caramel marron Cream

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 桜の花が散り若葉が芽生えていよいよ、ソノクニ軍の侵攻も都市部へ迫るかというころ、


 「それでですね、博士! ドーナツの内径はまたべつの半円であって、」

 「ほうほう、」

 「こんな穴のないドーナツなんてぼくはじめてですよ! で、その内円の回転が、」

 「ほうほう、」


 青年もすっかり植物生態学研究室に…いや、博士が青年のペースに…馴染みつつあった。


 「ぼくきのうはじめて知って! これがドーナツだなんて! 穴がないのに! で、ドーナツ屋さんの奥さまがきのう、」

 「ほうほう、」

 「それであのサクラなんですけどつぼみが開いてきましたよ!」

 「ほう、」

 「けどあれはサクラじゃありませんね、正葉曲線じゃなくて壺型の回転体で、博士、培養器を間違えていませんか?」

 「サクラとついているがツツジ科だ。先週、教えなかったかな? だから花冠は、」

 「あ! 博士! このドーナツ、クリームが入ってますよ!」

 「……キミ、しゃべっているとお茶が冷める」


 博士はすっかり青年のマシンガントークに慣れて、青年もどうやら植物を愛でるという気持ちに目覚めはじめたようだった。

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