ゾンビが町を徘徊って怖い
朝起きて窓の外を見たら町中にゾンビがいた。
一瞬あまりにも現実離れした出来事に思考が停止しかけてしまったが、俺は落ち着きこれが悪魔的存在であり俺の力を狙う者による犯行ではないかとすぐさま仮定をした。
「お父さんとお母さんは無事か?」
最悪の可能性を考えて慌てて両親の寝室に向かい様子を見る。
二人ともスヤスヤと心地のよさそうな寝息を立てて眠っていた。
その様子を見てひとまず一安心する。
その時だった。
ピコン
いきなりスマホが鳴った。
少し驚きつつスマホを開いたら白木からラインが届いていた。
今起きているこのゾンビ騒動についてかなと思いながらこれを確認する。
【今すぐお墓公園に向かって貰える。今回のゾンビ騒動について話があるわ】
内容は凄くシンプルだった。
「俺の力でこの事態を解決できるのならば今すぐに向かおう。絶対に皆を救ってやる」
そう正義感溢れる勇気は声に出すと急いで動きやすい服装に着替えて家を出た。
――――――――――――――――――
「あ。勇気君、良かった来てくれたのね」
「ああ。もちろんだとも。それよりもこの異常事態は何だ?まさか、また俺を狙って起きたのか?」
「いや。それは分からないわ。相手が一体どういう目的でこんな事件を起こしたのか。何をしたいのかも。本当に何も分かってないわ」
「そうか、あ。そうだ町の人は町の人は元に戻せるのか?」
「いや、元に戻すとかじゃなくて。今町中に溢れかえってるゾンビは死体をゾンビとして動かしている物だろうから、町の人は誰一人として死んでないよ」
「そうだったのか。それは良かった。あれ?でも襲われたら、危なくないか?」
「それもないわ。私のお父様がこの事件が発生したのを確認してからすぐに町の人は家の中にいたくなる、外には出ないという暗示結界をかけたから。でも今はそれにつきっきりで、こっちに手が回せなくなってしまっているけど。それに本部から応援が来るのも少し時間がかかりそうだし。お願い勇気君一緒に今回の事件の犯人を捕まえない?」
「ああ。もちろんだとも。でも手掛かりとかはあるのか?」
「それは。えっと今から探すわ」
「ご安心を手掛かりならありますよ。勇気様」
いきなり現れたマリアンヌがその素晴らしい御胸様を揺らしつつ、勇気にそう声をかける。
「マリアンヌいつからそこにいたの?」
「あ。勇気君、良かった来てくれたのねって所からですわ」
「それ最初からじゃないか。というかいたのなら声を掛けてくれよ」
「申し訳ございません勇気様。声をかけるタイミングを見失ってしまったのです」
「いや。そんな謝らなくてもいいよ。それよりも手掛かりがあるってどういうこと?」
「はい。私の祈りを通じて神から悪しき者の居場所を突き止めました。そうしたら二つの場所がヒットしました」
「二つか?」
「はい。二つです。それでその二つの場所というのがこれです」
マリアンヌがそういって町の地図を広げる。その地図の2か所程がマーカーで赤く塗られていた。
「二つともの距離が大分離れているな?」
「はい。そうですね勇気様。それと片方のこっちの方の場所からは並々ならぬ化け物の気配がしました。それこそ今まで感じたことの無いレベルの恐ろしいという言葉が生温く感じるレベルの化け物がいました。正直行くのはお勧めできません。絶対に殺されます。あんな力は初めて感じました。あの化け物に勝てるのはそれこそ教皇様ぐらいだと思います」
マリアンヌは本当に顔を青くして怯える。
それ程までに恐ろしい力をマリアンヌは感じてしまったのだ。しかし、それは勇気にしっかりと伝わっていない。
マリアンヌからしてみれば教皇でなければ勝てないと思わせる程の化け物というのは最上級に近い相手への評価であり、この日本という国が一切の冗談も比喩も抜きで沈むないし更地になるレベルの戦いが繰り広げられるという意味であった。
だけど、教皇という存在の圧倒的な力を知らない勇気も白木も理解していなかったのだ。
「そこまでか。それは怖いな。でもそこに今回の元凶がいるかもしれないな。ならば俺はそいつを倒さなければならない」
勇ましいことを言う、その姿は正に勇気を持つ者。
勇気という名前が恐ろしく似合った。
しかし勇気と蛮勇は違う。
「勇気様。やめてください。絶対にあの化け物には勝てません。勇気様が強いのは知っていますし。勇気様の才能も知っています。それでも絶対に殺されます。だからやめてください」
マリアンヌは必死に懇願をする。
その表情に流石にこれは辞めた方がいいかなと思った勇気にまさかの助け舟が入る。
「大丈夫。そいつがどれだけの化け物かは知らないけど、陰陽連からの応援が来て結界を肩代わりしてくれれば私のお父様がどんな化け物だろうと打ち倒してくれるよ。だから戦いはしないけど、せめて敵情視察だけでもしない」
白木にとってお父様は絶対的な力を持った偉大なる人であった。
