第15話 旅再び
ーー カムイ再び旅に出る
センターターク王国の王都にしばらくゆっくりとしていたカムイだが15歳になったその年
「また旅に出たいと思います」
とシスターアリアに話をするとアリアは
「そう言うと思っていました教皇様にもお話をしておきましょう」
と旅の準備を始めてくれた。
僕は今回王都にいる間に幾つかのものを用意していたそれは「薬」と「ポーション」である。
何故か作っていなければならないと感じかなりの量を作成し収納していたのだ一部を取り出すとシスターアリアに
「これは万一の時のものです遠慮なく使ってくださいね」
と言い手渡した。
今回のお供は聖騎士エストレーナは同じだが従者として
・見習い神父のケイン 18歳
・調理人のガルフ 25歳
・治療師のカイト 20歳
が同行することになった、皆に挨拶をし西に旅立つ僕らを多くの市民が見送ってくれた。
移動に使う馬車は以前の馬車をさらに快適にする魔道具を積んでいる、今回最初の国は獣人族の国
[ビースト王国]
である、獣人族というのは体の一部に動物の特徴を持つ人で身体能力及び動物の特徴に合わせて飛躍的にその能力が人に比べると高い、その反面単純で感情的なところがあり強さに憧れる性質も持っている。
人種絶対主義者と言われる考えの者からすると動物の特徴がある彼らを亜人と呼び蔑む者も少なくない、そこで獣人族が集まり国を作ったのだ。
ただ彼らは身体能力が高い反面、魔法が苦手と言われ魔力も少ないのが一般的である。
この国の抱える問題は、子供の生存率が低いことと教養の低さにあった、文盲が多くその為騙されやすく奴隷などに落ちるものが非常に多い。
料理は焼くか生かのものが多く匂いに敏感なくせに衛生には気を遣わないところがある。
王国の国王は力が絶対で3年に一回公開の王座決定戦がありそこで優勝したものが次期国王となるそのため長期計画の対策ができず自身の種族を優先的に優遇する政策が多く発展しにくい。
これだけのデメリットがあるのに王国が崩壊しないのは、同じ神を信仰しているということと神獣を敬っているからと言われているがその本当のところは分からない。
カムイは15歳になってその容姿が大きく変わってきた
・身長は130cmから160cmに成長
・体格は幼児体型から細マッチョに
・髪はシルバーの長髪
・瞳は右目が金色、左目が銀色のオッドアイ
・顔は幼さが残る美少年
・肌は抜けるような白
で、より神々しさが増してきた。
馬車の中に今回充実した台所を設置した、この世界は食に関して文化が低すぎるのだ特に今向かっている獣人国は料理自体を殆どしないお国柄だからこそ食にこだわったのだ。
国境を越え獣人国に入ると草原が目立ってきた、農耕に適した土地が何もされずにほったらかしになっているのだ、
「もったいないな」
思わずそんな愚痴が口に出る。
「何か言われました?」
そばにいたエストレーナが僕の呟きを聞きつけ尋ねてきた、
「いや何でもないよ、美味しいものを食べさせたらどんな反応するのかなて思っただけだよ」
と言うと
「そうですね、使徒様の料理はとても美味しいですからね」
と時々作る僕の料理を褒めてくれた。
獣人国は森や草原に川や山と自然が豊かな感じがする、それぞれの特徴で住みやすい環境が違うのかなと思いつつ馬車を進めていると、何処からか子供の悲鳴が!
