あの日魔法使いは何を望んだのか

@Shiranui320

第一話 旅立ちの日が来たようです

「勇者エギルよ。どうか聞いてほしい。我々の国はもう滅亡寸前なのだ。どうか魔王を倒してはくれぬか...」


元々、勇者は乗り気ではなかった。


でも国民のために、世界のために命を賭すことを選んだ。


「分かりましたよ王様。ですが俺だけでは無理です。仲間をください。」


「もう其方のことを待っておるわい。ほれ、入ってまいれ。」


貴方と出会ったのはこの日が初めてだったね。


「初めまして。私は魔法使いのラウラ。この国で最も攻撃魔法が使える魔法使いです。」


「俺はアインってんだ。見ての通り剣士だな。魔法は使えねぇが、腕っ節には自信があるぜ!よろしくな!」


「私はプリーストをやっております、エミルと申します。以後お見知り置きを。」


「なんだお前らよそよそしいなぁ笑」


勇者はそう笑った。


「ラウラさんは知らないかもだけど、実は俺、こいつらと面識があるんだ。言ってみたら幼馴染ってやつだな。王様。こいつらと旅に出ます。」


「では、行ってまいれ!其方らに少ないが、金貨100枚を渡しておこう。何か役に立つであろう。」


そう言って王はジャラジャラと鳴る袋を勇者に手渡した。


そして私達は市民に見送られながら、魔王討伐の旅に出た。


でも、初日だった。


だから次の街で宿を取って取り敢えず再会を喜び、親睦を深めようと言う話になった。


「お〜?エミルもお酒飲めるようになったんだな笑」


「笑わないでください勇者様!私だってもうお酒が飲める歳なんです!」


「そうだぞエギル。いんや、勇者様。」


「とかいうアインは飲み過ぎだ。無駄遣いするんじゃない笑」


今思えばこんな微笑ましい光景を私は望んでいたのかもしれない。


「な〜ラウラ。攻撃魔法ってどんな感じなんだ?俺、あんまり攻撃魔法って得意じゃないんだよなぁ...」


「では旅の道中にお教えしましょう。国一番の攻撃魔法の使い手がマンツーマンでつきっきりです!」


「そりゃ嬉しいこった!」


そう言って彼は目を糸のようにして私に微笑みかけた。


こんな幸せがずっと続くんだと思っていた。


「さてと、飲んで食ってしたわけだし、宿に戻って寝るか!」


そう貴方が一声かけるとみんな惜しそうにテーブルを後にしたっけ。


その夜の事は今でも覚えてる。


「なぁラウラ。もう寝ちゃったか?」


「いえいえ勇者様!何事でしょうか?」


「いや、なんだ。ちょっと話がしたくてな。みんなのところへ回ってるんだ」


「そうでしたか。」


「明日から長旅になる。思い残す事はないか?もうこの国には長くは帰れない。俺たちで魔王を倒さないと。」


「私たちならやれますよ。アインさんもエミルさんもそして勇者様もいるんですから!最強ですよ!」


「そうだな。おやすみ。明日からよろしく頼むよ。」


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