第二話 お前を追放する
「出ていけ――」
報告を聞いたジョバンニの父マッシモは、かすれた声でジョバンニに言い渡した。
「わがランスフォード家にお前の居場所はない。貴族の務めを果たせぬ者は名を捨て、家を出なさい」
父とて好んでジョバンニを切り捨てる訳ではない。それが貴族としての掟であった。
「分かりました」
貴族として育てられたジョバンニは、父の宣告を黙って聞いた。彼とてランスフォード家の一員として貴族の何たるかは知っている。自分には貴族として生きる資格がないのだ。
「父上、今日までお世話になりました。不甲斐ない息子で申し訳ありません」
「お前のせいではない。いや、誰のせいでもない。不幸な巡り合わせと諦めよ」
父は執事に命じて、ジョバンニに手切れ金を渡した。平民としての生活を立ち上げられるだけの金額があった。
「お前は武術も学問も、人並み以上にはこなせる。職を探して生きてゆけ」
「はい。これからは一人のジョバンニとして生きてまいります」
別れを済ませると、ジョバンニは父の書斎を出た。廊下には母が佇んでいた。
「ジョバンニ――」
母はジョバンニの肩を抱きしめた。何も言わず、ただ涙を流して抱きしめた。
「母上、至らぬ息子でごめんなさい。今までありがとうございました」
「ジョバンニ。ああ、なぜこんなことに――」
泣き崩れる母を宥めて、ジョバンニは自分の部屋に戻り荷物をまとめて屋敷を出た。
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