第26話 夢魔のマリッジパス

はい。引き続き僕です。イチロウです。僕は今、メルアさんに城を案内して貰っています。話しに聞く所によると、僕を最高級のお部屋に連れて行ってくれるらしい。


「それにしてもイチロウ様。あなたはどうしてこうかっこ可愛いのでしょうか?」


「これは、生まれつきなのでどうにも。」


メルアさんの質問に対し、少しだけはぐらかして答える。まぁ、転生時から<美形>スキルを持っているんだし、概ね間違っては無いだろう。それにしても、メルアさんの肌は褐色で、今までに見たことが無い肌色をしている。髪も灰色で、まるで魔族よりな雰囲気を漂わせている。


「どうしましたか、イチロウ様?」


メルアさんが覗き込む。


「いえ、何でも。ただ、どんどん地下の方に向かっているなと思って。」


壁も大理石の白色から青銅の青色に変わっていることから、明らかに雰囲気が異なる空間であることは分かる。そして、青色の壁をした廊下を渡りきるとそこには、ルビーやサファイアが散りばめられた扉があった。


「イチロウ様。ここが本日のお部屋となっております。どうぞごゆっくりしていって下さい。」


メルアさんに言われ、僕は恐る恐る扉を開けた。するとそこには、とても広い空間が展開していた。天井にはキラキラとした粒が散りばめられ、奥には大きいベッドが置いてある。


「イチロウ様。立ち止まっていては後がつかえてしまいます。」


「あ、すみませんメルアさん。少しびっくりしていただけです。」


僕は迷惑をこれ以上掛けないよう、部屋の中に入った。いや、


「メルア。ここからは誰も通さないように。」


「かしこまりました、シャルティア様。どうぞ、ごゆっくり。」


◇◇◇


部屋の中に入ると、更に驚愕する。天井だけでなく壁にもキラキラとした粒が散りばめられていたのだ。まるで、360度夜空が広がったような空間だ。イメージ的にはプラネタリウムに近い。明かりは奥にある暖炉の火のみで、その近くにベッドがあった。まあ、幻想的な風景を楽しんでいくという点でここは最高級のお部屋かもしれない。


僕がベッドに腰掛けて辺りを見渡していると突然、ガチャッと音がした。慌てて扉の方を見ると、そこには王女様の姿が。手を後ろにしている姿から、閉じ込めた犯人は王女様とみて間違いないだろう。


「あの、王女様。どうして鍵を掛けるんですか?」


すると、王女様は瞳の色を桃色に変える。すると、また体が動かなくなる。どうやら、瞳が桃色に変わると<魅了>スキルが発動するのだろう。『魅了の魔眼』と言ってもいい。


そして、<魅了>スキルの発動と同時に、部屋の様子はガラリと変わった。キラキラした粒からピンク色の光が照射し、暖炉からはピンク色の煙が発生し、部屋中を瞬く間にピンク色で充満させた。そうです。この部屋の雰囲気はどう見てもラブホです。本当にありがとうございました。


「イチロウ様。どうか私のことはシャルティアとお呼び下さい。」


王女様もといシャルティア様は歩を進めるとドレスをはだけさせ、ベッドの方に向かう。そしてベッドに辿り着くと、再びキスをしてきて僕をベッドの上へと押し倒した。


「この部屋がどういう部屋かご存じですか?」


そんなの分かるわけ無いじゃん。初めて来た所なのにその問いに正解した場合、その人は不法侵入経験者か変態認定されるだろう。


「フフフ。この部屋は『契りの部屋』。ここで、夢魔の女性は見初めた男性と婚約の契りを交わすの。『婚約回路マリッジパス』って知ってる?これは、夢魔が異性と行為に及んだ時に形成される魔力の糸で、そこから夢魔へと魔力が流れていくの。そのパスを形成するのが、私達夢魔の婚約の儀。」


つまり僕は、まんまと罠にかかったわけだ。これ、メルアさんもグルだな。止める様子も無かったし。


「イチロウ様はこれから私と『婚約回路マリッジパス』を形成していただきます。それに、そろそろ効いてきたみたいですし。」


何が効いて...!?体が熱い。それに何だかムラムラしてくる。理性が全く働かない。


「原因はこのピンク色の煙。これは『夢魔の香』で、性欲や興奮を高める効果があるの。どう、ここも苦しくなってきたでしょ?」


体は動かない。理性も働かない。僕は完全にまな板の上の鯉だ。ピッチピチとはねられないけど。


「ハァハァ。グヘヘヘヘヘ。イチロウ様ぁ。私もなんだか熱くなってしまいました。服を脱がせますね。」


エロ親父みたいな顔をしたシャルティア様に抵抗する間もなく服がひんむかれる。ビリビリと破くな。ああ、これから何を着ていけばいいんだよ?そして、何処かの情報屋に目撃されて


『B級冒険者イチロウ。世はまさに無服時代!』ドンッ


みたいなスクープ記事が流されるとか洒落にならないぞ。ありったけの夢はかき集められないし、捜し物も探しに行けないよ。


「イチロウ様。初めて会ったときから感じていました。容姿もさながらその魔力の膨大さと特性。5色がかった魔力なんて見たこともなく、そして濃厚なその味。夢魔にとってはこれ以上無い優良物件なんです、イチロウ様という人は。」


そう言いつつも、婚約の儀成立へのカウントダウンはもう0に差し掛かっていた。


「それじゃあいただきますね、イチロウ様。夢魔のテクニックを存分に堪能して下さいませ。」


何をする!?HA☆NA☆SE!うわあアッー。

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