第39話 ランクアップ試験 黒き神剣と白き聖剣

イチロウです。とうとうランクアップ試験も終わりを迎えています。


キュオオオオオッ


僕とアウラはこの奈落の底のラストモンスター『プラチナ・キングドラゴン』と対峙している。白銀の巨体、全てを切り裂きそうな爪、体から吹き出すオーラ。ラストモンスターとしては相応しい貫禄がある。シラユキ程ではないけど。


「<解放レリーズ光熱分解フォトン・ザ・モルシス>。」


聖剣が白い光を帯び、さらに熱をも帯びることで斬れ味を増していく。では、僕の方も準備しますか。


「<魔装:ダーク>。」


黒い稲妻を伴った黒炎が僕の神剣に纏わり付く。正直に言えば、ラグナロクを使おうと思えば使うこともできるが、あれをここで使うとドラゴンだけでなくこのダンジョン事態も崩壊してしまう危険性がある。よって、こういう屋内では<魔装>が精一杯なのだ。


キュガァァァ


いきなりプラチナブレスをブチかましてくる。僕達は左右にかわすことでブレスの直撃を回避して、ドラゴンに近づいてくる。


「イチロウくん。まずは翼を狙って、ドラゴンの動きを制限させるよ。」


さすが勇者。的確な指示を出してくれるため、立ち回りやすい。


「<飛行>。」


<竜神の夫>により新たに獲得した<飛行>を使ってドラゴンの背中に回り込む。アウラは地上で注意を引きつけてくれているため、ドラゴンは背後の僕に気づかない。神剣で翼を斬りに掛かるが、硬すぎて刃が通らない。なので、<剛力>を使って力を増幅すると見事に翼を斬ることが出来た。


キュルオオオッ


片翼では上昇出来ないため、ドラゴンは空から地上に落下する。


飛べないと分かったドラゴンは、爪を素早く振るう。僕は<剛力>で強化した斬撃で受け止め、アウラはその速さで楽々と回避していく。


「次は爪。1手ずつ確実に斬り落としていくよ。」


合点。僕は<爪撃>を魔力にのせ、複数の黒炎の斬撃を放っていく。


「神代流魔剣術 闇の巻 黒炎の鎌鼬カマイタチ。」


僕の斬撃がドラゴンの1本の手を斬り落とし、ドラゴンは怯む。そして、もう1本の手を僕へと振り下ろそうとするが、


「姫に手出しはさせないよ。」


聖剣を構えたアウラが横から颯爽と現われ、一閃する。これにより、ドラゴンの手は無くなったため、ドラゴンの攻撃手段は残りブレスのみとなった。それを察してか、ドラゴンは口からプラチナ色の光が漏れ出し、構えを取る。


「イチロウくん。最後は豪快にフィニッシュしよう。」


「了解だぜ。」


アウラは聖剣から発する白い光を強め、僕は剣の黒い炎の勢いを強める。両者が互いに力を溜め、そして全力の一撃をお見舞いする。


ギュオオオッ!


ドラゴンは口から最大の大きさのプラチナブレスを放つ。


「<光の裁きプリズム・ジャッジメント>。」


「神代流魔剣術 闇の巻 裁きの黒炎龍。」


対して、僕達は白い閃光と黒い龍をそれぞれ放ち、更にそれが一つとなっって白いオーラを纏った黒龍となってブレスに衝突した。


バチバチバチとフラッシュし、その余波がダンジョンの壁を破壊していく。ドラゴンが根気よく粘るせいか、なかなか押し返すことができずに拮抗した状態が続く。


しかし、アウラの方に限界が来たのか、光の威力がだんだんと弱まっていく。それを察してか、ドラゴンは持ちうる力全てをブレスにのせて、威力を上げてくる。これにより、徐々に僕達の黒龍は押し戻されていく。


「この程度で音を上げてどうするんだ!アウラ。パワーが足んねぇぞ。怯えんな。このまま愛しい妹から永遠におさらばしても良いのか?僕が力を更に込めないと姫を守れねぇか!」


「ぼくは勇者だ。国を、姫を、妹を死んでも守り抜くために勇者になったんだ。僕は、こんな所で負けるわけにはいかないんだぁ!」


白い光がより輝きを増す。一気にブレスを押し戻し、ドラゴンの口へと黒龍は直撃し、その頭を焼き尽くした。その時、彼女は確かに聞いた。


(ならば、例え死んだとしても守ってみせよ。お主の大切な物を。)


その言葉を最後に、アウラは意識を閉ざした。


◇◇◇


僕はアウラを寝かせ、プラチナ・キングドラゴンを<アイテムボックス>にしまった。すると、アナウンスが突然、鳴り響いた。


(おめでとうございます。イチロウ、アウラは見事に『奈落の底』を踏破しました。報酬を与えます。)


アナウンスが終わると、目の前に宝箱が出現する。あのような強大なラストモンスターを倒したんだ。宝箱の中身はとても凄いアイテムか金銀財宝の類いに違いない。


宝箱の中身についてドキドキしていると、もう1人の踏破者が目を覚ます。


「う...ドラゴンは。」


僕はアウラに『奈落の底』を踏破したこと、報酬の宝箱が出現したことを伝える。彼女はそれを聞いて涙を流して、僕に抱きついてきた。


「イチロウくん。嘘じゃないんだよね。あの最難関のダンジョンをぼく達2人で踏破したんだよね。」


く、苦しい。胸を押しつけないでくれ。息苦しさを訴えると、直ぐさま僕から離れてくれた。


気を取り直して、僕達は宝箱の方へと向かった。まだ見ぬ財宝やアイテムに期待を寄せて、僕達2人で『いっせーの』と宝箱の蓋を豪快に開けた。そこから出てきたのは、


「ニャハハハ。お酒。お酒をじゃんじゃん持って来ぉい。」


酒気を帯びた2本角の鬼の幼女だった。親方!宝箱から女の子が!

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