16の私に突きつけられたのは妊娠という現実でした。
赤木咲夜
第1話 最高で幸せな間違い。
高木くんとは付き合って2年ほど経っていた。
中学の卒業式の日、私は高木くんと2人で梅田のグランフロントの長い廊下を手を繋ぎながら2人で歩いていた。
その時は別に付き合っていたわけではない。ただ私にとっては気兼ねなく話せる男の子、高木くんにとっては気を使わない女の子だったというだけ。
だけど、男女ということを意識しないわけではない。むしろお互いに恋人ではないけれど恋人であるように手を繋いだり、気付かないふりして回し飲みで間接キスをするのが好きだった。
ちょっと私が荷物を持とうとしたら、軽いものでも持ってくれる。その時に軽く触れる指先が私に刺激的な信号を送っていた。多分その刺激を感じていたのは私だけではなかったと思う。
だけどそんな関係も中学生という身分が許してくれていたこと。同じ学校、同じクラス、同じ時間が私と髙木くんの間に流れていたからできたことだった。
だけどその時間にはタイムリミットがあった。
そう、タイムリミットは中学校の卒業式。なにもしなければ、これからはなにもない日々になる境目の日。
何故なら、中学校は住所で通う学校が決まるけど、高校は受験で行く学校が決まるから。
私と高木くんはお互いに恋人ではないと言った。だから私は高木くんの行く高校を聞かなかったし、高木くんも行く高校を教えてくれなかった。
中学3年生最後の日、私はその選択をしたことを後悔した。
だからだろう、あの日の最後。日が沈み少し暗くなった大阪駅の時の広場で急にキスをされた時、私はそれを全く拒否できなかった。
高木くんの唇は、キスする前に高木くんが飲んだスタバの甘いミルクの味がした。高木くんは私の唇で何を感じているのだろうと考えると、顔が火照って何も考えられなくなった。
私と高木くんはその日から親しみのある異性から、恋人に変わった。
高木くんは高校に行っても変わらなかった。
ただ優しく、時に学校での愚痴を言うけれど、それでも一緒にいると幸せなような気がした。
学校は一緒じゃなかったけど、バイト先は一緒にした。
私は一度花屋さんに行ってみたいと言ったら、次の日に花屋さんのバイト募集のチラシを持って来た。
一緒に働きたいと言ったら、花屋さんのオーナーはニコニコしながら「幸せな人に花を売ってもらったら、きっと幸せになるわね」と言ってまとめて採用してくれた。
後から知ったけど、意外とぎりぎりだったらしい。
私は駅で待ち合わせして、高木くんと花屋さんに行き、一緒に最寄りの駅まで行って、中学生の頃いつも別れていた路地で別れる。たまに繁忙期で忙しく夜帰りが遅くなった日は、高木くんは家まで送ってくれた。
私は高木くんにとても大切にされている。
それを物凄く感じていた。
手を繋いで、こっそり見えないところでキスをして、一緒にスタバのグランデサイズのフラペチーノを飲む。
だけどその先はなかった。
高木くんはある日曜日、バイクで家まで迎えに来た。お母さんも私もびっくりした。
高木くんは丁寧に私のお母さんにお辞儀をした。
そして私に長袖長ズボンで来るように言った。
私はその日、初めて高木くんの運転するバイクで六甲の山を登った。
多分高木くんと一緒に来なければ、これほど神戸の街が綺麗とは思わなかっただろう。
高木くんはいろんなところに寄ってくれて、中華街やポートタワーにも行った。
こんなにも色んな思い出があるのに、高木くんは私にそれ以上はしてこなかった。
その時には付き合い初めて1年以上経っていた。
私は高木くんとなにもないのが、ただただ不安で仕方がなかった。
高木くんは別にエッチな事に興味がないわけではなかった。
胸が大きい人を見たら目が泳ぐし、私が手を回して抱きつくと、それなりに反応していた。
高木くんはそういう事に興味がないなら私も余り深くは考えなかった。
だけど高木くんは私と同じ高校生。ネットで調べてみたら、男の子はいつでもエッチなことを考えてしまうくらい、性に敏感だと書いてあった。
私は本当に高木くんと付き合っているのだろうか。実はあの日大阪駅の時の広場でキスされたのは夢だったのではないか。
私はちょっとずつそんなことを考えるようになった。