馬車から飛び出す僕のすぐ後ろからエストレーナが付いてくる、森に入ったところで見えてきた。
3人の子供がオークと言われる魔物5体に襲われていたのだどうやら一人が足を怪我をして逃げれなくなり追いつかれたようだ、僕は雷撃を飛ばすしかし子供のすぐ近くにいる2体には当てられない。
するとエストレーナがナイフを続けざまに投擲すると今まさに襲い掛かろうとしていたオークの腕と左目にナイフが刺さりオークが大きくのけぞる、その隙に剣を抜いたエストレーナの斬撃がオークの首を落とす僕はその後ろのオークにアイスニードルを飛ばすと身体中を穴だらけにされたオークが倒れるのと首を落とされたオークが倒れるのが同じだった。
子供らは目の前で何が起きているのか理解できないようで、僕らを見て驚きで固まっていた。
「大丈夫だったかい?怪我を見せてごらん」
と言いながら倒れていた猫耳の女の子の足を確認しながら清水で洗い流し回復魔法をかけると傷口が巻き戻るように治っていく、その魔法を見ながらさらに子供らは驚く。
「もう大丈夫だ、他に痛いとこはないかい?」
とその女の子に尋ねるが首を縦に振るだけで返事はない。
僕は思い出したように収納から袋入りのドーナッツを取り出すとしっかりしてそうな女の子に手渡し
「甘いお菓子だよ、みんなで食べな」
と言うとその匂いに3人が目を輝かせた、
「甘い匂いがするわ、食べていいの?」
と尋ねる女の子らに
「どうぞ」
と進めると3人ともドーナッツにかぶりついた。
「「「美味しー。」」」
声を揃えて頬張る子供らを微笑ましく見ながら
「この先に馬車を止めているんだが家まで送って行こうか?」
と話し掛けると
「馬車!」
「乗ってみたいね」
「……」
と反応はそれぞれだったが拒否はしていなかったので馬車まで同行して子供らの集落へ向かった。
子供らは
・黒猫耳がミリー 8歳
・犬耳がクー 11歳
・白猫耳がラリー 12歳(ミリーの姉)
と言い3人で森に薬草を探しに入ったところをオークに見つかり逃げる途中で猟師の罠に足を取られた怪我をしたようだ、薬草は今子供達の集落で流行っている病でクーの妹がかなり悪くそのため黙って森に入ったようだ。
僕は
「薬なら僕が持っているし可能であれば魔法も使えるからねみてあげよう」
と言うと大喜びした子供達多分先ほどの回復魔法で魔法の凄さを目にしたからだろう。
ーー とある獣人族の集落
3人を乗せた馬車が30戸ほどの集落の前に着いた、集落の周りは太い丸太で柵が作られ引き上げタイプの門が出入り口にあった、門の上には門番と言える男性がおり
「止まれ!ん?ラリー達じゃないか」
と馬車から降りてきた子供らをみて驚きの声。
するとラリーが
「この人達に助けてもらったの、そしてメイを治してくれるって」
と嬉しそうに話すラリーを見ながら門番の男は悩んでいた、そこで僕は馬車から降りて顔を見せると
「僕は教会の関係者で、治療魔法や薬師の真似事ができます集落に病気の方がいると聞きお力になれればと来たのですが患者を見せてもらえませんか?」
と言うと僕の姿を見た門番がブルっと身震いした後
「族長に話してくるから待っていてくれ、ラリー達もきてくれ」
と門を引き上げ子供達を先に入れて奥に姿を消した、そこで僕は軽い食事でもしようと馬車の中の台所で料理を始めたすると料理人のガルフが
「使徒様、俺の仕事が無くなるであんまり料理せんでほしいわ」
と愚痴をこぼすが構わず卵サンドとコーヒーを点てて軽く昼食を済ましたとこで門に人が集まってきた。
山羊のようなヒゲの男性が代表して開いた門をくぐり僕を見て
「使徒様をお待たせして申し訳ありません、どうぞ何もない集落ですがお入りください」
と頭を下げ僕らを案内し始めた。
するとそこについて来ていたクーが
「え、使徒様。」
と呟く声が聞こえた、その後山羊ヒゲの男性はある小屋の前に僕を案内すると
「ここがクーの家でございます、妹のメイが病気でかなり弱っております何とかなるならお願いします」
