第78話 サリア教皇救出戦 美形神VS戦禍 魔装と爆発

『女神の家』のリーダーであるイチロウは


「あ、ここって」


目の前に広がる光景を見て驚いていた。何故なら、それは見覚えのあるだったからだ。


「絶対にソールが破壊した山脈の跡地じゃん...。」


うわあ...と肩を落とすイチロウ。聖国の皆様にどう説明しようかと悩んでいるところに、背後から声が掛かる。


「んあ?もう来たのか!?」


後ろを見ると、茶色肌の赤髪の女性がいた。だが、何故か僕の方を見て固まっている。


「うっわ!かっこ可愛ーわ。おいおい、大司教様よ。こいつをあたいが貰ってもいいのかよ!?最高の美男子じゃねぇか!」


じっとりとした視線を向けられ、イチロウは後ずさりしかけるが、何とか立ち直って鑑定をする。


ジュネ

レベル:99

種族:魔族(アブソーブバッド)

[能力値]

HP:9,900/9,900

MP:9,900/9,900

攻撃力:9,900

防御力:9,900

[スキル]

<火属性魔法 LV.9>、<風属性魔法 LV.9>、<雷属性魔法 LV.8>、<爆発魔法 LV.9>、<HP&MPドレイン>、<レベル倍化>

[固有スキル]

<厄神の加護>

[好感度]

90/100


レベル99。それを見て、この世界に来たばかりの頃を思い出す。あの時も確かそれくらいだったなとしみじみ感じていると、


「まぁ。まずは自己紹介しようぜ。あたいは戦禍のジュネ。あんたはオールラウンダーのイチロウでいいな?ここの冒険者ギルドの方で聞いたことがあるぜ。」


ジュネは僕の方に指を指して名前を言い当ててくる。そして右手の人差し指を赤色に染まった唇に持っていき、次のことを言い出した。


「なぁ、イチロウ。一つ提案があるんだけどよ、これからあたいとちゅっちゅっしねぇか?あの世に旅立てるくらいの心地よさを届けてやるからさ。」


イチロウの<上級美形>は今日も女の子を惹き合わせる。ジュネは完全に頬を染めて、イチロウの顔の方を凝視している。その目は完全に肉食獣の目をしていた。


「どうして僕の前に現われる女性はこんな変な奴ばっかなんだよぉぉぉ!」


イチロウは天を見て、生まれながらに持つ<美形>のろいに対して何度目か分からない溜息を吐いた。せめてこういう戦いの場においては、普段感じている気苦労を忘れたい。それが彼の心からの願いだったからだ。


「まぁ、その、あれだ。リーダーとして苦労してんだな。」


止めろ。敵なんかに同情されたら何かが終わりになるわ。ええい。取りあえず、戦いだ。戦闘はもう始まっているんだ。僕は神剣を構える。


「あ、構えるのか。ということは、ちゅっちゅっはお預けか。ちょっと残念だぜ。まぁ、嫌でもあたいとちゅっちゅっして貰うがな。」


すると、ジュネは僕の方にグッド手を向ける。親指が下ろされると、何かの魔力が放出される気配がした。僕はそれを避けると、背にあった巨大な岩が爆発した。


「よく分かったな。これがあたいの得意魔法<マジック・ボム>だ。そして、こんなことも出来るぜ。」


すると、グッド手の所に火属性魔法の魔力が灯り、親指が下ろされる。


「<ファイヤ・ボム>。」


火炎を伴った爆発が目の前の足元で起こる。目くらましか。後ろへと跳躍することで回避するが、前からナイフが飛んできたため、咄嗟に体を捻る。


シャッ


頬をかすったが、何とか回避できた。危ねぇ!


「へぇ。これも読むのか。<ファイア・クラスターボム>。」


両手でグッド手をつくり、連続で親指を下ろしていく。<最上級索敵>で探知すると、赤色の魔力群が僕の方に襲いかかるのが分かる。


「<魔装:ダーク>。神代流魔剣術 闇の巻 黒炎の鎌鼬カマイタチ!」


神剣から複数の黒炎の斬撃を放っていく。それは、赤色の魔力とぶつかり、僕とジュネの間で爆発が連続で起こることとなる。ここで畳みかけだ。


「神代流魔剣術 闇の巻 裁きの黒炎龍。」


ジュネに向かって黒炎の龍を放つ。


「<レベル倍化>!」


ジュネは今のレベルでは、イチロウの一撃を防げないと察知し、変身レベルアップした。身体は赤黒くなり、更に蒸気が噴き出し、黒色のオーラを指先へと集中させていく。


「オオオ!<ファイア・ウインド・ミクスチャー>。」


指先に火属性魔法の魔力と風属性魔法の魔力がそれぞれ灯り、大きな炎の竜巻を形成させる。


「<ファイアストーム・ツインズボム>。」


そして、親指を下ろすことで、指先の炎の竜巻を黒い竜へと解き放った。黒い竜の炎と赤い竜巻の炎が激突。爆発して僕の黒い竜を押しのけようとするが、僕の攻撃はその威力に負けずにジュネへと向かっていく。


「ウアアア!オシモドサレ」


黒い竜が一気に赤い竜巻ごと押し返し、ジュネを黒い炎で覆い尽くした。


「ふぅ。」


イチロウはこれを見て、魔装を解除し神剣をしまう。


(食われそうで、怖かった。)


と内心思いつつ、先を急ぐため、イチロウはここを後にした。


















と思ったが、体が痺れ、一歩も動けなくなってしまう。


「え?」


イチロウが自身の体の変化に戸惑っている時、あの声が辺りに響き渡る。


「ようやく効いてきたみたいだな。あたいの痺れ薬♡」


ーーー


次回、ジュネが???の怒りを買ってしまいます...ジュネよ、南無。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る