第10話 2人目、襲来

僕達は今、装備を買いに来ている。ポーションとか武器とか服など。僕の今の恰好は未だ、制服姿だし<偽装>で誤魔化さないと注目されるからな。もう、別の意味でそうなっているけど。なので、まずは服屋である”シルフ”。ここで、冒険者に相応しい服装に衣替えだ。


「いらっしゃ、ちょっと皆、最高の素材が来たわよー。」


うおお!?いきなり手を掴まれたぞ。あの、すみません。他のお客様のご迷惑になりますのでやめて下さい。


「いやーん。かっこ可愛い。見た感じ、服のサイズは中くらいがよさそうだね。」


「ねぇねぇ、ぼくいくつ?ご要望があればお姉さん、聞いちゃうよー。」


えっと。取りあえず、手を離してくれませんか?それが、僕の要望なんですが。


「彼とボクの服を一式ずつお願いしまーす。これから冒険者として活躍していくので、それに相応しい服装を。ああ、ボクの方は自分で決めていくからそっちはどうぞ遠慮無く見繕っていってねー。」


う、裏切り者ぉー。だ、誰かこの状況を何とか。


「星から星に泣く人の、涙を背負って依頼の始末。いつもニコニコ、イチロウさんの隣に降臨する妹系女神、アカネちゃん。お呼びとあらば即参上!」


...あの、どちら様でしょうか?謎の女の子登場により、余計にややこしくなった気がするし。それにしても、誰かに似ているような?


「イチロウさん。冒険者の服を見繕いたいんですよね。任せて下さい。私が店員さんと一緒にヘルプしてあげます。」


火に油を注がないで欲しいんですが。そのワキワキした手を引っ込んで欲しいんですけど。


「皆の者、掛かってください。軽くて、丈夫で、魔法耐性バッチリな服を着させて下さい。」


「「「ラジャー」」」


あーれー。


◇◇◇


(ツカネ視点)


さーて。どんな服がいいかなー?いっくんのハートを射止める服装はどれだろうか?


「第一夫人...いつ聞いても良い響きだよねー。外堀も埋めて絶好調。っ!?思ったより早く動き出したみたいだね。しかもこの気配。」


思いのほか、行動力があるみたいだねボク達女神というのは。ボク達はそもそも恋愛感情なんて今までには無い。かといって、下界のそういうものには前々から興味はあった。そんな状況下で、いっくん。キミのような万物を魅了する男の子が来たら、どうなると思う?そりゃ、こんなチャンス逃すわけないよねー。キミも同じ事を思っているんじゃない、ボクの妹よ。


◇◇◇


ふー。ギリギリだ。ギリギリで耐えたぞ。どさくさに紛れてボディタッチしてくるし、いい匂いもするし、柔らかいし。特にアカネなんて、途中でクンカクンカスーハーして来たからびっくりしたよ。そんなこんながあって僕の服装は決まりました。上は白色のシャツに藍色のブラウス、下は茶色のズボンと落ち着いたものになったけれど。ちなみに合計金額は金貨1枚です。


「マーベラス。配色、マッチング、機能バッチリです。いいなぁ、私もそんな服装欲しいです。今着ている服なんてもう、1つ前の流行ものだから、乗り遅れちゃっているんですよ。それにしても、イチロウさん。どうしてそんなにテンション低いんです?私でも抱いて、元気を出して下さい。」


元凶その1が何を言っているのか分かりません。それと、どうして僕の名前を知っているんですか?は、もしかして不審者!?ヤバい。防犯魔道具はどこだろうか?


「いっくん。そう思うのは仕方が無いけど、この子は怪しい者じゃないことはボクが保障するよ。」


遅れて元凶その2がやって来た。上下ともに青色を基調としたシャツワンピースを着用していて、何というか


「独特だな。」


「独特ですね。」


「キミ達。ボクの服装に何かツッコミを入れたい雰囲気を発しているようだけど。」


「いや、多分見た目より機能を重視して選んでいるのかと思いまして。」


「というより、相変わらず感性がいまいち分からないですよね、は。」


そうそう。キミのお姉ちゃんの感性は普通の人とは何処かずれているんだよな...ん?お姉ちゃん?


「あの、すいません。僕の隣にいる紫ショートヘアの方はツカネさんの妹さんですか?」


「ん?そうだよー。彼女はこの魔法神ツカネちゃんの可愛い妹、アカネちゃん。弓神で、弓については右に出る者はいないし、射的のセンスについてもボクとは比べものにならない自慢の妹だよー。」


「よく言いますよ。手合わせでは、お姉ちゃんがほぼ全勝しているじゃないですか。というより、ニコニコした顔で神界の1割を焼け野原にするの本当にやめて欲しいです。どれほど上司に怒られたことやら。」


アカネの正体はツカネさんの妹か。確かによく見れば、ツカネさんを一回り小さくした感はあるし、性格面もどこか似通っている。それにしても、フラグ回収が早すぎるんじゃい。


「そ、そろそろ次の店に向かわないか。武器とか揃えたいし。ポーションについてはしっかりと見て<創造魔法>で創れるようになりたいし。」


「「はーい。」」


服を買った後、僕達はポーション屋により、青色のHP回復10本、緑色のMP回復10本、赤色の攻撃力アップ5本、オレンジ色の防御力アップ5本を購入した。残金はこれで金貨6枚と銀貨5枚。出費の詳細は次のようになった。


宿5泊6日:金貨1枚

服:金貨2枚

ポーション30本:金貨3枚


後は、武器屋で武器を購入するのみだ。

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