と再度頭を下げ小屋の中から出て来た犬耳の両親も慌てて頭を下げた、僕は手で制しながら
「失礼しますよ」
と言いながら小屋の中に入った、すると小さなベッドにやせ細った子供が寝ており今にも息を引き取りそうなほど衰弱していた。
僕は鑑定で子供の状況を確認しスキャンの魔法で病巣を探した、子供は体に毒素を溜め込んでおりそのために機能不全に陥っているようだった腎臓がダメージが大きく治癒魔法で内臓を癒すと毒素を体外に取り出して治療を終えた、衰弱がひどいので回復魔法をかけると心配顔で見ていた両親に
「もう大丈夫です起きたがこれを食べさせてください」
と栄養バーを差し出したすると
「これは?」
と言う顔の両親に
「これは栄養豊富なものを固めたもので消化に良く病人には良いものです」
と言うと納得したのか
「ありがとうございます」
とお礼を言った、外に出て山羊ヒゲの男に無事治療が済んだのを報告した後
「他にも同じような症状の方がいますか?もし居れば食べ物か飲み水に毒が混ざっていると思います」
と言うと男はハッツとしたような顔をして
「実は子供や年寄りが同じように体調が悪いと数人が申しております」
と言うので収納から薬を取り出し
「これが効くと思います皆に飲ませてください」
と言いながら
「ちょっと集落を見て回りますね」
と断り歩いて回り始めた、するとクーやラリー姉妹が後をついて回った。
集落の井戸を覗き鑑定すると
[水銀毒]
と言う表示が出た、どうやらこの井戸は浅く鉱山性の水銀が混じっているようだそこで僕は山羊ヒゲの男を呼んでもらい
「この井戸は水銀と言う毒素が混じっています別に深井戸を掘り綺麗な水を飲めるようにしたいが許可をもらえますか?」
と尋ねると
「あなた様の思う通りに」
と承諾してくれたので少し離れた場所に地下水脈を見つけ土魔法で穴を開けながら周りを石化して深井戸を掘り始めた、1時間も作業をしたでしょうか100m程の深さで水脈に当たり豊富で綺麗な水が湧き出始めた。
その後井戸を完成させ井戸ポンプを付けると次の日には十分使えるようになっていた。
そばで魔法を見ていた子供達はその作業の間真剣に作業を見ていたが終わると
「私にも魔法は使えないのかな」
「獣人には使えないと聞いたよ」
とお互い話をしていたので僕は
「魔法はね魔力さえ有れば大きさは別にして誰でも使えるもんだよ」
と言うと3人は
「「「私も使えるの」」」
と声を揃えて聞いて来たので鑑定すると
・クーは土魔法
・ラリーは水魔法
・ミリーは風魔法
が少しであるが使えそうだったので教えると皆嬉しそうにしたが
「でも、教えてくれる人がいないから・・・」
と諦めの言葉を呟いた、そう獣人族は皆魔法が使えないと思い込んでいるため使えるものも使えないのだ。
そこで僕は
「しばらくここにいるからその間に教えてあげるよ」
と子供達に話していた。
ーー 魔法教室
山羊ヒゲの男にしばらく厄介になると言うと「どうぞ」と了解され離れに馬車を止めて家代わりにした。
青空教室の始まりと椅子を子供の数だけ並べ座らせると一人一人の属性を教え先ず魔力を感じることから始めそれが済むと身体中を巡らせる訓練をして身体強化を覚えさせた、身体強化は外に魔力を出さないので少ない魔力でも効果が大きく元より身体能力のある獣人には鬼に金棒のような活用であった。
魔法はイメージが大切でそれぞれの属性の原理や現象を見せながら教えると10日ほどで10人の子共が皆少しばかり魔法が使えるようになった。
その後この集落では魔法が使える獣人が多く育ち狩りがとても得意で裕福な集落に変貌したがその時僕が教えた方法が本となって残されていた。
その後この集落の病人は全て快癒して便利になった水汲みに皆感謝してくれた。
集落を後にして獣人族の王都に向かう僕らを不審な者達が見張り出した、危害を加える様子がなかったのでそのままほっといて旅を続けるとノーマンと言う街に着いた。