ある日、私はどうしても高木くんを確かめてみたくて、カラオケに誘った。
その日ために私は念入りに準備をした。
あまり見ない少し大胆な下着売り場に行ったし、何度もネットで情報を集めて彼氏がドキドキするものできるだけ私は取り入れた。
私はライトを暗めにしたカラオケで、熱唱して疲れた高木くんの横に座り、甘えたフリして腕をぎゅっと抱えた。そして高木くんの指先が私の下着に触れるように。
高木くんは最初驚いた顔になったが、しばらくすると顔が真っ赤になって黙ってしまった。
私が予約した曲がただただ誰にも歌われずにBGMとして部屋に響いていた。
私はその日、高木くんと一緒に大人の階段を登ると思っていた。だけど高木くんも私も初めてで全く上手くいかず、結局落ち込む高木くんと一緒にお風呂に入っただけで終わった。
私は失敗した高木くん何をいえばいいかわからなかった。何を言っても高木くんを傷付けるような気がした。そしてもうこういう事は出来なくなるかもしれないと思った。ネットにはそういう人もいると書いてあった。
だけど高木くんは違った。
交わらなかったあの日の夜、高木くんは私に初めて誕生日プレゼントを指定した。
高木くんの誕生日の日、私の初めてが欲しいと。
私はカレンダーに丸がついた日、生理にならないことを祈った。私は周期がずれることがよくあるので不安だった。
当日は幸いにもちゃんと完全に収まっていた。
今度は失敗しないように恥ずかしかったけど、ローションも買った。
2回失敗したら、トラウマになる男子もいるとネットに書いてあった。
難波で一緒にパスタを食べて、アイスクリームを食べた。
だけどあまりにも意識してしまって味がしなかった。多分高木くんもそうだったのだろう。
ホテルの目の前を通るたびに緊張した。難波は普通のホテルも愛のあるホテルも多かった。普段は何も思わないけれど、その日に限って気になって仕方がなかった。
高木くんは色々考えてくれていたけれど、結局お互いに我慢できなくてホテルに入った。
高木くんは丁寧に私を揉みほぐしてくれたけど、私には既に必要なかった。
ただ、いざとなると高木くんは付けることが出来ずにその場で暴発してしまった。
高木くんは物凄く落ち込んだ。
私はこのままでは高木くんとずっとできないような気がした。それどころか、さよならの未来さえ見えた。
私は怖くなって用意していたローションで無理矢理高木くんを元気づけ、半分回復したところで高木くんに追い被さるようにして、そのまま受け入れた。
そのまま受け入れてしまったので、高木くんは大慌てだったけれど、だんだんと気持ちよくなっていたのだろう。
私の方も最初はまだ柔らかくて大丈夫だったけど、高木くんが回復したら回復する分だけ痛くなった。
気がついたら破血していた。
受け入れてから動けなかったけど、どこに何があるかわかるくらい、高木くんの存在は大きかった。そして体感で10分くらいじっとしていたら、痛みがだんだんと治まって、試しにちょっとだけ動くと、おへその下が熱くなった。
高木くんは大慌て謝ってきたけど、私が欲しいのはキスだった。だからそのまま上でも下でも繋がった。
私はこの出来事に後悔はしてなかった。むしろ高木くんとゼロ距離だった事を考えると胸がいっぱいになるくらいだ。
ただ間違いだったことがひとつだけあった。それはこの後に自分の体を甘く見て、ちゃんと病院に行かなかったこと。
高木くんは一生懸命に病院に誘ってくれたけど、私は病院からお母さんとかに伝わるのが怖くて行かなかった。その後しばらくして生理があったので、大丈夫だと言ったら高木くんは安心してくれた。
この時私はその日が女の子にとって性的に敏感な日だとはしらなかった。経験豊富なとても仲がいい友達が生理があったなら大丈夫だと言っていたし、私の知識でも間違ってなかったから、また辛い日々がまたやってきたのだと安心できた。
あれから高木くんとはしていない。
だけどお互いに一歩進んだ恋をしていた。
あの日から1ヶ月後、私は朝起きるといつも朝ご飯代わりに飲む牛乳が、とても生臭いような気がした。
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