第13話 エンペラー王国の女帝の悩み
ーー 僕たちは険しい山脈を越え次の国へと旅を続けた
山脈を越えた先は魔族と人族の境の谷を持つエンペラー王国が存在する。
この国は特に困った話など聞かない平和な国で、高い山脈があるため他の国にはない動植物が育ちその販売で国が栄えているようだ。
国の中央に大きな湖があり、そこから流れ出る水は国を潤しながら海へと注いでいる。海に湖に山、何でも揃った豊かな国この国の大地印象はこんな感じだった。
さらに旅を続けながら村人などに話を聞いていると、この国にはいく匹もの古竜がいるようでその古竜とうまく付き合っているため魔族や魔物の被害が抑えられているようだ。
僕は古竜に興味が引かれあって見ようと考えた、この王都の名は
[水の都シーフー]
と呼ばれ国名であるセリーヌ王国よりも知れ渡っている。湖のそばに王都が建設されており湖から引いた水路が王都の街を縦横無尽に走り、水の都と呼ぶにふさわしい景観となっている。
国王の名は
[カトリーヌ=シーフー=セリーヌ]
と言う40歳ほどの女帝である。この町はセカンドネームからとったようだ。
美しいと言う表現がピッタリのこの国の問題は何だろうと思いつつ、僕は湖のほとりに立ち
「出よこの湖を守りし古竜よ」
と声をかけると湖の中央から水竜が顔を出し僕の元に近づいて来て
「およびでしょうか」
と聞いて来たので
「そばまで来たので美しい水竜に声をかけたくてね。話を聞かせてほいいんだが。」
と言うと水竜は機嫌よさそうに
「美しいと言われてそれに答えぬはずもなく何をお話ししましょうか?」
と尋ねるのに
「いや世間話でいいんだ貴方の好きな物や興味のある話をと思ってね。」
と言うと水竜は
「この国はとても平和よ。退屈しそうなくらいでもね最近女帝が何か悩んでいるみたいでね、私が気にしているのあの子が小さい頃から知っているから。」
とこれまでの女帝の話を聞かせてくれた。そこでお礼を言って湖を離れ王都に向かうと、10名ほどの騎士が馬で現れ僕の馬車のそばに来ると馬から降り片膝つくと
「使徒様に御ざいましょうか。もしおお間違いなければ王がお呼びです。是非にと。」
と言いながら僕らを王都内の王城に案内してくれた。
どうやら水竜と話をしているのを見つけた女帝が、騎士を差し向けたようだ。
ーー 女帝カトリーヌとの会合
直ぐに王が王が会うということで僕らは謁見の間ではなく女帝の私室に招かれた。そこは淡い色合いで飾られた女帝らしい清潔で荘厳な雰囲気が漂っていた。
少しすると扉が開きメイドのような女性を従えた妙齢な女性が現れた女帝のようだ。
僕は席を立ち
「カムイと申します。此度はこのような厚遇ありがとうございます。」
とお礼を言うと女帝は
「流石噂通りのお方ですね。私が王のカトリーヌです、しばらくここに滞在してもらえるのでしょう?」
と言うので
「はいここには古竜が何頭もいるようなので話がしたいと思っております。」
と答えると
「そうそう、先ほども湖の水竜様とお話をされていましてね。」
と話された、その後はたわいもない旅の話をしていると女帝が
「城に部屋を用意しました飽きるまでご滞在してくださいね。」
と言い仕事がるのでこれで失礼しますと、部屋を出てゆき僕らはメイドの案内で客間に荷を下ろすことになった。
僕は短い出会いであったが女帝の心配事の一つを見つけた。あとはおいおい見つかるだろうと思い寛ぐことにした。
ーー 女帝カトリーヌ sid
私には幾つかの悩みがある。その殆どが人の力ではどうしようもないものばかりで、半ば諦めていたところに使徒様の来訪を知った。
神頼みにはなるが私の祈りが報われるのであれば、是非此度の機会に叶えてほしいものであると創造神を仰ぎ祈る。
