気まぐれ短編集

星博 渚

探偵のルーティン

探偵の朝は、珈琲から始まる。

豆をミルで砕く作業から自分でやるのだ。

探偵は大分面倒に思っていたが、インスタントの珈琲を飲むよりはマシだった。

豆を砕きながら、探偵はため息をつく。


「俺にも、シャーロック・ホームズのようにワトソンがいればなぁ」


そうしたら毎朝珈琲を入れさせるのに、とボヤいた。

珈琲を入れ終わり、探偵はマグカップを持って新聞を片手に椅子に座った。

国が発行している新聞や、ゴシップ誌まで全てに目を通す。

正しいか正しくないかなどは二の次で、今はこういう噂があるということさえ、とにかく何でも情報を得るのが探偵の仕事には必要だった。

新聞を読み終わり、ゴシップ誌を手に取り目を通す。

ゴシップ誌には、「有名女優、まさかの不倫」「国立大学の闇」「警察、不祥事隠蔽か」など、ジャンルは問わずに真偽の不明な噂話ばかり載っていた。


「よくもまぁ、人間てのはこういうのが好きなもんだな」


ゴシップ誌も読み終えた探偵は、椅子に腰をかけて伸びをした。

いつの間にか飲み終えていた珈琲のマグカップを持ち、シンクで洗う。


これが、探偵の朝のルーティンだった。

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