その後のトーク

 あれから……それこそ、二人と交わってからどれだけの時間をボーっとして過ごしていただろうか。

 正直、満足に動けるなら俺は自分自身を殴りたい。

 だって俺は絶対に百合の中に挟まらないと、そう百合を愛する者として心に決意を持っていたはずなんだ。

 それなのに状況に流されて俺は二人と……その、今でも信じられないがそういうことをしてしまった。


(……二人が俺のことを好き……そんなことが……そんなことが……っ)


 しっかりと二人に伝えられたことなのに、やっぱり俺は夢じゃないのかと思ってしまっている。

 だってそうだろ? 仮に誰かに好かれるとして、それは二人ではなく一人が普通のはずで……更に言えば、同時に二人の女性と体の関係を持つなんてそれこそ漫画やアニメの世界でしか見たことがないのだから。


「咲夜君♪」

「何を考えてるの~?」

「っ……」


 俺が考え事をしている間、ずっと二人は両サイドから俺を包み込んでいる。

 肩に触れる彼女たちの豊満な胸の柔らかさだけでなく、素足がそのまま俺を逃がさないと言わんばかりに絡まっていて……俺は本当にこの場から逃げられない。


「何を考えてるか……分からないわけじゃないだろ?」


 そう言って俺はハッとした。

 現状に対する理解がまだ出来なくて少し口調が強くなってしまったのである。

 幸いなのは二人とも今の俺の言葉に嫌そうであったり、悲しそうな表情をすることはなく、全部分かっていると言わんばかりに笑顔で頷いてくれた。


「そうね。確かにいきなりだったのは否めないわ。けど恋する乙女は止まれない、私たちは二人揃ってもうこの気持ちを抑えられなかったの」

「そうなんだよね。だって、こんなにも気になって、こんなにも好きになって……こんなにも愛したくて、愛されたくてたまらなくなったんだ」

「……………」


 両方の耳を犯すように二人の言葉が脳を揺さぶる。

 彼女たちの言葉と、そしてその勢いに嘘などは感じられず、本当に彼女たちはそう思っているんだということが伝わってくる……伝わらない方が良いのに、それなのに分からせようと俺に言葉が襲い掛かる。


「俺は……なあ二人とも、すっごく情けないこと言っても良い?」

「良いわよ」

「なんでも言って?」


 あかん……こんなのあかんって。

 ピタッと引っ付き、俺の言葉をジッと待つ彼女たちにこう口にした。


「俺さ……自分の中の信念として、本当に百合の中に収まるつもりがないのは確かだったんだ。そもそもの前提として、自分がこんなことになるなんて絶対に思うわけがないだろ? 誰かに好意を持ってもらったとしても、それが二人からなんて天地がひっくり返るような出来事だ」


 本当にその通りだと思う。

 正直なことを言えば、あの状況からどうにかすれば逃げ出せたはず……それこそ、無理やりに引き摺ってでも拒否する姿を見せることが出来たはずだ。

 でも俺はそれが出来なかった。


「俺は……意志が弱いよ。結局ここに来たのも二人の姿が見たくて、それであんな状況になって逃げられなくて……俺はただ、二人から与えられるものに浸かっていた」


 俺は本当にダメな奴だと、小さくため息を吐いた。

 まあでも一つだけ言い訳をさせてもらえるのなら、誰だってこうなるだろって思ってほしい所である。

 一旦の弱音としてそう吐き出させてもらった。

 すると二人はまず言葉ではなく、俺の頬を二人同時にキスしてきた。


「私たちは二人揃って咲夜君を挟んじゃおうかってなったけれど、確かにあなたの立場からすればそうなるわよね」

「そこはちょっと思ったかも。あたしたちは咲夜君のことを大好きで仕方なくなったけれど、確かに咲夜君からしたら困るよね」


 そう……非常に困った。

 でも俺にも悪いところがあって、こうして二人の美少女を両脇に置いていることに罪悪感は一切なくて、逆に少しばかりの高揚感があった。

 悩むし迷うけれど、それでも今のシチュエーションにとてつもなく興奮している自分が居るのも確かで……それだけは隠せなかった。


「……俺はただ、二人が愛し合う瞬間さえ見れれば良かったのに。それでも喜んでいる自分が居るよ。俺なんかがこんな美人二人とエッチしたんだって」

「美人ね……やっぱりあなたから言われると嬉しいわ」

「してる最中なんだかんだ夢中になってたもんね? 咲夜君可愛かった♪」

「っ……」


 男に可愛いというのはナンセンスだぜ舞……とは言えねえなぁ。

 流されるままにその時間を過ごしたのは確かだけど、俺は初めて深く触れた二人の体に夢中になっていたのも本当だ。

 百合を愛しているとは言っても女性に……女体に興味がないわけではなかった。


「ちなみになんだけどさ」

「うん?」

「良かったかな? あたしたち、男性相手は初めてだったから」

「……最高でした」


 そう言うと二人は嬉しそうにもっと体をくっ付けてきた。

 もう終わったはずなのに俺の一部分は元気を主張してしまい、それは二人に気付かれてしまって苦笑される。

 けれど流石に落ち着く時間は必要だということで、しばらくこのままで居ようかと言われその提案に頷いた。


「……あの」

「なあに?」

「どうしたの~?」


 何もしないはず……なのに二人の手が扱くように触れていて……それから俺たちはリビングに移動した。


「別に深く考えなくて良いのよ。ただ、こういう気持ちを私たちが抱いているということを知ってほしかった」

「もちろん逃がすつもりはないんだけどね? だって咲夜君、これであたしたちのことを凄く意識したでしょ?」

「っ!?」


 当たり前だろうそんなものは!

 これで意識しなかったら俺はもう男失格だし、そもそも二人とそういうことをするわけがないだろうさ。


「これからまだまだ、時間はたっぷりあるわ。その中で私たちがどんなに強く想いを抱いているのか、それをもっともっと教えてあげる」

「ふふっ、これでもしも咲夜君があたしたちのことを苦手に思ったり、少しでも嫌だなって思ったら流石に何もしないつもりだけど……そうじゃないのなら、あたしたちとしては攻めるだけだから」

「……俺、大変な二人に出会った感じ?」


 そう聞くと二人は自信を持った様子で頷いた。


「そもそも私たちにとっては初めての理解者であり、心からもっと仲良くなりたいと思って、それで心が求める相手に出会ったんだもの。逃がしたくないのは当然だわ」

「そうそう! でもね? そこにはちゃんと咲夜君の意志もあってほしいから。だからあたしたちはこれから凄く攻めまくるから。覚悟してね?」


 俺はただ……本当に百合を眺めたいがために彼女たちと仲良くなったようなものなのだ。

 こんなことになるなんて全く想像もしていなかったけれど……大変なことになったなと思いつつも、やっぱりドキドキというか彼女たちに夢中になっている自分が居ることにも気付いていて、どうしようもないほどに俺は男なんだなと自覚した。

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