事実、それだけの力を持った陰陽師であり、過去にはあの厄災級悪魔・七つの大罪・【怠惰】封印に超級悪魔の単独討伐を3件、超級悪魔の合同討伐を8件、更には死霊王の残滓討伐作戦総指揮官を担当する。
などなどの様々な功績を上げている。
だから白木はお父様を心の底から最強の陰陽師だと思っていた。だからこそ、何があってもお父様が助けてくれるという安心感があったのだ。油断があったのだ。
しかし、白木は知らなかった。その化け物がお父様を心の底から憎む者であるということ。その化け物が自分を助けてくれた恩人であることを。その化け物が厄災級悪魔・七つの大罪・【怠惰】の封印者であることを。その化け物が同じクラスメイトの中二病・陰晴だということを。
何も知らなかった。
「確かに白木の言う通りだな。敵情視察だけならば危険も少なそうだし。した方が良いかもしれないな」
「え。でも、いや、敵情視察だけなら・・・」
一瞬反論をしようとするが、勇気のその熱量と溢れ出す自信に、言葉を出せなくなるマリアンヌ。
このままだと、無謀にもあの化け物の元に勇気様が行ってしまう。そして殺されると思った時だった。
「ストップです。待ってください。そこには今回の元凶はいません。そこにいるのは不可侵略の怠惰です」
かくしてそんな事態を一遍させる、もとい、隠れていたけど流石にとんでもない事態になったので口を出しに来た猫子が現れた。
「不可侵略の怠惰って何だそれは、というか猫子いつのまにいたの?」
「えっと、あ。勇気君、良かった来てくれたのねって所からいました」
「いやそれ最初からじゃないかってさっきも言ったなこのセリフ」
「テヘペロ。あ、それよりも勇気さん。絶対に不可侵略の怠惰に手を出したらいけませんからね」
「だから不可侵略の怠惰って何だよ」
勇気の疑問は至極当然である。
「勇気様、不可侵略の怠惰というのは、絶対に手を出してはいけない存在です。全てが謎に包まれており。男なのか女なのかも子供なのか大人なのかそもそも人間なのかすら分かっていない存在です。不可侵略の怠惰はこちらが危害を加えたりしない限り絶対に干渉してきません。不可侵略の怠惰が自ら動くというのも滅多にありません。しかし不可侵略の怠惰が動いたその瞬間、全てが必ずぶち壊されます。何十という超級悪魔を抱えている化け物レベルの組織であり、たった一柱で国一つを落とせるとさえ言われている厄災級悪魔よりも大きな戦力を持ってるとされる絶対に手を出してはいけない恐ろしい組織、いや存在です」
「そうなのか。それは恐ろしいなって待てよ、そんな謎に包まれている組織の居場所を何で猫子は知ってるんだ。というかそんな恐ろしい存在がこの町にいるのか?ヤバくないか?」
「確かに言われてみればそうですね。これは神父様に相談しなければ」
「確かに私もお父様に相談をしないと」
「それは止めた方が良いと思いますよ。不可侵略の怠惰は干渉しなければ絶対に危害を加えない存在、しかし干渉、というか自分の居場所を陰陽連に正教会という組織に伝えるという行為をされた場合、確実に敵対行為とみなされて私達含め居場所を知ったもの全員が殺されますよ」
・・・・・・・・・・・・
猫子の言葉は何故か恐ろしい程信じることが出来た。
「確かにそうだね。じゃあやめておいた方がいいかもね?もしも陰陽連と不可侵略の怠惰が対立したら困るからね」
「私も正教会と陰陽連が対立したら困ります」
「じゃあ。この情報は絶対に誰にも言わないってことでいい?」
「ああ。分かったよ」「私もそれでいいわ」「そうだね。それが良いと思うよ」
「よし。じゃあ。そうと決まれば4人で今回の元凶の所に向かおうか」
「そうだね」「うん。そうしようか」「皆さん。頑張りましょう」
そうして思い思いの返事をした後、勇気達は元凶に向かって走り出した。
――――――――――――――――――
補足説明
不可侵略の怠惰こと主人公の住む家の場所は正教会も陰陽連も把握しています。
把握した上で干渉してません。
何故なら干渉しても損害がメチャクチャに出るだけで。ほとんど利益がないからです。
むしろ、眷属育成の為やらで積極的に悪魔を狩ってくれたり、陰陽連には超一流レベルの技術がないと作ることが出来ない護符等を眷属全員の知識共有を利用して量産、それを直接陰陽連に売ったり、正教会においても、一般市民とほぼ変わらないような信仰者は悪魔や妖怪に襲われている所を助けてあげたりと、両方に恩を売ってるので、むしろ薄い氷のようなものではありますが協力関係にあります。
ただ、ここで落ち着い考えて欲しいのが陰陽連に正教会という世界でもトップクラスといっていい力を持つ二大組織とほぼ対等な協力関係を気付ける個人こと陰晴って、まあ、とんでもない化け物ですね。
――――――――――――
面白いと思って頂けたら嬉しい限りです。
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