#1【リセットラムネ 繰り返す地獄Ⅰ】


「ふぇえ…赤点…」

私は先生から受け取った答案用紙を受け取り、目の前の〝30〟という数字を見て

お母さんから叱られることを容易に想像できた。

それに、妹と比べられ、もっと叱られるんだろうな、とも思った。

「あちゃ~…やっちゃったねぇ…」

まるで馬鹿にしているように、友人の百合香は軽くあしらう。

「軽っ!?もうちょっと言う事無いの~!?」

「別にないよ。まぁ桜、次は頑張りな。」

ポン、と私の肩に手を置き、鞄を手にして教室を出て行った。

今回のテストは自信あったのにな…

――――――――――――――――――――――――――――

「はぁ…今日は最低な一日だったよ…」

はぁ、と深いため息をつきながら、帰路につく。

私の手には、くしゃくしゃになった30点の答案用紙。

あのテスト、難しかったし…仕方ないっちゃ仕方ないんだけどさ…

両親にテスト見せるの嫌だな…特にお母さんは。

妹の牡丹と比べられるし…お父さんはまだいい方だけどさ…。

「この、何でも願いが叶うコイン…効果全くないじゃん…。」

テストの通知が来た日に拾った、噂のコイン。

〝このコインを持っている人は、必ず願いが叶う〟…って。

――――――――――――――――――――――――――――

「おかーさん、ただいま…。」

暗い気持ちで自分の部屋に入る。

最近何もうまくいかない。牡丹と比べられるわ、両親には怒られるわで…

「今までの事、やり直せればな~…」

私がそう呟いた瞬間、真っ黒な空間に飛ばされた。


「えっ…ここは…」

「ずいぶん困っているようね。」

急に後ろから声をかけられ、肩が跳ねる。

後ろには、綺麗な白い髪の少女がいた。不思議な子…。

「私は黒宮ユトカ、ここの住人よ…。」

「あっ…わ、私はさ、桜です…。」

「…そう、桜さん。こちらに来て…。」

ユトカさんは私の手を取り、暗闇の中を歩いていった。

この子の手は驚くほど細く小さくて、まるで人形みたい…。

――――――――――――――――――――――――――――

「さぁ、付いたわ。ようこそ、【黒ノ店】に…。」

ユトカさんは私の手を離し、お店のドアを開いた。

中には、お菓子や小物、文房具が沢山並んでいて、蒼い

シャンデリアも綺麗な雰囲気が出ていた。

「綺麗…。」

私は、思わず言葉をこぼした。

だって、とっても綺麗な雰囲気の部屋なんだもん…。

「…貴女の願いを教えて、きっと願いを叶えるから…。」

「私の願い…?」

もしかして、これを持っているから…?

私は、制服のポケットからコインを取り出してみた。

「え…光ってる…」

「多分、この店に来た影響だわ。心配しなくても、大丈夫よ。」

ここで、もしかして…願いをかなえてもらうの…?

―――――――――――――続く―――――――――――――

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