第20話 FILE01 女学園バラバラ死体事件-12
「私をこんな醜い姿にしてえええ!」
激昂し、吠える倉井に向かって、ミカがスカートの下から引き抜いた銃を撃ち込んだ。
どうでもいいが、銃のホルスターを太ももの高い位置につけているせいで、ばっちりパンツが見える。
「こんなもの効かないわ! その男を殺す邪魔をするなら、あなたから殺す!」
随分と恨まれたものだ。
先に殺人を犯したのはそちらだろうに。
「ここからは私の出番よ! 捜査の手柄を持っていかれた分、暴れさせてもらうわ!
イグニッション!」
ミカが銃の背についているボタンを押すと、倉井に撃ち込んだ銃弾が、爆発を起こした。
倉井の肉片が周囲に飛び散り、彼女の体に拳大の穴がいくつも空いた。
しかし、それらの穴はみるみる塞がっていく。
その間に、ミカは胸の中からグローブを取り出し、腕にはめたスマートウォッチを操作した。
すると、クラシックな黒いセーラー服の上着が、ぴったりと体に吸い付くように密着し、巨乳の輪郭が露わになる。
彼女はグローブをはめた拳を、胸の前でガツンッと打ち鳴らし、一瞬で倉井の懐に飛び込んだ。
倉井が背をまるめていてもなお、その頭頂部が天井に当たっている。
飛び上がるようにして突き上げられたミカの拳が、倉井の頭を天井へとめり込ませた。
「うがぁ!」
倉井が両手を振り上げると、天井が砕け、瓦礫とともに、上の階にあったベッドや小物がバラバラと落ちてきた。
幸い、上の階に人はいなかったようだが。
いたら大事故だ。
「はっ!」
俺は壁に向かって魔力の籠もった掌底を繰り出す。
――どがぁっ!
けたたましい音を立て、部屋の壁がきれいさっぱりなくなった。
壁の外は、サッカーグラウンドほどの庭が広がっている。
「ミカ!」
「おっけー!」
これだけで伝わったらしい。
倉井の大振りなラリアットを潜りこんでかわしたミカは、逆立ちをしながら両脚で倉井の首をホールド。
そのまま、庭へと脚で投げ飛ばした。
俺とミカは、それを追って、中庭へと飛び出す。
三階からの飛び降りだが、今のミカにはなんてことない高さだろう。
俺は落下しつつ周辺に、『人払い』『防音』『光学迷彩』系の魔法を同時にかけた。
これで多少暴れたところで、問題ないだろう。
当然ながら、今の倉井もまた、3階から落とされた程度では怪我のひとつもしない。
地響きを立てながら、両足でしっかりと着地をした。
一方、ミカは着地と同時に、その落下の勢いを横方向への移動に転化。
高速で倉井との距離を詰めつつ、正拳突きをみぞおちに打ち込んだ。
倉井の背中が拳の形に盛り上がるほどの一撃。
普通の人間であれば、体に風穴が空いただろう。
そんな一撃を耐えた倉井は、ニヤリと笑うと、そのままミカを抱きしめた。
「この……っ! 離しなさいよ!」
身をよじるミカだが、そのスーツにも自分の腰より三倍はありそうな腕を振りほどく力はないらしい。
「ぐっ……」
苦悶の表情を浮かべるミカの額を汗が伝う。
「手伝うか?」
「いい……もうちょっと私にやらせて。
これは使いたくなかったけど……戦乙女装衣(ヴァルキリースーツ)……オーバードライブ!」
ミカが叫ぶと同時に、彼女のスーツが淡い蒼に発光し始めた。
「このまま絞め殺してやる!」
力を込める倉井に対し、ミカもまた全身に力を込め、両腕を横に大きく開いた。
――バアン!
その瞬間、ミカを拘束していた倉井の腕がバラバラに飛び散った。
続いて繰り出された倉井の回し蹴りに、ミカは肘を合わせる。
――バアン!
今度は倉井の脚がバラバラに飛びちった。
折れたのではなく、飛び散ったのだ。
それだけで、今の一撃の大きさがわかるだろう。
片脚だけになった倉井は、どさりと床に倒れた。
両手と脚は再生を始めているが、悠長に待ってやる義理などない。
ミカは残った倉井の脚を、無造作に踏み潰した。
「ぎゃああああ!
貴様! 貴様ああああああああ!」
叫ぶ倉井を冷めた目で見下ろしながら、ミカは倉井の頭めがけて足を振り上げた。
その瞬間、倉井の口元が笑みに歪む。
「ミカ!」
俺の声に反応したミカが、バックステップ。
その瞬間、倉井の長く伸びた舌が、ミカの頬を浅く切り裂いた。
下がっていなければ、今頃ミカの額には、後頭部へと貫通する穴が空いていたことだろうう。
「ちぃっ!」
瞬時に手足を再生させた倉井が跳ね起き、拳や足を次々とミカに繰り出していく。
すぐ再生できたのに、油断を誘ってやがったか。
四肢を裁き、破壊するミカだが、またしても瞬時に再生されてしまう。
倉井も頭をかばっているあたり、頭部の破壊で勝負はつくのだろうが、なかなか手が出せない。
格闘術もなにもあったものではない倉井だが、あの拳を一撃でも受ければ致命傷となる。
さらに、先程のような隠し玉を警戒しなければならないため、ミカは攻めあぐねている。
1分ほどだろうか。
ミカが大きく飛び下がり、お連の隣へと着地した。
「ごめん、時間切れだわ……」
見ると、ミカのスーツがぼろぼろと崩れ、今にも全裸になりそうだ。
ミカはしゃがみこみ、手で必死にあちこち隠そうとしているが、大きな胸は全く隠せていない。
「み、見ないで!」
スーツの強化モードを使った代償なのだろう。
使い数ての時限強化式といったところか。
「着とけ」
俺は学ランの上着を脱いで、彼女に放り投げた。
「あ、ありがと」
学ランを押し上げる胸、すらりと伸びた足、チラチラ見えるパンツ。
全裸よりエロいかもしれん……。
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