第十二話 敵を知ること

「僕もまだ手探りの状態さ。どうやら相手のことをどれだけ知っているかで、レンタルの精度が左右されるらしい」

 マルコ相手の時は、「こんなことを言う、次はこうする」という閃きが少しぼやけて感じられた。一方リーナが相手ならば、必ずこうするという確信があった。三年間生活を共にしてきた積み重ねがスキルの精度を高めたようだ。

「相手の情報を集めることが、このスキルを運用するポイントみたいだ」

 マルコとの話し合いでも、後半になるにつれて先読みの精度が上がっていった。

「だからあれほど落ち着いていたんですね」

「ああ。どういう流れになるか予想が付いたからね」

 リーナは考え込んだ。

「いろいろ使い道がありそうですね……。対人交渉、犯罪捜査、人探し、勝負事……」

 リーナははっと顔を上げた。

「博打はやらないからね!」

「またレンタルしましたね……」

「スキルを使わなくても分かるよ。リーナはのめり込んで身を亡ぼすタイプだから」

 ジョバンニはやや引きつった笑みを浮かべた。

「そんなこと――あるかもしれません」

 当たり付きの飴に小遣いを全部つぎ込んだことのあるリーナは、下を向いた。

「スキルの使い道はこれからよく考えよう。何事も練習が大切だからね」

「はい! リーナがお手伝いいたします!」

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