待生で〈不死鳥〉倒すとか」
「ほんとそれ、どこのラノベから飛び出してきたのよ、実はな○う系主人公でしたって言われても驚かないわよ」
盾使うとか、剣が主流なのにおかしいだろとか批判をして来る中、この二人は素直に賞賛してくれる身内である。
正直、悪い気はしない、でも、その、あれだ。
「やっぱはずい」
「任せろ、一生そのネタでいじってやるからw」
「そうだねー、あ、高校一緒だから……逃げられないからね?」
実は正樹と花蓮も、冒険者育成学校を受けていたのだ。
まあそんな訳で、ここでは一時的なお別れな為、この三人でガヤガヤするのはここら辺で辞めて、それぞれお別れを告げたい人物に話しかけていく事にした。
そうして別れた後、俺は職員室に向かい、3回ノックをして、宮崎先生を呼んだ。
俺は、冒険者になる上で、良い意味で影響を与えてくれた、この先生に最後に一言伝えたい事があったのだ。
それを察したのか、宮崎先生は、俺が進路相談の時お話ししたあの会議室に移動した。
「それで、話とは何でしょうか、太一君」
そう問われると、俺は合格してからずっと思ってた事を言う。
「俺は、決して死にません。運動神経もそこまである訳では無いし、才能があるかどうかもわかりません。ですが、信じ会う相棒が居ます。……きっと正しい道なんてありません、だからこそ、自分が一番進みたい道を進むんだと思います、それを宮崎先生の様な人に修正してもらって、結果的に正しい道になっていくんだと思います。俺は、間違いなく宮崎先生のお陰で、正しい“冒険者”としての道を進んでいます。個人の勝手な判断ですが……。優樹さんも、きっと先生のお陰で、亡くなるその瞬間まで、自分の進みたい道を進めてたと思います。なので宮崎先生、もう背負わなくて良いんです。優樹さんは、先生の判断のお陰で、その時まで楽しく生きれたんです。別に冒険者になる事を推奨しろなんて訳じゃありません。この10年間、その道を進める様に、精一杯努力した、自分を認めてあげて下さい、子供の自分が偉そうな事を言ってすみませんでした」
俺が話し終えても、宮崎先生は何も言わなかった。
やがて、卒業式が始まる時間が迫ってきて、俺が失礼しましたと、部屋を出ていこうとすると、宮崎先生は、こちらを見ないまま、「ありがとうございます」とだけ告げた。
俺は、一礼して、それに答え、部屋を出ていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます