第八話 見せる剣と見せぬ剣

 武器を持っていると知れれば、自ずから襲ってくる危険も減る。見せるための道中差であった。

「拝見するよ」

 ジョバンニは目の高さで短剣を鞘から静かに抜いた。

 無骨な拵え、数打ちの安物ではあったが、癖のない肉厚の出来であった。

「頼もしい造りだね。これなら打ち合っても滅多なことでは折れないだろう」

 剣を相手に打ち合うことを当然とした言葉であった。並の相手なら後れを取らぬ自信が、ジョバンニにはあった。

「何よりでございます。それとこちらをお供の方に」

 リーナにと差し出したのは、細身のダガーであった。

「こちらは隠してお持ちください」

 鞘に収まったダガーはベルトで太股に留められるようになっていた。

 これは万一の時の備えである。心得も力もないリーナは武器を持っていないように見せた方が良い。そうして相手を油断させようという狙いであった。

「はい。すみません」

 ダガ―を受け取ると、リーナは人目をはばからずスカートの裾を大きくまくって、太股にベルトを留めた。

 顔を赤くしてどぎまぎしたのは、小僧一人であった。リーナに恥じらいがないのではない。使用人の分際で小部屋を使わせてもらうなどおこがましく、主人や御用商人という格上の存在に隠すものなどないからであった。

 小僧は物の数に入らない。役得だった。

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