タイトル

そこにあったのは、肯定的なレビューだった。


自分が頑張ったこと、拙いながらも一生懸命考えて作り上げたもの。

それを見て、肯定してくれたレビューがあった。


私はたしかに、初めての作品だと書いた。

それを見た読者が、気を利かせて褒めてあげようとした可能性もある。


しかし、そんなことは些細なことだ。

作品を見て、読んで、そして感想をくれたのだ。

自分の努力と、生み出したものを肯定してくれたのだ。


「これが……創作……?」


自分がいいと思ったものを表現し、それを肯定してくれた。

そのことに対する喜びを、創作の喜びを彼は感じていた。


そして、落ち着いて前のレビューを見た。

読者の大多数は読んで通り過ぎるものだが、

過去の辛辣なレビューも、その人はしっかり読み、かつ自身の貴重な時間を使って作者にメッセージを届けてくれたのだ。


とはいえ、もう少し書き方はあったとは思う。

言っていることは図星だが、その否定だけの文章のせいで、

一度は筆を折りそうになったのだから。


レビューも、文字を扱った一つの表現だ。


レビューを通じて感じたのは、そこにあった確かな「読者という存在」。

そこで誰かに感動を与えることが出来ることを、今、本当の意味で彼は知ることができた。


「ありがとう。拙い作品でも、君の時間をくれて、ありがとう」


文字にはなくとも、応援の意味を伝えるハートをつける機能がこのサイトにはある。

2つのレビューと、3つのハート。

そこに、確かな読者の存在を、彼は感じ取ったのだ。


「読んでいる人がいる、ならすることは一つだな」


彼は作品の続きを書き、無事に完結させた。


完結した作品を読み返し、自身の反省点を振り返りつつ、自分はどんな形であれ創作活動をしたのだと実感する。

拙い文章であろうと、作り上げたからこそ、読者が生まれ、そしてレビューや応援を通じて感動を与えてもらえたのだ。


彼は自身の作品のタイトルを何度も読み返す。

そうだ、これは自分が自らの手で生み出したもの。

これが自分の作品だと、胸を張るのであった。


その作品にはこう記されている。

「Web小説をただ読みつづけた者の末路」

と。

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