第83話 サリア教皇救出戦 ラペシュ被害者の会の救出
「神代流魔剣術 闇の巻 黒炎の鎌鼬!」
複数の黒炎の斬撃が天から降り注ぎ、風の獅子を一気に蹴散らす。これを見て、ここの一行全員が心の中で次のように思っただろう。
((((((来た!))))))
天からイチロウが舞い降りる。
「シュタッ!」
セルフ効果音も忘れない。
「アリア、あそこにいる金髪がラペシュか?」
アリアはこくりと頷く。すると、イチロウは女神達でも見せなかった表情を見せる。
「いっくん、怒ってる...。」
「静かに怒っています。」
「イチロウさんの怒っている姿、始めて見ました。」
「穏やかな人ほど怒らせると恐いのは本当みたいじゃ。」
「ハァ、私。あの顔で罵られたいですわ。詰られたいですわぁ。」
ソールェ...。
「そうか。そうじゃあ、皆に一つお願いしていいか?」
全員がイチロウの言葉に耳を傾ける。
「あのラペシュは僕が殺る。一人でだ。あいつはアリアの話を聞いていた時から許せないと思っていたんだ。」
そして、皆を代表して彼の第一婦人であるツカネが答える。
「分かったよ。じゃあ、ボク達はあの建物の中にいる実験体達を助けに行くよ。」
「頼む。そして、出来れば彼らの家族に会わせるようにしてほしい。」
全員は無言で返事をしてラペシュの方に向き直る。
「作戦会議は終わりましたかな?ならば、行きます」
すると、イチロウは神剣を鞘に収め、雷属性魔法の魔力を神剣と足に纏わせ、
「神代流魔剣術 雷の巻 雷神の
一瞬でラペシュに居合い斬りを放った。一筋の稲妻がラペシュへと迸る。
「くっ。」
ラペシュは防御に成功したが、立っていた場所から右方向へと吹っ飛ばされる。
「今のうちに。」
ツカネ達全員は、案内役のアリアを先頭にして、『神降ろしの間』へと入っていく。
◇◇◇
(聖女&女神様~ズ視点)
イチロウがラペシュと戦いを始めた頃、女性陣はアリアの指示に従って、『神降ろしの間』の地下を移動していた。
「うわぁ、薬臭いねー。」
「本当に臭いです。うわ、何あの植物!?紫色をしていて気持ち悪いです。」
「どれもこれも違法植物だらけじゃないですか?」
「ん?見るのじゃ。あそこに檻があるぞ。」
「あれですの?帝国から買ったという奴隷というのは...。」
レベルアップ増強剤の実験室に入ると、左右にそれの原料となる違法植物の列、その通路を通ると薬品瓶や調合器具が乗っているテーブルがあり、その奥には檻があった。
檻の中は四肢に欠陥のある人族はいるが少数で、大多数は獣人族(犬、猫、ウサギ、虎など)、エルフ族、吸血鬼族のような亜人。
「やはり、帝国から購入されていたようですね。あの国は亜人を差別していますから...。」
アリアは顔を俯かせ、目の前の光景を見ていた。
「取りあえず、檻をこわしておくよー。<ウインドカッター>。」
檻を風属性魔法で斬っていき、檻から出られるようにする。
「皆さん、私達はあなた達をここから解放するためにやって来ました。さぁ、ここから出ましょう。」
アリアが囚われの者達に呼びかけるが、全員頷かなかった。
「助けに来てくれたのは嬉しいけどよ。」
「ああ。この腕輪がある限り、俺達に明日はないんだ。」
彼らには共通の腕輪がしてあった。それは命令をインプットし、背けば手首を締め上げて苦痛を伴わせる『
「そ、そんな...。奴隷だけに留まらず、帝国はフォース・リングまで。これでは、この部屋から出られないではありませんか!」
「ああ、お嬢さんの言うとおりだ。この腕輪にインプットされた命令は、『この部屋から出るな』だ。だから俺達は親父にもお袋にも...。」
その言葉を皮切りに悲しい表情を浮かべたり、嗚咽するような声を出し始める被害者達。すると、あの者達が立ち上がる。
「「「「「我々5柱の女神達が命じる、ここにあるフォース・リング共は消えろ!」」」」」
5人の女神達の<女神の御言葉>。その対象は人だけでなく、物にも当てはまるため、フォース・リングはその命令に従って粉々に砕け散って消えた。
静寂に包まれる部屋。そして、彼らが腕輪の消失を知ると一斉に歓喜の声を上げた。
「うおおお、自由だ。自由だァー!」
「日の光を!日の光を浴びれる!」
「いや、私達吸血鬼族としてはあまり浴びたくないけどね...。」
3者3様の感想が出たところで、彼女達は次のステップを踏む。
「早速ですが、皆さん。ここにある違法植物の植片、奴隷購入の履歴書の回収をお願いします。それが終わった後、転移魔法でマリアのいる場所へと転移します。」
「おう、お安い御用だぜ。帝国め。目に物見せてくれるわ。」
「私なんて目の前で仲間を。絶対に許さないわ。」
ラペシュと帝国への恨みを活力として、彼らはいそいそと不斉の証拠品を集め、ツカネによる転移魔法でマリアの所へと転移していった。
◇◇◇
『神降ろしの広場』。ここで、黒炎と暴風がぶつかり合っていた。
「神代流魔剣術 闇の巻 裁きの黒炎龍!」
「<ウインド・オーバー・クラッシュ>!」
ドゴォーン!
「嬉しいですね。私は、自身の力を試す場が欲しかったのです。」
「...。」
イチロウとラペシュはお互い、奥の手を隠しながら戦っていた。
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