改定前 第27話「悪役令嬢とヒロインの女子トーク4/5:ご飯よ!この世界って食事の事は何って言うのかしら」

「では皆様、そろそろ良いでしょうか? あらためて、お食事の席にどうぞ」

アデルに促され、ウチらは気を取り直してぞろぞろと隣の部屋に移動した、食事はというと、簡単なものかと思いきや、わざわざワゴンで運んできてくれたちゃんとしたものだった。


「でもアデル、そういう事を良く知っていたわね? 私は逆に自分以外の事はよく知らなかったから、ちょっと教えて欲しいわ」

ウチは色々と学校の説明を受けてはいたが、そういえば生徒の婚約者事情までは知らなかったので、ウチより詳しいアデルが意外だった。


「屋敷で同僚との雑談で色々話を聞きました。この国の貴族は発祥が魔力持ち、という所から、魔力の強さが権力に結び付きやすく、上位になるほど、ほぼ魔力持ちになります。当然、その子女もそれを受け継ぐ傾向にあります。

 そういった魔力持ちの貴族子女は16歳になる年の4月に、魔法学園に入学するのですが、これはこの国の社交シーズンと、非常に相性が悪いのです。

 社交シーズンはこの国の国会の開催に合わせて、議員となっている貴族の方々が地方から王都に滞在する事で発生しますので、1月から5月くらいなわけですが、もろに時期が魔法学園の入学・卒業と被っています。

 はっきり言ってこの時期に魔法学校に行きながら、夜会等にも行っているヒマはありません、夜会は遅いと深夜か明け方にまで及びますので、寝ている暇が無くなります」


あ、今頃って丁度社交シーズンの真っ最中なのか、そりゃ参加するの無理だわ。んん? この国会の期間って、たしか日本の国会と同じじゃないかな!? 前世の施設でサンセー権だかサーセン権だかで、選挙に行けとしつこく教わった気がする。

だから選挙はだいたい秋になるんだ、とかも。 なんかもう、日本の事とヨーロッパの貴族文化のごちゃまぜで、本当にカオスねこの世界。

そういえば、サンセー権?サーセン権?って何だっけ? 国会で偉そうにしてるおっさん達に、おっけー、するか、ゴメンナサイする権利、ってのが意味分かんなかったっけ。施設の人にいつか聞いてみようと思って結局そのままだったなぁ。


「魔力持ちの貴族子女は実質社交界から切り離されてしまう上に、卒業しますと、もう18才になっておりますので、婚約者を探しても年齢的に遅いのです。魔力を持たない貴族子女の場合は、早いと15才で婚約して、即結婚、という事もありますから。

 ですので、入学前に、早い時は生まれてすぐ婚約者を親が決めている事がほとんどだとされています。基本的に魔力持ちの配偶者は、早いもの勝ちですから。力の強い弱いをえり好みできる状況ではないんです」


ああ、とウチらはテーブルの席で給仕をされながら、アデル先生の説明に納得する。たしかに貴族の社交と魔法学園の両立は難しいのか、魔法学園で婚約者を探す、となると、逆にライバルだらけだしねー。


「ただ、何にでも例外はありまして、魔法学園でどうしても結婚したい恋人ができてしまった場合は、双方の家やお互いの婚約者の家との話し合いで、こっそり婚約解消をして、婚約し直す事があるとか、まぁ高額な違約金とか払わされる事が多いようですが」


「じゃあ、クレアさんも

「ここからが先程クレア様に警告した理由です、平民で、後ろだても無く、持参金も望めないクレア様の場合は、卒業後にわざわざ結婚する利点が普通はありません。ですので婚約解消する事は、周囲からは、認めてもらうのは、ほぼ不可能でしょう、

 ですので、最悪の場合、卒業時に『いい思い出だったね、はいさようなら』と弄ばれて終わり、という事になりかねないのです。もしくは、卒業後も結婚できないまま、相手が結婚するのを承知の上で、ずるずるとお付き合いを続けるしかありません。

 だから愛人かめかけ狙いなのか、と言われるわけです。この国は王族を除いて一夫一妻制ですから」


「ああああ~」

ウチの質問に食い気味に説明された内容で、またクレアさんが頭抱えちゃったよ。八方塞がりだなぁこの子、なんとかならないのかしら。

「まだあります、クレア様は希少な光の魔力属性持ちで、王太子様が自ら家名を与えられました。という事は極めて利用価値の高い平民という事で、それを知って尚すり寄ってくる碌でもない貴族に十分に注意すべきかと。ほぼ確実に政治的に利用されますので」


「ええ~、思ってたのと全然違う~、こんなはずじゃなかったのに――!」

「これが、現実と、”ゲーム”の違いなんです、これからの学園生活、どうかお気をつけ下さい」

また頭を抱えようとしていたクレアさんだったが、アデルがクレアさんの肩にそっと手を添えて語りかける優しい声にふと顔を上げていた、もしかして……、


「ねぇアデル、クレアさんの事、心配してくれてるの?」

「お嬢様の、ご友人ですから」

ウチの質問にわずかに頬を染めて答えてくれる。うん、やっぱりアデルは良い子だ。



「ねぇクレアさん、とりあえず、ご飯食べよ?」

ウチはまだ頭を抱えてるクレアさんにあえて前世の日本式に、”ご飯”と声をかけた、だいたいの事は、ご飯しっかり食べれば何とかなるものだ。

「うう、これからどうしよう……、何とか魔力を完全に封じてもらって……」

まだもう少し元気が足りてないな、もう少しショックを与えるべきかしら。


「クレアさーん、よく考えてみー? 攻略キャラの男子ってー、要はしゅきピ居るのに声かけてくるんよ? 仮に彼ピにしてもー、後で絶対浮気されるって、そんなの絶対ありえん系じゃん? エンカしたらガンダで逃げるレベルよ?」

「え? ええ~?まぁ、そう……言われると、この状況に、かなりわかりみが深くなってきました」

おお、前世のギャル口調にちょっと乗って来た。良い感じね。ちなみに、”ガンダ”ってのは”ガンガンダッシュする”って意味なの。

「そうそう、男子なんて他にいくらでもいるって。そんな無理にスパダリ狙って、無し寄りの無しーなの狙うよりは、ファンタジーな魔法学園生活を楽しまないと! いっぱい面白そうな所連れていってあげっから!」

「り! マジっスかお姉さま! おお~、なんか元気出てきた!」


「お二人とも、何を話しているかはよくわかりませんが、大分はしたない言葉遣いだ、というのはわかりますよ?」「「スミマセンデシタ」」

盛り上がりそうな所で、アデルさんに怒られてしまった。


次回 第28話「悪役令嬢とヒロインの女子トーク5/5:私達が、この世界で、できること」

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