そこに家臣が現れ
「馬車に乗った子供が湖の辺りで水竜様と話をしていると報告が入りました。」
と言うのを聞き私は
「それは使徒様に違いない丁重に城に案内しなさい。」
と命じて私はメイド達に準備を指示した、こんな時に・・・居れば・・。
私室に案内させ会いに向かうと使徒様は礼儀正しく挨拶なされ私の期待通りの方であった。
私は自分の計画が見つかるのを避けるため直ぐに仕事に戻ると断り部屋を後にしたのだった。
ーー 女帝の悩み 1
女帝は昔一度結婚したが、王配との間に子供が出来ず数年前に疎遠となり、今では別居状態という。お互いが嫌っているのではなく初めて授かった子供が、産まれて直ぐに亡くなったショックから立ち直れず疎遠となったようだ。
王配の名はカルト45歳の伯爵家の三男で、湖を隔てた別荘に住んでいるそうだ。女帝には家族と言うべきものがおらず全て短命だったため、死に絶えたようだ。
そこで女帝は自分が呪われているのではないか、その為子供すら持てないのではないかと思っているようだ。
この話を聞いたのはあの水竜からだ。
ーー 女帝の悩み 2
女帝は幼き頃に両親を亡くし女帝として生きて来たが、その心の拠り所はこの国に居る古竜らの存在だ。古竜はなぜか女帝に懐き、よく話を聞いたり背に女帝を乗せて王国中を飛んで回ったりしたそうで、その為この国は古竜に守られた国と言われて平和が続いているようだ。
そんな古竜の一体、土竜が病気を患い殆ど眠っているそうで、あとは死を待つだけと思われているそれが女帝の悩みの一つでもある。
ーー 悩みを解決しようじゃないですか
僕は先ず風竜を呼び出すことにした。ゴードン王国で呼び出した風竜が三頭の古竜の一頭と判明したからだ。呼ぶことしばし風竜が目の前に舞い降りた。
「主人様及びに応じ参上しました。」
と軽い感じで飛んできた風竜は、そう言うと頭を下げたそこで僕は、
「お願いがあって呼んだんだ。君の仲間に土竜が居るだろその彼が最近体調が悪そうだと聞いたので、様子を見に行こうかと思ってね知ってたら案内して欲しいんだ。」
と言うと風竜は目を見開きその後笑顔になり
「承知つかまりました案内しましょう。私の友人に会ってみてください。」
と言いながら背を向けたので、その背に飛び乗ると風竜は音もなく飛び立った。
風竜はそのまま魔族との間にある深い谷の様な亀裂がある場所に舞い降りた。丁度そこには大きな洞窟が口を開けていたどうやらこの先に土竜がいるようだ。僕は、
「ありがとう帰りは移転で帰るから大丈夫だ」
と風竜に伝え洞窟の中に踏み入った。
歩くこと1時間ほどかなり深くまで入って来たが、未だ土竜に会えないと思いながらたまに出てくる魔物を倒して行くと、大きな扉に出くわした。
「そうかここはダンジョンか!」
僕は階層のないダンジョンに入ったことがなかった為、ここはダンジョンと気づいていなかったが、そういえば洞窟内がほんのり明るく魔物が湧くように出てきるなと感じていた。と言うことはこの扉はボス部屋の扉ということになる。
扉を開くとそこに大きな亀のような古竜がいた、
「君が風竜の友達の土竜かな。」
と問いかけると土竜は顔を出し僕を見ると
「ああ、やっと来てくれたんだ。このダンジョンはね呪いのダンジョンでね、ある少女に呪いをかけていたことがわかったから俺がその呪いをここで食い止めていたんだ。」
と話して聞かせてくれた、結局のところ
「女帝カトリーヌの一族が呪いの対象となり短命で死に絶えている事に気付いた土竜は、その呪いの元となるダンジョンに向かいダンジョンボスを倒したがいいがダンジョンのため土竜が立ち去るとまた湧いて出る為ダンジョンマスターを倒さない限り呪いが消えないと判明。土竜ではこの先に進めない為誰かが来るのを長年待っていたものである。」
