モノガケラ
鈴井ロキ
それでは次のニュースです
時刻は午後10時15分。都内某所にあるとあるマンションの一室。
部屋の明かりがついておらず、カーテンで月の光も届かない。テレビから垂れ流される雑多な光が唯一の光源となり僅かに部屋の一部を照らしていた。それは同時に部屋の主である男の端正な顔立ちも浮かび上がらせる。
男はインスタントラーメンを啜りながら報道番組で取り沙汰されているニュースをじっと見つめていた。
『それでは次のニュースです。先週の日曜日午後5時頃、練馬区に住む女子高校生、南郷花梨さんが行方不明になった事件について警視庁は誘拐事件と断定。練馬警察署に捜査本部を設置して改めて本格的な捜査に乗り出すとのことです。また同署は引き続き情報提供を呼びかけています。心当たりのある方はーーー』
今まさに世間を騒がせているニュース。それが目の前のテレビから流れ始めた瞬間、箸を動かしていた手がふと止まる。
「あちゃぁ……ついに攫ったってとこまでバレちゃったか。これはボクのとこまで来ちゃうのも時間の問題かな?」
ンーッ!ンンーッ!!
そう呟く男の後ろの壁際で、ブレザーの制服を着た女子高生がうめき声を上げならもがいている。両手は背中に回されて手首を結束バンドで止められ、口元はガムテープで塞がれている。
もがく少女の声にならない叫びを気にする様子もなく、男はテレビに目を向けつつ思考を巡らせる。向こう側ではコメンテーターが事件に対する考えを話しているところだった。
「……うーん。もうちょいこの子と遊んでたかったけど、これ以上このままにしておくとホントにバレちゃいそうだから……うん。潮時かな」
男の目線がテレビから少女へと移った。箸とインスタントラーメンをテーブルに置き、強まる恐怖で体が震えている少女に近寄ると物寂しそうになトーンでポツリと話し始める。
「ごめんねお嬢さん。君には恨みも殺意もないんだけど……お兄さん、まだまだ遊びたいからさ。捕まるわけにはいかないんだよね。だから……本当にごめんね?」
数日後、あらゆるメディアが一斉にそのニュースを報じ始めた。
『それでは次のニュースです。今月4日、東京都杉並区神本公園の林の中で発見されたバラバラの遺体の身元について、 警視庁は先月から行方不明になっていた練馬区在住の南郷花梨さんであると発表しました。この件について警視庁は……』
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