第41話 決着、別れ
覆いかぶさるドブ色の人形をルークはもがき振り払おうとするがどろりとした人形の体がルークの体に纏わり付き離れない。気持ち悪さを感じつつ振り払えないかと暴れるが余計に体に纏わりつくばかりで効果が見られない。
やがてルークの体をドブ色の液体の様な人形が飲み込んだ。顔も飲み込まれたため呼吸ができない。必死に暴れるが余計に酸素を消耗して息が苦しくなってゆく。
手に持つ赤い刀身の遺物を振るうが一瞬切り裂かれて外が見える様になるが直ぐにそれは閉じてしまう。ズキズキと痛んでいた傷口はよりその痛みを増し、傷がない部分の肌もヒリヒリとしてくる。まるで溶かされている様であった。
このままではまずいと考えたルークは必死に剣を振るうが効果はない。このままこのドブ色の人形に飲み込まれて殺させてしまうのかと考えてしまう。それでも諦めて死を受け入れる事が出来ないルークは何か無いのか必死に考える。
何か良い物は無いかと必死に考えてルークは持ち物を漁る。懐を漁っていると一つの魔道具が手に当たる。それは地下を探索している時に使った火をつける魔道具であった。
瞬間、ルークは思い出す。このドブ色の人形が一度火のついた木材を避けていた事を。ルークは一か八か火をつける魔道具を使用する。水中のような人形の体内で火がつくか心配であったが無事火が灯る。火が灯るとそれを避ける様に空間が出来る。それしてルークを飲み込んでいた人形がルークから離れる。
ルークは咳き込みながら久しぶりの空気を肺にいっぱい吸い込む。体中がベタベタする気がして不快感が凄いが無事に脱出できた事に安堵する。
ドブ色の人形の方を見ると少し離れた場所にゆらゆらと立ち、手を針状にしてルークに向けていた。直ぐにルークはその直線上から飛び避け、ついでに近くにあった木材を手に持つ。火の魔道具を使い木材へ着火して松明の様にする。
ドブ色の人形が手を伸ばしてくるがそれを避け、伸びたところへ火を近づけるとその部分が焦げた様に真っ黒になりパラパラと落ちてゆく。焦げた部分が再び元へ戻ることはなかった。
ドブ色の人形への対抗手段を手に入れることができたルークだったが、火の火力が低すぎて人形を全て燃やすのにどれだけ時間がかかるかわからなかった。
それでもルークは地道に少しずつ人形火で燃やして削っていた。少しづつ燃やして二回りほど小さくなりこのままいけば勝てるとルークは思う。
それが僅かな油断となり、足元から伸びる針に気がつくのが遅れた。少し前に同じ手段を受けていて気をつけているつもりであったが勝利を確信した油断から反応が遅れてしまう。
同じ手に2度かかってしまう自分の愚かさを悔やみながら伸びる針を受ける覚悟をするがその針はルークへと突き刺さる前に赤い30センチほどの円状の板に阻まれる。
「エリザベス。助かったよ」
ルークがそう言うと倒壊した家屋からエリザベスが姿を現した。エリザベスの服は少しボロボロになっており見えている部分は怪我をして赤くなっている。
「ルークとそのドブ人形は相性が悪そうね。まぁ、私とも相性が言い訳では無いけど」
エリザベスも傷だらけではあるが心強く感じる。彼女も別の場所で何かと戦っていたのであろう。
「奴は切っても直ぐにくっついてしまう。燃やしたら焦げて戻ることはない。とりあえず二人で少しづつ炙っていくしかない」
ルークの提案にエリザベスは首を横に振るう。
「ちょうど、倒壊して燃えている家があるのだからもっと良い方法があるわ。とりあえずあのドブ人形を細かく切ってちょうだい」
エリザベスの提案にルークは疑問を覚える。切っても直ぐにくっついてしまう人形に斬撃など意味が無いと思う。それでも、彼女の瞳には無いか方法があると言いたげな強い瞳をしていた。ルークは彼女を信じて人形へと走る。
ドブ色の人形へと近づくルークであるがそれを拒まんと人形は手を針の形に変えて攻撃してくる。真っ直ぐに伸びてくる手を全て避けながらルークは人形へ接近する。直線的な攻撃では当たらないと判断したのか樹形図の様に腕を枝分かれさせて人形はルークに攻撃を仕掛けてきた。
その針を剣を使い叩き切るがどうしても全てを捌き切る事が出来ずに攻撃を受ける事を覚悟するルークであった。しかし、後ろから血の塊が現れてルークへの攻撃を防ぐ。
ルークはエリザベスに感謝しながらドブ色の人形に接近。ついに剣の届く位置へとやってくる。緩慢な動きの人形ではルークの斬撃を避けることは出来ずにルークによって人形は細切れにされる。
細切れにされたドブ色の人形は再び元の形へ戻ろうと合体しようとするがそは血により防がれた。細切れになった破片を違う覆い球状となる。それが次々にでき燃えている家屋の上で中身だけ落として再び細切れの破片を覆う。
火で炙るより早くドブ色の人形は全て燃えている家へと焼べられた。燃えている家からは人形が燃えた匂いなのか異臭が漂っていた。
「勝ったな」
「えぇ、恐らくアレが最後の一匹よ」
エリザベスの最後の一匹と言う言葉を聞いてルークは安堵から地面に座り込む。座り込んだルークにエリザベスは手を差し出す。
「休んでる暇は無いわ。今のうちにお互い元の場所へ帰りましょう」
「それもそうだな。休みたい気持ちもあるしこの村の事も気になるけど危険が去ったなら早く居なくなった方がいいな」
ルークはエリザベスの腕を取り立ち上がる。二人再び名残惜しさを感じながら村から出てそれぞれの領地へと戻って行った。
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