「分かった僕が先に進むからしばらく待っていてくれ。」
と土竜に話しかけ僕はその先に進んで行った。するとアンデットのリッチが守護するダンジョンコアを見つけたリッチは僕を見ると
「憎き人族よ魔族の名を持ってお前を呪ってやる。」
と言いながら僕に呪いを掛けようと試みているようだがうまくいかない様子で
「何故だ、何故我の力が届かぬ。」
と怒りに震え出したリッチに僕は
「君の代わりに僕が君を許そう。」
と言いながら光魔法を強めて流し込むと、リッチは始め拒否していたが次第に受け入れ始め
「我は今まで何故こんなことで意地を張っていたのだ・・・暖かい光よ我の憎しみごと天に帰したまえ。」
と言い残し光となって消えていった。僕はその後ダンジョンコアを回収して戻ると土竜が待っていて
「うまくいったようだな。これであの娘も幸せになれるだろう。」
と言うので僕が
「それには僕がもう一働きしないとダメだな、あとは任せてください。」
と答えた。
ーー 全ての呪いを今消し去ろう
僕は湖の反対側に建つ女帝の王配の住む別荘に立ち寄った。そこにはボーと湖を眺めるナイスミドルな男性の姿があった。
「すいません貴方が王配でしょうか?僕はカムイと言います現在女帝のご好意で城に厄介になっています。」
と声をかけるとその男性は
「カトリーヌ・・女帝様はお元気にされていたかな。」
と返事をしたので
「そうですねなんと答えればいいのか困りますが、これからはお元気で幸せになりそうだと答えておきましょうか」
と言うとその言葉に何か引っ掛かりを覚えたのか
「少し話をしないかい。どうぞ僕しかいないから遠慮なく。」
と言うので僕も
「それではお邪魔します。」
と応じて家の中に入った、家の中は何もないがらんとしたもので男性の心に中のようだった。
「え!それじゃカトリーヌが家族に縁が薄く不幸だったのはその魔族の呪いだったのか。」
と声を上げる男性にぼくは
「はいそうです。しかし呪いは解けたのでこれからはもう大丈夫なんですが、問題があります。」
と言うと
「問題・・あそうか僕らはもう若くない今更家族をと言っても無理なことだね。」
と言うと男性に
「それは問題ないです。貴方が彼女の元に戻り以前以上に彼女を愛せるかと言うことです。」
と言うと男は
「僕はね、毎日彼女のことばかり考えて暮らしていたんだ。僕以上に彼女を愛する者はいないよこれからもそれだけは本当さ。」
と言うので僕は男の手を取り移転した。
ーー 女帝カトリーヌ side
今まで感じていた不快な霧が晴れた気がして、湖のほとりに歩いて立ち水竜を呼んだすると直ぐに姿を現した水竜が
「貴方の苦労が報われたようよ。これからは本当の幸せを掴むのね。」
と言い出した。私はなんのことか分からず混乱していると直ぐそばに、使徒様と愛しい人の姿が現れた。すると使徒様が、
「貴方の呪いは解けました。そしてこれは僕から貴方達へのプレゼントです。」
と言うと私と彼が光に包まれ光がおさまると、あの頃の若々しい彼がふと自分の姿を水面に写すと私も若き日の姿に。
「「これはどうしたことでしょう」」
二人で同じ質問をしていた。すると使徒様は、
「三頭の古竜の願いを僕が叶えただけのお話です。今までの不幸は貴方達のせいではなく過去の遺物のせいでした、これからは自分達も幸せになるよう頑張ってくださいね。」
と言いながら王配の手を引き女帝の手に重ねると僕はその場を立ち去った。
この後シーフーの街で新たな後継者が生まれたことを祝う行事が、毎年開かれるようになりいつしかこの国の恒例となったのはまだ先のお話。
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