第11話 雲行き

「そう言えば、使用人として働くという話であったが、家はあるのか?」

あ、、、

あるわけがない。


「ないです」


「うむ。なら住み込みで働いてもらおう。仕事は我が娘から貰ってくれ。給金は40万アスターでいいか?」

住み込みでいいの!?

契約書にはなかったがら食事もついて家もついて、、、賃金は載ってたけど感覚がわからない。


「すみません。金銭の感覚があまりわからなくて、、、」

まぁ生活ができるなら少なくてもなんとかなるだろう。


「一般的で平民の給料が20万アスターはいかないだろう。15万か、、

「え!?」

なんだ?足りないか?」

足りないわけがない。


「そんなに貰っていいのですか?」

平民の倍以上ということになる。

こんなに貰っていいのか?ひょっとしたらすごい重労働なのかもしれない。蟹漁船かも、、、


「なんだそんなことか。命の恩人に対しては少ないくらいだ。これでも娘のお小づ、、、経費に比べたら少ない」


お小遣いを経費に言い換えたのが気になるが、、、、いったいクロエは何をしているのだろう?


「僕が重荷にならなければいいのですが、、、娘さんは一体何を?」

多分この質問が俺の仕事内容とつながるだろう。


「はぁー。クロエ」

なんかご主人、、、諦めたようなため息だった。


「鍛冶よ」


「え?、ああ、家事か」


「ええ」


「何作るのですか?」


「剣から鍋まで全部よ」

けん?

俺はそんな料理知らないな。


「けんってなんですか?」


「剣よ。騎士が持ってる」


けん、、、剣?

「ご主人」


「剣だ。使用人がやる家事ではなく。鍛冶だ。腕はそれなりだと思っている」


、、、俺何させられるんだろ?


「命の恩人に頼むのは本当に申し訳ないけど、明日から早速手伝ってもらうわ」


それはいいんだが、、働きたいと言ったのは俺だし。


「部屋の話だが、、トマス」


「使用人の部屋はまだまだ「私の隣の部屋はダメかしら」」

え、、、壁一枚あるとはいえ男が隣の部屋で寝ていることは気にならないのだろうか?


「お嬢様が良ければ、、、」

トマスがお嬢様ではなくご主人に目配せをする。


「ああ、クロエに任せる」


えぇ、俺の意思はそこには反映されないんだな。


クロエが頷く。


「使用人の部屋にしては十分すぎるぐらい広い部屋です。いいですね?」

もう有無を言わさない感じでトマスが聞いてきた。


「ええ」


「早速メイドに準備するよう伝えてまいります」

そこまでやってくれるの!?


「部屋がどうなってるかはわかりませんが、僕も使用人なのでそれぐらい自分でしますよ?」

部屋を出たトマスを追いかけて、食堂の扉の前で呼び止めた。


「あなたは使用人は使用人でもお嬢様の側仕え。側仕えとは言いませんでしたが、我々からすればエリートなのですよ」

え、、、そうなの!?

貴族常識、ましてや使用人常識なんてわからないから、、、

ひょっとして嫉妬されたり。


「ごめんなさい、ポッと出の僕なんかが、、、」


「使用人一同、相応しい人が現れて安心しております。ここだけの話ですが、我々には手に負えませんでしたので」

え、、、何その、、、雲行きが怪しい感じ。

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