ショッキングピンクの傘

青野ひかり

第1話

甥っ子のカズ君がリビングの窓から恨めしそうに、ジーッと外を見つめている。

私も外に目をやると、青紫色の紫陽花が満開に咲き誇り、しとしとと振る雨が石の灯籠を濡らして、中々風情のある庭になっていた。


しかし、元気盛りの三歳児には風情なんてどうでもいいらしい。雨の日は退屈でしかない。外に出たくてウズウズしている。


とうとう、

「カズ君、お外に出たいよー!」

とグズリ始めた。

パパである弟は日頃の疲れが溜まっているのか、ソファで爆睡。義妹のママは、カズ君の二つ下の弟、ユウ君のお世話でてんてこ舞いだ。両親は買い出し中。

動けるのは私だけしかいない。


私は一つ溜め息を吐いて、

「カズ君、ひかりお姉ちゃんと一緒にお散歩に行こうか。」と声をかけた。

カズ君はニンマリして「いいよ~!」と答えた。

義妹に、「ちょっとカズ君と近所を散歩してくるね。」と声を掛けて、二人で玄関に向かった。

傘立てからカズ君の傘を出すと、カズ君の目がキラキラした。

青地に白い星柄の傘がカズ君は大好きだ。

カズ君に似合っているし、星柄が好きなカズ君の大のお気に入りだ。

私もビニール傘を出して、二人で外へ出た。


小雨の降る中、カズ君は溝を覗いて虫を探したり、近所の家の花を見たり、解放感に溢れて楽しそうだ。

私はそんなカズ君に注意を払いながら、後を、着いていく。

カズ君の傘が眼に入ると、ぼんやり自分の中学時代のことが頭に浮かんできた。


忘れられないあの傘との思い出が…。

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