第六話 平民ジョバンニ

 ジョバンニの服装は普段着であったが、貴族が屋敷内で過ごすための衣装であった。どうみても平民には見えない。

「なるほど。その外見では盗賊の良いカモですな」

「そうだろう? 狙われると思ってさ。古着で良いから平民の身なりに変えたいんだ」

「かしこまりました。お任せください」

 頭を下げると、マルコは一旦店の奥に引っ込んだ。

 客用の椅子に腰かけ、ジョバンニは貴族の鷹揚さでマルコが戻るのを待つ。

「リーナ、これを預かってくれないか」

 ジョバンニは荷物の中から巾着を取り出した。

「それはお金でございましょう? 大切な路銀をリーナなどがお預かりしてよいのですか?」

「もちろんさ。その方が安心だし、買い物はリーナの方が上手だろう?」

 貴族は自分で金など持ち歩かない。平民になったといっても、ジョバンニにとってはそれが普通のことであった。

「かしこまりました。しっかりお預かりいたします」

 リーナもジョバンニの思いを推し量ったのだろう。それ以上押し問答することなく、素直に巾着を預かった。

 実はジョバンニはもう一つ巾着に路銀を入れていた。そちらの中身は少なめにしてある。狙われるとしたら先頭を歩く自分の方であろうという推測から、手持ちを少なくしたかったのだ。

 リーナはリーナで、大切な路銀を事も無げに任せてくれるジョバンニの信頼に心打たれていた。

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