第二章

第53話 一世紀ドラゴン

 降臨歴100年1月1日。


 降臨歴は、僕がアンジェリカに召喚された日を1月1日に制定した、この国、神聖ルシウス神国独自の暦だ。気が付けば、いつの間にかアンジェリカに召喚されて、この国に来てもう100年か……時の流れは早いものだね。


 この100年の間にいろいろなことがあった。暦も変わったし、国名も神聖ルシウス神国に変わった。僕の名前がそのまま国の名前になっていて、なんだか恥ずかしい。


 他にも変わったことがたくさんある。アンジェリカの父、ランベルト王は、様々な改革を断行し、新たな制度を作った【改革王】の尊称で呼ばれているのだ。ちなみに、僕を召喚したアンジェリカは【聖女】と呼ばれているよ。


 ランベルトは、暦や国名を変えただけではなく、国家元首まで自分から僕に正式に変えてしまった。今の僕は、王様より偉い立場になってしまったのだ。自由に政治に口出しできる立場だ。気に入らなければ、王様を変えることもできる。だけど正直、政治なんて難しい話には積極的に関わりたくないので、あまり口出ししないようにしている。


 ランベルトの行った改革はまだまだある。彼は大胆に軍備を縮小すると、元々力を入れていた交易に、更に力を入れ、巨万の富を築き上げ、僕に献上したのだ。国家元首の件といい、彼が積極的に僕を立てる理由は、僕たち神龍の庇護下に入って国の安全を図り、その影響力を行使したいからだ。日本で云う摂関政治ほど露骨じゃないけど、近いものはあるね。


 今では神聖ルシウス神国は、神の直接治める聖地と周知され、神聖にして侵すべからずという不可侵条約まで周辺国と結んでいる。また、国同士の争いの調停者として見做され始めているのは、神聖ルシウス神国の歴代の国王たちの外交努力の成果だろう。


 神聖ルシウス神国は、安寧と平和の中で発展を続けている。それはとても喜ばしいことだ。アンジェリカも喜んでくれるだろう。


 アンジェリカか……。


 アンジェリカ、クレア、アンネ、ティア、ヴィオ……皆、逝ってしまった……。100年という歳月は、人間には長すぎるのだ。思えば、僕は彼女たちに恋をしていたのかもしれない。人間とドラゴン。種族の違いからか、お互いあまり意識はしていなかったけど、僕の前世は人間だったからね。僕の恋愛対象は人間なんだ。


 アンジェリカたちが結婚するってなったときは、寝取られたような気分を味わったものだよ。本当に嫌だったし、結婚なんてしてほしくはなかった。ずっと傍に居てほしかった。でも、彼女たちは人間で、僕はドラゴンなんだ。そもそも種族が違う。


 僕の権力で、彼女たちの結婚を止めることもできたけど、それはしなかった。結婚したら必ず幸せになれるというわけじゃないけれど、結婚は幸せの1つの形だと思うんだ。それを彼女たちから奪うことはしたくなかった。


「ルー様?どうかなさいましたか?」

「っ!?」


 アンジェリカのことを思い出していたからか、その声がアンジェリカの声に聞こえて、驚いて見ると、そこには今代の姫巫女であるアレッサンドラが立っていた。


『なんでもないよ。ちょっと昔を思い出していたんだ…』


 アレッサンドラは、アンジェリカによく似た美少女だ。それもそのはず。アレッサンドラは、アンジェリカの孫の孫。アンジェリカから数えて、5代目の子孫になる。豊かな輝く金髪、少し垂れ目な優しげな青い瞳とか特にそっくりだ。


 アレッサンドラは、僕に近づいてくると、僕をギュッと優しく胸に抱きしめた。


「ルー様、なんだか悲しそうですわ…」


 アレッサンドラは、僕と幼い頃から一緒に居るからか、僕の表情を読むのが上手い。ドラゴンの表情が読めるなんて、なかなかすごい特技だと思う。


 アレッサンドラは、僕を胸に抱きしめると、胸のリボンを解く。すると、胸を覆っていた布がハラリと落ち、アレッサンドラの大きなおっぱいが現れる。


「わたくしの胸で慰めになればよろしいのですけど……」


 いきなりおっぱいを出すアレッサンドラは、完全に僕のおっぱい好きを把握していた。


 そもそも、アレッサンドラの着ている服。姫巫女であるアレッサンドラ専用の衣装で、イブニングドレスのように胸元が大きく開いた白と青のドレスなのだが、リボンを1つ解くだけですぐにおっぱいが出せるように作られている。ちなみに、他の巫女さんたちの衣装も同じ作りだ。


 もうなんていうか……国家レベルで僕のおっぱい好きが周知されているんだなと思うと、死ぬほど恥ずかしい。


 しかも、どういう教育をされているのか、巫女の少女たちは、すぐに僕におっぱいを見せてくれるんだ。触ったり舐めたりしても、怒られるどころか喜ばれる。聞いた話だと、僕がおっぱいを舐めると、美人になれるとか、将来おっぱいが垂れないとか、いろいろな効能があるらしい。そんなのないんだけどな……。いや、もしかしたら僕が知らないだけで神龍の加護的なものが働いているのかもしれない……ないか……。


 まぁそんなこんなで、ここ大神殿での生活は、とても快適だよ。アレッサンドラをはじめ、巫女さんたちは、皆美人で優しいし、ご飯はおいしいし、パパママドラゴンも一緒に居るしね。


 惜しむらくは、人間の寿命があまりにも儚いことだけど……その分一瞬一瞬を大事に暮らしていきたいと思う。


「あんっ!」


 今のこの一瞬を大切に!


 そんなことを考えながら、僕はアレッサンドラのおっぱいを頬張るのだった。はむはむ。

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