第1ヶ月目 私に女神が舞い降りた~もにょっとした気持ち~
連載1ヶ月記念IFです。
ーーー
ここは地球上のとある街。ここには、それはそれは女子の心を射止め続ける男子高校入学生がいました。
彼の名は
そんな彼はこの高校で新入生代表の挨拶を任されていました。壇上に上がれば、体育館中の全女子生徒からは黄色い声援を、全男子生徒からは黒い怨嗟の呪詛を浴びせられます。
「暖かな風に誘われ桜の蕾も開き始め、私達も全150名が無事に本校の入学式を迎えることが出来ました。」
とありふれた美形で高校最強の始まりを告げ、入学した動機、抱負や目標、そして決意の言葉を述べてその日の入学式を締めました。
彼は内心、
(今度こそ、女子の友達だけでなく、男子の友達とも仲良くならなければ!)
と1つの依頼でいきなりB級冒険者に昇格することよりもはるかに難しい目標を設定していた。そう、この男子高校生。生まれてから現在までずっとモテ期な人生を送っていて、そのせいかまともに話せる同性がいなかったのです。これはある意味、呪いじゃないかと頭の片隅で考えてもいました。
※呪い=<美形>
さて、そんな彼は試験の結果から当然、1年A組に配属され、周りは女子だけで固められています。
実はこの高校、今年は入学生の8割が女子という何処かのラノベ小説みたいな現象が起きていました。インフィニット・ストラ、じゃなくて、俺がお嬢様学え、でもないですが、一般男子にとっての桃源郷がこの高校で出現したのです。
理由は、彼の学力は全国模試でも上位に食い込むレベルであることがこの街の女子の間で周知であるため。その発信源は銀髪の天色の瞳をした少女であるらしいのだが、一体何処の全能...じゃなかったヤベー奴だろうか。
「はーい。全員、席について下さーい。特定の男子についての話も一旦、ブレーキを掛けて下さいね。」
1年A組の担任の先生の発言により、クラスを包んでいたかっこ可愛い旋風は鳴り止んだ。
「それでは改めまして。皆さん、ご入学おめでとうございます。私は本クラスを担任することになった
な、何て強烈な名前だろうか。クラス全員がそう思うだろう。だが、何故か後半の茨の道についてこのクラスの女子全員がうんうんと頷いていた。
「それでは、出席番号順に自己紹介を簡単にして下さい。」
出席番号1番の
「次にこのクラスの王じゃなかった。出席番号10番の男子クン、お願いしますね。」
担任の先生がそう言うと、クラスの女子全員がギラリと僕の方を見た。頼むからその無言の圧力をかけるのはやめて欲しい。僕は瑠璃ではない!
「えー始めまして。僕は川代一郎と言います。趣味はサウザンオールスターズを聞きながら勉強することです。よろしくお願いします。」
僕の自己紹介が終わると、キャーッ!という大声援とともにクラスの壁をも粉砕かつ玉砕する程の大喝采が巻き起こる。これも幼稚園、小学校、中学校共通のイベントである。
「次に出席番号11番、お願いします。」
「はい。」
後ろから声が聞こえたので、ちらりと振り返るとそこには一段と輝く美少女がいた。ハーフだろうか?髪の色は銀色で、瞳も黒じゃなくて天色をしていて、クラスの中でとびきり目につく美貌をしている。
「河城ヴィシュヌです。趣味はとあるアイドルの追っかけです。よろしくお願いします。」
ニコリッと微笑んだその笑顔はとても可愛かった。嗚呼、ドキドキする。こんな美少女が僕の後ろの席だなんて。この時、僕はそんな感じで浮かれていた
ら、どれだけ幸せだっただろうか。未来の僕はそう思っているだろう。
奇しくも同じ苗字の読み方をするヴィシュヌさんは自己紹介を終えて着席する。その後も様々な女子生徒が僕の方に向かって自己紹介をし、このクラスでのミーティングは終了した。
この時、僕の後ろにいる女神のような女子生徒は内心、こう思っていた。
(イチロウさん。これからずっとよろしくお願いします♡ああ、いい香りです。グヘ、ゲヘへ、エヘヘへへへ。)
◇◇◇
あの後、学校のルール説明や教科書配布などを経てクラスは解散。僕はこのまま家へと帰った。
のだが、僕は帰宅途中で不気味な視線を感じていた。何というか、『河城専用』という札が貼られた電信柱からハイライトオフ&コバルトブルーの瞳だけが僕の方を覗いていたのだ。
今までこんな風に誰かに後を憑けられたことは何度もあったから別に気にはしなかったが、今回のは群を抜いてヤバさが伝わっていた。そこで足早に帰路を進んでみたのだが、何故か僕とストーカーとの距離は一定を保っていた。
ストーカーの正体は誰だが分からない。しかし気にしたら負けという精神の元、僕は鋼鉄の心を持って家へと帰っていったのであった。
「イ・チ・ロ・ウ・さ・ん♡私、あなたのことなら何でも知っているんです。家の場所も部屋の場所も間取りも含めた全部を。エヘヘ。今夜は一緒に気持ち良くなりましょうね。そして
他の女になんてワタシマセンカラネ。」
ストーカーはそう言って、その場から姿を消した。
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