裏切り者の大将?
虎臥結奈
第1話 小国の娘
「お疲れー」
「お疲れ様です」
そう言うと都会のワンルームぐらいの部屋に置いてあるこたつに座りながら作業している後輩がいた。
「先輩今日は遅かったですね」
「まぁ、教授と一緒に話をしていたからね」
「そうですか、その教授とどのような話をしていたのですか?」
「うーん、
そんな感じでいつも通りの雑談をしながら私は、小説の執筆をしながら後輩との雑談をしていると六限の
「ところで、六限大丈夫なの?」
「やば、先輩すみません後お願いします」
そう私が声をかけると後輩は、慌てた様子で荷物をまとめて部室を飛び出て行ったのだ。その様子を見ながら過去の自分を見ているようでどこか懐かしい思いで見ていた。
そんな事をしながら執筆を続けていると辺りは、完全に日が落ちていることに気が付いた。
「もう、こんな時間か。そろそろ
そう言って私は、パソコンを
「あーさむ、十一月の末だからと言っても寒すぎだろう」
そう部室棟から出ると外が寒すぎたので手に持っていた少し高い紺のコートを着て私は、宴席の会場に向けて大学を後にした。
「やっぱり人が多いなぁ、やっぱり週末だと飲みに行きたくなるのかな?」
そんな事をぼっそと呟きながら駅に繋がる地下道の入り口から出た瞬間だった。奥の方から叫び声と言うよりも悲鳴が聞こえた。
「何かあったのかな?」
そんな事を思いながらも気にせずに宴席の会場のある小道に入ろうとしたその時だった……
グッサ
私は、顔も知らない男から
「まぁ、どうせおもちゃだろう……」
そう思いながら歩いていると徐々に身体に力が入らなくなって行ったのだ。その時に自分がおもちゃの刃物ではなく本物の刃物で刺されている事に気が付いた。
まさか、私が通り魔に遭うなんて予想外である。ましてや私が通うこの街で起こるなんて予想もしなかったのだ。確かに最近物騒な事件が多発して治安が悪化しているのは分かるが、それにしてもこの学都と言われるこの街で起こるなんて全くの予想外であり私がその被害に遭うなんてどんな運命だよと思った。
まぁ予想できるなら対策して来いと思うだろうが通り魔なんて予想不可能である。ましてや自分が被害に遭うなんてどう予想しろうと言うのだと言うツッコミを頭の中に浮かんでいる間にも私の身体から血は流れ続けていた。
ただこんなだけの血を流しているから助かる見込みはほぼ無いだろうと思い大人しく救助が来るのを待つことにした。ただ、この悲劇の前に遭った悲鳴がこの通り魔の被害者なら救急隊が来ても助からないだろうと思った。
「おい、
「しっかりしろ」
消えそうな
「先輩、すみませんせっかくの宴席なのに……」
「とりあえずしゃべるな」
そう先輩が言うが、流石に喋る気力と言うよりもこの灯の方が消えるのが早いだろうと思った。
「書きかけの小説を完結させたかったな……」
その言葉を最後に私は、深い闇の中に埋もれた。まさか、
「・・・・・・・ち、
そう誰かが心配そうに声をかけている事を気づき私は、目を開けるとそこには一人の少女が心配そうに私の顔を見ていた。まるで、前世の大学入試の時に起こした自殺未遂で、病院に送られれて目を覚ました時の母親の表情を見ていたようだ。そんな事を思いながらも明らかに私は、あの通り魔に刺されて死んだはずなのだ。しかしまだ生きているのだが、なぞの違和感が私の中で渦巻いていたがすぐに消し去る事になるのだ。
「よかった、竹千代様がご無事で」
「ごめんなさいね、心配かけて」
「もし、何かあれば
「あのさ、あなたの名前聞いてもいいかしら?」
「別にいいですけど、どうされたのですか突然?」
「いや、少し気になって」
「まぁ、いいですけど・・・・・・・」
そう彼女は、若干の疑問を抱えながら私に名前を教えてくれるついでに今の状況を少し話してくれた。彼女の名前は、
まさか、家康に生まれ変わっている・・・・・・・・
そう思うと今の状況には納得がいくのである。なぜなら前世の私は、徳川家康と明智光秀が大好きで二人の部将に関する事を調べるぐらい好きであった。そのことがまだ記憶の奥の方に残っていたのだ。
でも少し違和感があるとするならなぜ家康なのに、女子になっているのかということである。家康と言ったら前世ならイケメンに描かれる偉人なのにどうして女子になっているのだと頭に中でツッコミを入れそうになった。しかし、死ぬ前の前日に見たアニメで家康をモデルにした女子とかうちが持っているゲームにも家康を美少女にしていた事を思い出すとまさかとは思った。そんな事を考えていると雪音が声をかけてきた。
「大丈夫ですか・・・・・」
「え、大丈夫よ」
「大丈夫なら、
「え、分かったわ」
そう言って雪音は、去っていた。その後すぐに朝比奈率いる部隊は、今川軍の本部である駿府館に向けて再び進軍を進めた。
掛川城から出て数日が経過して駿府城に到着後すぐに私と雪音は、今川家当主である
「
「申し訳ございません朝比奈様、足を引っ張ってしまい」
「別に気にする必要は無い、
「わかりました」
そう言って私は、朝比奈とともに四十畳ぐらいの広さを持つ広間に入った。
「竹千代、よう来たな」
「は、ありがたき言葉」
「表をあげよ、竹千代」
そう言って私は、恐る恐る頭を上げた。一段上に座るこの今川家の当主ともう一人の少女が座っていた。
「この子が気になるのか、竹千代よ」
「いえ、
そう慌てて私は、頭を下げると太守様は、笑いながら私に話しかけて来た。
「別に気にする事は無い、わしの子じゃよ」
そう言って太守様が、その子を見ると彼女は自己紹介をし始めた。
「わ、私は父今川義元の娘で今川
「すまぬな、少し恥ずかがりなんじゃ」
「左様ですか」
「竹千代よ、そちは何歳じゃ?」
そう太守様は、突然私の年齢を聞いて来た。
「七歳ですが・・・・・・・・」
そう答えると太守様は、しばらく考えた込んだ。
「龍千代と一緒に雪斎に学んでみよ」
「あ、はい」
「しっかりと学ぶのじゃ」
そう言い残して龍千代と一緒に去って行った。まさか今川軍の参謀である
そうして私と龍千代様と一緒に雪斎様の元で勉強と武術を教え込まれた。そんな日々が数年が経って私と龍千代は、元服と言う前世では、成人式と言われる儀式で、名前を
「葵彩、大変よ」
そう言って一人の少女が私が人質生活を送る
「どうされたのですか、彩華様」
そこには、最初に会った頃の恥ずかしがりやの龍千代様とは違って明るい女の子と言う雰囲気であった。しかし、今は何か大切なものを失ったような表情だった。そんな表情は、私がこの駿府城にやって来て初めて見た表情で正直言って驚いてしまった。
「雪斎が死去した」
そう言って龍千代は、膝から崩れ落ちてしまった。正直に言ってまさかここでと言うところであったのだ。なぜなら、二年後に太守様と私は、上洛を行うための進軍の準備をしていたのだ。その最中での雪斎の死は、今川軍にとって大きな打撃になっていしまった。
その後開かれた会議で上洛は、三年後で指揮は太守である今川義元様自ら指揮をすると言う事に変更された。その会議にあと私は、留守役の彩華から呼び出されたので彩華の自室に向かったのであった。
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