フライ for フリーダム
針音水 るい
テイクオフ
空飛ぶ鳥が自由だって、そんなこと一体だれが決めたのだろうか。
確かに彼らは、人間が簡単には行くことができない上空の世界を好き放題に飛び回れる。
自分の羽で、自分の意思で、大空を舞っている。
そんな様子を羽のない人間は下から見上げることしかできない。
陸の人間はいつの時代だってはるか彼方の空へ上ることに憧れているのだ。
だが、それでもこの物語の主人公である
別に空を飛べるから自由なんじゃない。
翼があるから自由なんじゃない。
自由というのは、たかが背中に羽が生えたくらいで手に入れられるものではないんだ……と。
現に彼は今、高度約一万メートル上空を手動式戦闘機に乗って飛行している。
操縦かんを握る手をほんの少し行きたい方角に動かすだけで、まるで体の一部であるかのように、なんの抵抗もなくその滑らかな機体を傾けてくれる。
これが自由に空を飛んでいると言わないのであれば、一体なんと言うのだろうか。
だが、それでも彼は知っている。
自分が今自由ではないことを。
この翼が本物ではないことを。
そして陸から見上げていた時ほど、空の上が美しくはないことを。
どうしてこうなってしまったんだろう。
灰原は深々とため息をつきながら思う。
すべての原因はあいつからの電話のせいだ、とも。
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