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コノクニとおとなりソノクニ…仲がよかったはずの隣国の、関係が悪化したのはもう一世紀前だ。
その燻りが、ときたまこうして大きな紛争になる。
『だれが』とか『なぜか』とかもうだれもその正確なところを知るものは生きてもいないというのに、お互い若者を戦線に送り込み、お互い市民を巻き込み、お互い司祭は自国の祝福を説いていた。
ことにさくねんの冬にはじまった紛争はいつになく規模が大きく、長引いていた。
*
なんで、こんなことに……
なんで
博士にはそれがまったく、わからなかった。
ニンゲンなんて…大きらいだ…
いつだって、理解が及ばない。
「わたしが信頼できるのは、雪解けに毎年違わず花を咲かせる、このツガザクラだけだ」
釣鐘型の小さな花を前に、博士はきょうも、ひとり呟くのだった。
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