第132話 19

「だって……そんなこと言ったって……」


 作り上げた心の殻が破れて隠していた本音が零れ出す。


「聖治君は、私を守るために戦ったんだよ? 私を守って、苦しんでるんだよ? それが私のせいじゃないって言われたって」


 此方が言うことは分かる。それは正しい。だけど正しさと感情は別の話だ。


「納得できない、納得なんて出来ないよぉ」

「香織……」


 なんとか平静を保とうとしていた均衡が崩れ、香織はまたも泣き出した。


 なんとか自分を納得させようとしても、それまで違うと言われたら。自分は悪くないと言われても自分の非がなくなるわけじゃない。


 彼は今まさに、苦しんでいるのだから。


 それを納得することなんてできなかった。


「香織、今日は私の家に泊まっていきなさい。嫌だと言っても無理矢理連れて行くわよ」


 此方は香織を抱きしめ耳元で言った。彼女から拒否はなく此方は香織を連れて歩き出す。


「大丈夫だよ、香織さん」


 反対側には日向ちゃんが立ち香織の手を握る。心配そうに顔を覗きながら彼女なりに香織を励ましていく。


 三人は帰って行き、その背中を星都と力也は見送っていた。


「あいつも辛いわな」

「そうだねぇ」


 香織の涙。それを見て二人も寂しい思いになっていく。


 聖治を誰よりも思うからこそ自分も苦しい。なによりそれが自分を助けるためだとなればなおされだ。


「助けるぞ、二人とも」

「うん」


 星都の言葉に力也は大きく頷いた。


 仲間が苦しんでいる。


 それをなんとかするんだと、二人はさらに強い思いを胸に宿していた。

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