第8話 ギルドマスターと面会しました
おはよう、みんな。異世界2日目だよ。昨日は様々な出会いと別れがあったぜ。そう、女神様による強制イベントとファーストキスとの別れという2大イベントがな。
「いっくんの 初めての相手は女性冒険者でも受付嬢でもないッ! このツカネちゃんです。」
隣の方から覗き込んでくる3歳年上(という設定)の女性こそファーストキス相手の魔法神。何故か、朝一にドヤ顔で宣言してきた。
「泥水はどこかな?口をすすいでおかないと。」
「冗談。冗談だから。本気で<アースパウダー>と<ウォータークリエイト>の合わせ技で泥水を創ろうとしないで。」
だったら、始めから意地悪をしないことだな。ほら、下の階から朝ご飯が呼んでいるぞ。
「いっくんって時々意地悪になるよね。ボク一応、年上なんだけど。」
大丈夫だ。あなたへの敬いは強制転生された時にもう捨てているからな。それに、仮にも僕のファーストキス相手なんだろ。そんなことで文句を言うんじゃない。
下の方に降りると、宿泊客達がテーブルで朝食をとっている。今日のメニューは肉を挟んだサンドイッチだ。取りあえず、空いている席に座って待つことにする。今日の活動はギルドマスターとの面会、ランクアップの2つである。ランクアップの目的はに受けられる依頼の範囲を増やすことと金稼ぎ。Fでは『薬草採取』とか『低級の魔物退治』しか行えないからな。
「あ、あの、お待たせしました。タイガーベアのサンドイッチです。美味しいですよ。かっこ可愛い」
この子は女将さんの娘か。目元がそっくりだから、すぐに分かった。まずは一口!?う、美味い。脂がのっていてかみ応えがある。これをステーキにすればと思うと味が想像付かない。タイガーベアか。見つけたら優先的に討伐することにしよう。
「サンドイッチ美味しいよ。あと、果実水追加。ねぇねぇ、いっくん。この世界の料理も美味しいよ。」
おお、女神様の舌を唸らせた。この宿屋、大変名誉なことしているぞ。
「でも、いっくんの<創造魔法>で創った料理の方がヤベーし、昨日のキスはもう極上だけどねー。」
おいコラ。頬を赤らめて、そんなことを言うんじゃない。それと女将さん。そのニヤニヤ顔を向けないで欲しい。
「それより早く食べてギルドに行くぞ。予約時間まで後1時間だからな。」
サンドイッチを食べ、僕達は冒険者ギルドの扉をくぐろうとしたが、
「「「いらっしゃいませ、イチロウ様。」」」
すぐに扉を閉めた。おかしい。場所を間違えたのかな?目の前に受付嬢が出待ちした光景が見えたんですけど。異世界にメイド喫茶ってあった?気を取り直してギルドの中に入っていく。
「イチロウ様。いきなり扉を閉めるのはヒドイですよ。」
「愛想を尽かしてしまったと思ったじゃないですか。」
いやいや。たかだか一介の冒険者を迎えるには大げさだから。普通に接してくれればいいし、むしろ目立ちたくはない。けど、もう手遅れか。
「まずはギルドマスターの所に案内してくれないか?そろそろ約束の時間になりますので。」
「分かりました。では、私が案内を」
「ちょっと。それは私の仕事よ。」
「抜け駆け禁止よ。」
僕達の案内係をかけ、受付嬢の間で熾烈な戦いが勃発しようとしている。だから、時間がヤバいって。
「はい、そこまで。あたしのお客さんを待たせるとは受付嬢としてあるまじき行為じゃないか、お前達?」
奥から1人の声が飛び交った。耳が尖っている所を見るとエルフ族かな?鑑定。
ラゼバラ 150歳 女
レベル:53
種族:エルフ族
二つ名:魔法の女傑
[能力値]
HP:5,300/5,300
MP:5,300/5,300
攻撃力:5,300/5,300
防御力:5,300/5,300
[スキル]
<水属性魔法 LV.5>、<土属性魔法 LV.5>、<風属性魔法 LV.5>、<鑑定>
[好感度]
95/100
おお。高い高い。レベル50台だから、この世界では指折りレベルの猛者だと言えるだろう。ちなみにLVについては次のようになっている。
LV.1~10:見習い(世界人口の5割)
LV.10~20:低級冒険者(世界人口の内の5万人)
LV.20~40:中級冒険者(世界人口の内の10万人)
LV.40~50:上級冒険者(世界人口の内の5000人)
LV.50~70:猛者(世界人口の内の100人)
LV.70~90:勇者、英雄、魔王(世界人口の5人)
LV.90~:神
後、好感度についてはもう突っ込まないことにする。
「おはよう、オールラウンダーの2人。あたしはここのギルドマスターのラゼバラだ。」
「イチロウです。」
「ツカネちゃんでーす。」
「自己紹介はそのくらいにして、早速あたしの部屋に案内するぜ。お前達、通常業務に戻りな。」
「「「は~い。」」」
ギルドマスターの案内に従って、僕達は2階にあるギルドマスタールームへと案内された。
「早速だが、本命の方に入らせて貰おう。ズバリ、君達の属性についてだ。昨日にも説明されたとは思うけど、全属性は異例中の異例。このことは、ギルド本部に報告しなければならないのだ。」
「ちなみに、それは義務の内に入っていますか?」
「残念ながら。特に、オールラウンダーについてはギルド本部から見つけ次第、報告するようにとお達しがあってね。どうか、そのことを了承して貰いたい。」
うーん。正直に言うと、僕はどっちでもいいと考えている。詳しく言えば、ごく普通に冒険者生活を送りたいのが半分、手遅れな気もしているからもう流れに身を任せる方向でいくのが半分を占めているから、僕はもう1人の意見次第で動くつもりでいるのだ。そんな彼女は少し考えるそぶりを見せ、そして次のように発言した。
「いいよー。ボク達がオールラウンダーであることは思う存分に報告しちゃって構わない。けれど、もし報告するのなら、こちらから出す条件を1つ飲んで欲しい。」
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