恋愛の勉強で恋人代行を利用しまくっていたら、何故かキャストたちから言い寄られ始めた? 俺、なんかやっちゃった??

春一

第1話 プロローグ

 彼女が欲しくてしょうがない。

 大学に入学するまでの十八年間、俺はほぼ女性と関わりのない生活を送っていた。

 小学生の頃にはクラスに女子がいたけれど、中高一貫の男子校に入学して以降の六年間は、全く女性と触れ合わない環境だった。

 男の世界は、それはそれで楽しい。何をやってもだいたい許されるし、男同士で気は合うし、バカなことをたくさんしてきたのも良い思い出だ。

 だがしかし。

 俺ももう、性欲を持て余す十八歳。切実に彼女が欲しい。彼女とイチャイチャしてみたい。女の子の柔らかさというものを感じてみたい。ぶっちゃけエロいこともたくさんしたい。

 いや、当面はそこまで分不相応の幸せを手に入れたいとまでは思っていない。とりあえず女の子と楽しくおしゃべりでもしてみたい。女の子が隣にいるとき、漂ってくるシャンプーの香りにドキッとしてみたい。片想いでもいいから恋をしてみたい。

 俺の人生に、とにかく女性が関わってほしい。

 まずはそれだけだ。

 と、言うわけで。


「……ふふふ。恋人代行、予約してやったぞっ」


 誰も見ていないからこそ浮かべられる黒い笑みを浮かべて、俺は一人暮らし中の部屋で呟く。

 俺ももう十八歳。十八禁の代物だって堂々と入手できるし、十八歳未満利用禁止のあれこれも利用できるようになった。

 持て余す性欲を発散するため、早速そのためのお店に行くということも考えたが……正直、初めては好き合っている者同士が良い。純情だとかお子ちゃまだとか言われたとしても、俺は純情だしお子ちゃまだから仕方ない。俺の男女関係のイメージは、小学生から止まっているのである。誰々ちゃんが好きー、という話題で既に赤面してしまうレベルだ。

 男女に関する精神年齢が小学生の俺には、同じ大学の女子と関わるのは大変難しい。挨拶を交わしただけでも『君、童貞でしょ』と見抜かれ、目を合わせた瞬間に『その視線、セクハラだよ』と訴えられること間違いなし。

 だからこそ。だからこそ!


「俺は……恋人代行を使って、まずは女性との交流に慣れなければならない」


 その辺の学生と違って、恋人代行のキャストたちはきっと優しい。商売で男性と交流するのだから、俺みたいな拗らせ童貞相手にも優しく接してくれるはず。間違っても、『童貞臭がきつすぎるからこっちくんな』みたいな目で見てくることはあるまい。

 いっそ良い金づるだと思われたって構わない。男女の関わり方を、手取り足取り優しくレクチャーされたい。お金はちゃんと払うから、こんな幼稚な願いを叶えてほしい。


「……恋人代行で男女のなんたるかを知って……そして、俺もいつか、お金を払わなくても一緒にいてくれる彼女を作るんだ……っ」


 スマホを握りしめて、決意を口にする。

 始まったばかりの大学生活。

 倫理的に問題がない程度に、女性まみれの思い出を増やしていきたい。

 俺の新しい人生はここから始まるぞ!

 そうだよね!? 頼むからそうあってくれ!

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