第2話

神に願いが届いて処刑人でもきたか。

赤ん坊の姿のミナトはフッ…っと達観した表情を浮かべているとインターホンを鳴らした人物が姿を現した。



「よーっす、ウチの電話に出ないってことは寝てるのかぁ?

寝顔でも拝んでやるかあ。」



ガサガサと買い物袋を鳴らしながら、友人のオオダが姿を現した。

空いている右手でスマホを握りカメラモードにしてロフトベットに視線を向けている。


そういえば、事前にここで会う約束をしていた。

助かったぁ…。

後は私のスマホが私の手に渡るだけ、さぁツッコミ所満載の私を見つけるといい…さぁ!!



クワッとオオダに視線を移すとオオダはミナトの存在に気が付いてゆっくりとしゃがんでミナトを見る。



「おん、この赤子は?

流石のミナトも赤子とスマホを放っていかないよね。


…トイレ?」



よいしょとテーブルの前に座ると、ジーっとオオダは赤ん坊の姿になったミナトを見る。

赤子になったとはいえ面影はある、付き合いの長いオオダならきっと気が付くはず…!!



「遅めの集合はこの赤子がいるからか。

どことなくミナトに似ているねぇ。」



ジリジリとミナトに近づくと恐る恐るミナトの頬っぺたを突っつく。

赤ん坊を対面したら思わずやってみたい事の1つだ。


気持ちはわかる、私もやりたいもの。


頬っぺたの触り心地に満足したら次は手を握る。



「人懐っこいねぇ。

穏やかな子でお姉さんは嬉しいよ。」



オオダはミナトが泣かない赤ん坊だとわかると抱きかかえて膝の上に座らせる。


彼女も赤ん坊が好きな大人の一人。

警戒心0でミナトは何処にいるんだろうねーとか天気いいねとか他愛のない話をしながら時折ミナトを抱きしめながらそう言っている。


まぁ、私は今抱きかかえている赤子なんだけどね。

…しかし困った、どうやって私のスマホを回収しよう。


「本当は布団の中にいたりしない?」


そういうと、赤子になったミナトを抱いたまま立ち上がるとロフトベットの上にミナトを乗せてオオダは背伸びして布団を触り始めた。


ミナトは寝相が悪い為ロフトベットの柵は高くしっかりしているから乗せても問題ないと思ったのだろう。



いや、どう考えてもどんなに小柄でも成人した人間が布団に隠れるのは無理が合うだろうが…そんなのはどうでもいい。

今、恋焦がれたスマホが自分の目の前にある。


ミナトは逸る思いを抑えスマホを落とさないように丁寧に自身のスマホを回収。

顔認証も指紋認証もこの姿では無理だがパスワードはわかる。


ポチポチとスマホの画面を開いてメッセージをオオダのスマホに送る。



【オオダドン、ヘルプ。 今の私、赤子。】



通知に気付いたオオダは自分のスマホを見た後に驚いた顔でミナトを二度見する。

驚くのは当たり前だよね。



【疑ってるな? こんな赤子がスマホでメッセージ打てないやろ。】



メッセージを見た後にオオダは大きくため息を出して、ロフトベットの柵に寄りかかる。

そして心底困った様子でミナトの顔を見た。



「遊園地で変な組織にやばい薬でも飲まされた?」


【見た目は子供で止まってたらどれほどよかったか。我赤子ぞ。】

【同じなのは気が付いたらこの姿ってことくらい。】



意思疎通は問題ないしメッセージの内容からして間違いなくミナト本人だろう。

とりあえず生き延びることができそうだ。



「まぁ、とりあえず…これは…病院なのかな?」



オオダがそう言いながら、ミナトを抱きかかえるを玄関から大きな音が響いた。

大きな音が苦手なオオダはビクッと体を震わせてうっかりミナトを手放してしまう。


頂点に持ち上げた瞬間だから自室のほぼ天井と同じくらいの高さだ。



スローモーションの世界の中でミナトは冷静にこう思った。



あ…死んだ。






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