異世界探偵は魔法世界に技術で挑む
@sen-an-ri
第1話
こちらの世界に転移して早十年。いくつかの例(例えば魔法やスキルが使えたり、魔物や亞人種がいたり)を除けば、元の世界とほとんど変わらない。
転移した当初、俺は人の名前やスキルがわかる鑑定眼というレアスキルをもらって浮かれていたが、入隊した黒騎士団(元の世界の警察組織に近い。武闘派脳筋組織)では、持ち前の運動神経の無さから、せっかく相手のスキルがわかっても身体が付いていかなかった。直属の上司は理解があったが、上司以外から無能扱いもされていた俺は早々に黒騎士団を退団し、探偵事務所を開き細々と生きることにした。退団までイロイロあったが、それの説明は省く。
冒険者の嫌がるようなランクの低い仕事や、黒騎士団が嫌がる地味な仕事をしながら、ようやく日々の暮らしが出来るようになってきた。
そんなある時、俺の鑑定眼で「人体自然発火」と思われる身元不明の焼死体の身元の鑑定依頼を黒騎士団から受けた。
鑑定眼の結果、焼死体は、王都在住のジンという男性。40歳。身長175cm、体重90kg、住所は王都の東エリアの※番地。職業高利貸し。スキルは暗算上級。格闘中級。拷問中級。
目撃者からの情報では、朝方、道を歩いていたジンが急に燃え出したということだった。誰かが火を放った目撃はなく、当然、目撃者が見えない距離からの狙撃型遠距離魔法は存在しない。目撃者が慌てて消火を試みるが、間に合わず、そのまま亡くなったようだ。
念のため、目撃者全員、俺の鑑定眼でスキルを調べたが、誰も遠隔発火させれるような能力持ちはいなかった。
鑑定眼の情報が正しいかどうか、実際、ジンを知る人からジンの情報を調べると、怪しいスキルが見えた通り、かなり熾烈な取り立てをしており、方々から恨まれていたようだ。
そういった情報から、ジンが金を貸している人間を一人ずつ鑑定眼と、後輩のミリアの真偽眼(嘘を見抜ける能力)で、調べていくことになった。眼を酷使すると非常に疲れるが仕方ない(ずっとパソコンに向かっているような疲れが出る)。
ジンが金を貸していたのがおよそ100人。俺は、一人一人を鑑定眼にかけて、人名とスキルを調べていく。ただただ疲れたと言う感想しかない割に債務者から、犯人に直結するような情報がなかった。
逆に何もないということが手がかりにつながるかもしれない。
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