第40話 呼ばれて飛び出て6人目
イチロウです。あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!僕はこの奈落の底というダンジョンでラストモンスターの報酬である宝箱を開けたと思ったら中には2本角の鬼の幼女が入っていたんだ...。
何を言っているのかわからねーと思うが僕も何が何だか分からないんだ...。え?何?この世界のダンジョンというのは某配管工のペーパーシリーズのフェアリンみたいなものを宝箱に入れる習慣でもあるの?
取りあえず僕は、宝箱の蓋に手を掛けて、そっと閉じた。
「コラァ、無視すんなぁー!久々のシャバだと言うのに再び牢獄に押し戻すつもりかぁー!」
宝箱から勢いよく飛び出してくる鬼娘。そもそもこの娘は誰なんだ?鑑定。
スイカ 1000歳 女
レベル:270
種族:酒神(酒呑童子)
[能力値]
HP:270,000/270,000
MP:270,000/270,000
攻撃力:270,000
防御力:270,000
[スキル]
<酔鬼剛拳法 LV.10>、<酒造>、<金剛力>、<畏れ>、<万能>
[固有スキル]
<酒神>
[好感度]
100,000,000,000/100
カン☆コーン!
「酒神!?何故酒神がここに...閉じ込められたのか?自力で宝箱の中に?酒神!」
あまりの番狂わせに混乱する僕。そこに、横から忍び寄っていたアウラに顔を掴まされ、無言でキスされる。
ブチュッ!
「むっぐぅぅぅ!?」
キスは数秒続いた後、ゆっくりと解放された。
「落ち着いたかい?姫。」
うん。ありがとう。でも、出来れば人前でキスするのは止めて欲しい。
「んぁ!?何やってんだぁ。取りあえず、楽しそうだからあたしも混ぜろぉ!」
スイカはキスから解放されたばかりの僕の顔を掴み、キスをしようと顔を近づけるが、
「う...。」
おいおいおい!?顔が青くなって。おい、止めろ。こんな時に、スイカさんリバース事件は...あ...ああ...うわあああ!
しばらくお待ち下さい(船の背景)
「ふぅ、スッとしたZE☆」
うん。こっちは逆にあァァァんまりだァァアァと叫びたいけどね。
「あーそれで、解放記念にまた酒を一飲みしたいんだけどー、お酒頂戴な?」
うるうるした目で懇願するスイカ。さっきまでの態度とのギャップも相まって、少しドギマギする。
「お酒をくれるとうれしいな?」
ここぞとばかりにスイカはさらに畳みかけてくる。持ちうる愛らしさ全てを引き出して懇願してくるが、口から匂ってくる酒の匂いのせいで台無しになっている。
「まずはここから出ようか?」
アウラが困った顔をしつつも提案する。ああ、そうだった。こうしている間にも
「<創造魔法:甘酒>。」
スイカには、この飲み過ぎ後でも大丈夫な甘酒(アルコール度数1%未満)を与えて、部屋の中央に光り輝く転移魔法陣の上に乗った。
◇◇◇
プロスペリア王国よ!僕は帰ってきた!イチロウです。現在、奈落の底の入り口前に転移しました。その場所は王城の裏庭にあり、王家の者が厳重に監視と管理をし、実力を認められた者のみが入れるような仕組みになっている。
「だが、転移魔法陣をあそこへと繋げていたんだ。一体、どうやって仕掛けた者は最下層まで...。少なくとも、SS級が複数はいないと不可能な筈だ...。」
アウラは王家の者として、この事態を考察していた。だが、僕にはそんな暇はない。急いで沈静化させなければ。
「ごくごくごく。ぷっはぁ~。この甘酒なるものは2日酔い時にぴったりの代物だぁ。イチロウ。お手柄だぞぉ。」
甘酒(正確にはソフトドリンクの一種)のようなアルコール度数の低いものも酒神にとってはセーフゾーンらしい。僕達3人は急いでギルドの方へと向かった。
◇◇◇
「プロスペリアアカムカデって知ってる?これをキミの耳に入れてみたいんだけど、いいよね?」
「お兄ちゃんの恨み、お兄ちゃんの恨み、お兄ちゃんの恨み...。」
ギルドに帰ると、2人の冒険者が椅子に括り付けられて拷...じゃなく、尋問を受けていた。あの2人って、実践試験でツカネとアカネを相手したエックハルトとラプスじゃないか。何故、こんなことに?
「ああ、イチロウ様。勇者様。よくぞご無事で。」
ミミルさんを皮切りに人がなだれ込んでくる。中には目を充血させる程まで涙を流していた者までいた。そして、肝心の女神達はというと、
「いっくん、駄目じゃないか。急にいなくなって。今日と明日でしっかりとお仕置きするからねー。」
「私、寂しかったんです。ダンジョンから帰ってきて、お姉ちゃんと一緒にS級に昇格したのは良いものの、お兄ちゃんが行方不明だと聞かされたときは目の前が真っ暗になったんです。今日明日、私にお兄ちゃんを注ぎ込んで下さいね。」
「婿殿。そこに括り付けてる奴らが婿殿を愚かにも奈落の底に転移させた罰当たりじゃ。チヒロにもこのことを話すとメルアと一緒に何処かへと向かったが?そ・れ・と、いくら妾の不注意が原因とはいえ、妾達を悲しませた責任は十分に取って貰うぞ。第四婦人としてしっかりと絞り取ってくれるわ。」
お、怒ってるぅ!僕の頭の中は転移事件の真相よりも今日から行われる
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