ここは人族との交易で発展した街で人族の商人の姿も多く見かけたがそこで僕は嫌なものを見たのだった。
ーー あくどい商人と知らないと言う罪
広い道の両脇に露店が店を出し売子が声を張りながら客を呼び込んでいた、僕は何を扱っているのか興味を惹かれ馬車を降り歩いてみた、すると多くの露店が人族の商人の店であったが相手を見ながら値段を釣り上げ釣りを誤魔化し商品の数さえも誤魔化していた。
獣人は教育にあまり力を入れないため損をしていても本人達はそれすら気付いていない、この事実に僕は商人の悪どさと獣人の無知ゆえの罪を知った。
「知ることが出来る権利を放棄している獣人を何とかしなければ」
と決意したのだった。
さらに王都に向けて馬車を進めると獣人は基本集落単位で生活していることがわかった、そこで僕は巡回しながら文字や計算を教える移動教室を教会関係者にさせられないかと従者のケインに聞いてみると
「使徒様がこうしなさいとおっしゃればそれがルールとなると思いますよ」
と答えた、それで良いのか?と思いながらも効率の良い方法を考えていた。
その間も僕らの後をつけ見張る目があるのは気になっていた。
ーー 王都ビースト
王都ビーストは人口5万人ほどの街で教会が2つ存在する、その一つに馬車を止めこの国唯一の司祭に挨拶すると司祭は
「使徒様の訪問首を長くしてお持ちしておりました、この王都で最近原因不明な病気が広まっており困っておりました、もし使徒様でその原因や対処がお分かりになれば教えていただきたいとお待ちしていたのです」
と言う司祭に症状などを聞くとあの集落の症状と同じであったので
「最近獣人族の国で鉱山を開発したりせていませんか?」
と聞くと司祭が
「そういえばあの山に良い鉱石が取れると盛んに掘り出しているようですが」
と教えてくれたので僕は持ってきた薬の一部を司祭に渡すと国王への面会を依頼した。
ーー ビースト王国国王獅子のレオ
司祭から王国に話をつけてもらうと次の日には国王が会うと返事が来た、次の日馬車で王城に向かい別室で待っていると青白い顔の獣人の子供が部屋を覗いていた
「何か僕に用かい?」
と呼びかけると慌てて姿を消したが鑑定でその子が王の息子で水銀毒に侵されていることがわかった。
しばらくすると王都の謁見となり挨拶を交わしたのち僕はこう切り出した
「国王様にお聞きしたい、この王国に最近流行病が流行しておりませんか?特徴は御子息のような」
と言うとハッとした国王がそばの家臣にどうなのかと尋ねると
「確かに子供や年寄りを中心に体が衰弱してなくなる流行病の報告があります」
と答え国王が
「我が息子ラインもそうなのか?」
と問うと
「確かの症状測るものの似ているかもしれません」
と答えさらに
「今のところ対処ができず困っております」
と答えた、そこで僕はすかさず
「実はここにくるまでに幾人かの病人を診察しよく効く薬も所持しておりますのでお分けできますが根本的な対処をしなければ大変なことになると思います」
と答えると
「何薬があるのか、根本的原因とは何か知っているのか?」
と聞くので
「あの山で最近鉱山を掘っておられると聞きましたが多分その山から川や地下水に水銀という毒素が混じり出したと思えます、対処としては飲み水については深井戸の水を使うことにし鉱山の残土をきちんと管理する必要があります」
と答えると国王が
「鉱山は人族の商人が掘り起こしから買い取り運搬まで行うというので許可を出しておったが取りやめた方がいいかの」
と答える国王に商人との契約書を見せてもらうと案の定かなり商人に有利な契約であった救いは年単位の契約で間もなく更新時期であることだった、そこで
「契約更新には僕も立ち合わせてもらえませんか?」
と申し入れすると
「それは良いどうぞ」
と快諾してくれた。
その後沢山の薬を渡し治療をお願いすると鉱山見学に向かった。
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