カサンドラな新妻
連喜
第1話 新しい奥さん
本作は、「喪服の男」の続編です。
俺の数少ない友達Aさん。
Aさんは、一見するとイケメンでまともな人だが、実は発達障害だ。
テレビなんかでイケメンを連発してるから、ただの雰囲気イケメンだと思うかもしれないけど、Aさんの場合はジャニーズの人よりかっこいいくらいの超美形。身長は170くらいだけど、顔はモデルみたいに整ってた。本人もそれに気が付いてて、いつも鏡ばっかり見ていた。
20代の頃は合コンに連れて行くと、女性全員がAさんがいいというくらいの人だった。ただし、最初の30分くらいだけ・・・。
しかし、人によっては彼の”おかしさ”になかなか気付けないこともある。特に、イケメン&エリートのバイアスがかかると女性は正常な判断ができなくなってしまう。
彼自身も人と話す時は、”普通に見える”ようにと腐心しているんだからなおさらだ。20代の頃は、口下手で女性に振られまくっていたが、30代になってうまく立ち回れるようになったようだ。奥さんとの死別後は、マッチングアプリで複数の女性と交際していると聞いていた。そして、28歳の美女とすぐに結婚に漕ぎつけた。
俺だったら、しばらく遊んで独身を謳歌すると思うのだが、Aさんは家族がいないとダメな人なんだそうだ。家に帰って一人というのが苦手だとか。俺も発達障害だけど、一人の時間がないとダメなタイプで、Aさんとはちょっと違う。
Aさんが再婚して2か月くらい経った頃、俺はAさんに招かれて、新居に遊びに行くことになった。自分自身が独身なのに、新婚家庭に遊びに行って、他人の幸せを見せつけられるのも癪なのだが、Aさんが誘うから断れなかった。たぶん、友達が一人も来ないのも不自然だと思ったのだろう・・・。
Aさんとは事前にこんなやり取りがあった。
「再婚なのは内緒にしてるから。黙っててくれない?」
「でも、ばれない方が不思議だけど・・・だって、戸籍とか見たらわかるんじゃないの?」
「書類関係は俺が出してるから」
「子供もいるんだし・・・そのうち、ばれるよ」
「うん。でも・・・再婚だってわかったら、女の人は敬遠するから言ってないんだよ。特に死別は嫌って人が多いみたいだし」
そういうのは、その人がまだ奥さんを忘れられない場合に限る。
いや・・・そうとは限らないか。亡くなった奥さんに全く未練がないという時点で、人として終わってると思う・・・。
「最初に言うべきだったんじゃない?お互いすべてをさらけ出さないとできないだろ?結婚ってそういうもんじゃないの?」
俺は独身の癖に説教を垂れる。
「簡単に別れられないように急いで籍を入れたから。あっちは結婚を考えてた彼氏と別れたばっかりで、結婚を焦ってたし・・・」
「へえ。じゃあ、お互い結婚願望が強かったんだ」
俺だったら彼氏と別れたばっかりっていう人は遠慮する・・・。気を紛らわすための、適度な穴埋めにされている気がするからだ。
その騙された奥さんを見てみたい気がした。
面倒には巻き込まれたくなかったが・・・。
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