第18話「ワタシトチガウアナタ」
寄生虫展覧会を見終わった二人は少し遅めの昼食をとっていた。展覧会の外ではキッチンカーやイベントの出店が出ており、ゲテモノがあるのではと恐れていた善は意外と普通な内容に拍子抜けしたところ。
「唐揚げ、焼きそば、エスニック料理。普通だな」
「そう…ね」
あからさまにがっかりなのである。
「変なところに期待しすぎだよ。」
「そうかもね。あら、このドライカレー美味しいわよ」
そう差し出されたスプーンは葵さんが使っていた物。それは、そういうことなのか!?
「おれに…どうしろというのだ…………」
「ほら、落ちちゃう」
葵の白い手がスッと伸びてくる。動悸、息切れ、眩暈、手の震え。心を燃やすんだ俺!
そっと葵の差し伸べた手に右手を添えて、善はドライカレーを頬張った。
うん、緊張で味がしねぇ。
「美味しい…んだと思う」
葵は「そ」と小さく返事をし、自分でやっておきながら耳まで赤くなり俯きながらカレーを頬張った。
そんな様子を見て呆れている少女が離れた場所にいる。
「かっー…誰かと思ったら佐久間先輩か。ギャップ狙いとは、卑しい女。砂糖吐きそ。見てらんないわ…帰ろう」
二人の写真を遠目で撮った椎奈は、それを翔子に送りそそくさと帰路についた。これが数日後、爆弾になるとも知らずに。
二人は昼食が終わった後にはウインドウショッピングを楽しんだ。そしてすでに夕暮れ。葵の家の前まで送っていた。
「善君、今日はありがとう。とても楽しかったわ」
「俺も楽しかったよ。」
「翔子ちゃんと私、どっちが楽しかった?」
「そういうこと聞く?絶対聞いちゃいけないやつだろ。」
「ふふ」
「ははは」
「ね、明日も遊びに行っていいかしら?」
「ああ。でも課題持ってこいよ。遊びすぎた。」
「気が向いたらね」
善は素直に楽しい一日だったと思う。にこやかに別れ、葵の屋敷の二階から睨む祖母に絶対に目を合わせぬようにした。すると二階から鬼の形相で葵の祖母が怒鳴り声をあげる。
「泊まっていかんかい!くそガキコラ!」
「誰が泊まっていくかボケ!未成年だ!」
「葵のこと好きなんじゃろ!」
「ぐっ、がっ、お前のかーちゃんデベソ!」
そう言って善は逃げ去った。
「わしの母なぞとっくに戦争であの世じゃ!逃げんな!葵、捕まえんかい!!」
「もうやだこの祖母。」
次回、BBA襲来。
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