第134話 21
「ならなおさら俺に何の用だ」
「付き合って欲しいんだ」
「?」
そう言うと彼女は自分の手を見つめる。まるで新しい体でも眺めるように。
「私も最近力を手に入れたんだけどさ、これの使い方。どこまで強いのか試しておきたくって」
今までとは違う自分。新しい力。それを知りたがっているんだ。
赤い異界と化した世界に現れた少女。その子は俺に向き直り宣言する。
「だから、あんたに勝負を仕掛けるわ」
「そういうことかよ」
戦いを。俺に挑んでいた。
「その誘いに俺が応じるとでも?」
どういうことか分からない。彼女も俺と同じく異能の持ち主なんだろうが俺たち以外にそんな存在がいたなんて。彼女は何者なんだ?
「断るつもり? 周りを見てからもう一度考えてみることね」
くそ。
彼女が言う通り俺たちがいるのは赤く染まった世界。普段いる世界とは明らかに違う。閉じ込められた。彼女を倒さないと出られないということか。
状況を飲み込む。同時に疑問と危機感が胸を刺す。
「じゃあ始めるわよ」
俺が承知したのを見て彼女が構える。漂い始める魔の空気。感じる。なにかが彼女から溢れ出ようとしている。
突然現れた赤い世界と彼女。その彼女が叫ぶ。
戦いが、始まる。
「私はライフを3払い、偽・魔界の門(デモ・デモンズ・ゲート)をセッティング」
声が響くと同時に広がるのは赤い紋様。空間に浮かび上がる魔方陣。
「来い、眷属たちよ!」
そこから現れたのは三体の異形、黒い怪物。
「なに!?」
それは見間違うことない。
「悪魔だと?」
目の前に現れる、三体の悪魔だった。
「馬鹿な」
大きさはどれも一メートルほど。それを見た衝撃に全身が固まる。間違いない。背中にある翼で宙を浮く人型の存在。それは紛れもない悪魔だ。そして彼女はそれを召喚した。
「悪魔召喚師?」
人と悪魔が手を組んでいる。初めて見た。なによりそれが俺の前に現れるなんて。
「そうよ。あんたが何なのかは知らないけどこれが私の力。あんたには練習台になってもらうわ」
「そうかよ」
手に力が入る。今の今まで、俺は巻き込まれたと思っていた。自らミスを犯し、そのせいで不幸に見舞われたと。
だが相手が悪魔だと分かった今、それは違う。
「俺もお前が誰か知らないし、なぜその力を持っているのかも知らない。だが、お前が俺の敵だということは判明した」
「へえ」
余裕そうな顔。自信がある。俺自身、彼女の底はまだ見えない。
だが!
「悪魔は俺たちの敵だ。それを前にして俺は退かない」
固い決意がある。人類を、未来を託された思いと約束が!
「お前は倒す」
片手を前に出す。決意と共に。
「来い、スパーダ」
呼び声に応じ現れる光。それは一つの剣となり俺の前に現れる。
「ホーリーカリス、ミリオット!」
それは白く輝く刀身であり俺は片手で掴み構える。
「ふーん、それがあんたの力ってわけ。どーいうのなんだろ。ま、いいか。やれば分かるんだし」
対して少女は構えていない。片手を腰に当て平然としている。戦うのは彼女じゃない。彼女の前で浮遊する三体の悪魔だ。あくまで彼女は召喚師、戦いは悪魔。
初めて出会う悪魔召喚師との戦闘。その幕を下ろしたのは彼女自身だった。
「行け」
彼女の指示が飛ぶ。同時に飛びかかる悪魔たち。俺は最初の一体を迎え撃つが躱されてしまい二体目の攻撃が迫る!
「く!」
鋭いかぎ爪を刀身で受ける。宙を走っての突撃は強烈だ。ミリオットには身体強化があるから俺も力強くはなっているがそうでなければ吹き飛ばされていた。なんとか力を入れ押し返す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます