第13話 激闘

 向かい合う二人の少年。

 なんと熱い展開。

 こんな場面に出くわせるとはラッキーだ。だが、こんな場面であの炎上という未来ある少年の肩が壊れてしまうのはあまりに惜しい。

 絶対絶命のピンチに必要なもの、それはお助けキャラだろう?


「待て」

「「「だ、誰だ!?」」」


 その場にいた全員の視線が俺に注がれる。突然の高校生の登場に皆驚いているようだった。


「その勝負、俺が肩代わりする」

「なっ……こ、高校生がでしゃばるなんて卑怯でやんす!」

「安心しろ。ハンデはくれてやる。俺は一人、対するはお前ら三人だ。俺が勝てば、そこの少年たちにボールを返してやれ」


 俺の提案に眼鏡は迷っていたようだが、リーダー格である黒城が「いいだろう。強者との対決は俺も望むところだ」と言った。

 あいつ、そこまで悪い奴では無いかもしれない。


「あ、あんたは一体……」


 勝負がこれから始まろうというところで、炎上が俺の下へ近づいてくる。


「冴無良平。通りすがりの高校生さ」


 決まった。

 これには炎上君も絶句である。


「なにをごちゃごちゃ話してるでやんす! 休日の昼間から柔道着を着ているへんてこな奴なんて、おいらのライジングゴールデンブラスターファイアーボールで一撃でやんす!!」


 その言葉と共に眼鏡の手からボールが放たれる。

 その球を、俺は正面から受け止めた。


「なっ……!?」

「取っ……た」

「ふっ。雑魚ではなさそうだな」


 俺のキャッチにその場にいる奴らが色々な反応を見せる中、俺はそのボールを高く上に投げる。


「な、何をするつもりでやんす!?」


 眼鏡が驚く中、俺は左手を前にし、腰を少し下げる。そして、軽く脇を締め、右拳を構える。


「ま、まさか……正拳突き!?」

「炎上君? どういうこと?」

「あ、あの人は正拳突きでボールを放つつもりなんだ! 鍛え抜かれた拳から振るわれる一撃がボールに伝わる。そのボールの威力は……振り抜かれた右ストレートと同じ!」


 解説ありがとう炎上君。

 概ねその通りだ。だが、一つ違う。


「それだけじゃない」

「な、なに!?」

「俺はこの拳に回転を加える」

「か、回転……はっ! そうか! 回転を加えた拳をボールにぶつけることで、ボールにもドリルのような回転が加わるんだ! ジャイロ回転と俗に言われるその回転は、銃弾を放つときにも使われるように、貫通力を高める効果がある!」


 その通りだ。

 名付けるなら、ジャイロ・ナックル・ボール。

 そろそろボールも落ちてくる。狙うは、相手のリーダー格!

 食らえ!!


「これが俺の……一撃だああああ!!」


 振るわれる拳。

 目を見開く少年たち。

 静まる空間。

 吹き抜ける風。

 そして…………高く跳ねるボール。


「か、空振り……」


 誰かが呟いた。

 ポーンと跳ねたボールは石ころにあたり、バウンドを変えそのまま黒城の手に納まる。


「……なにか言い残すことはあるか?」


 黒城が俺に問いかける。

 ふっ。ここで言う言葉なんて一つしかないだろうに。


「いい勝負だった」


 俺の一言に黒城少年は信じられないといった表情を浮かべていた。


「あ、ああ」


 黒城の剛腕から放たれたボールは、唸りを上げ、そして俺の胸に直撃した。


 すまない……炎上少年、桃城少女……。


「こ、こうこうせええええええ!!」


 炎上少年の悲痛な叫びが、青空に響き渡った。


 ☆激闘、その終わりは呆気なく――。


***<本編には関係ないゾーン>***


 書いてて一番楽しかったです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る