第37話 村での夕食

 ルークとエリザベスがお互いの関係や今後の動きについて相談していると部屋がノックされる。ノックされた扉が開くと村長が現れた。


「夕食の準備が出来ましたのでこちらへ」


 村長に案内されてリビングにやってくるとそこには豪華とは言えないがこの村の規模から言えばそれなりの料理が並んでいた。ルーク達は案内され席へ着くと村長家族と食事が始まる。


 村長の家族は村長と娘一人息子一人の3人家族であった。村長の妻は数年前に病気で亡くなった後そうだ。今は3人仲良く暮らしているそうだ。


「俺はアランって言うんだ。この村に外の人が来るなんて珍しいし何か面白い話はないか?」


 村長の息子はアランと名乗った。見た目は村長と似ておらず茶髪に額には小さな角が生えている。おそらく、村長の妻に似たのであろう。


 そんなアランからの面白い話の要求に困り、エリザベスと顔を見合わせるルーク。


「こら、アラン。お客人が困っておるじゃろ」


 村長がアランに注意するがアランは口を尖らせて文句を言う。


「良いじゃんか。外の世界気になるし、戦争中の人類と魔族が一緒にいるんだ、何か面白い話の一つや二つあるだろ」


「全くお前と来たら、もう24にもなって……」


 村長はため息をつき呆れた瞳でアランを見る。アランはそれを気にする様子もなくルーク達に期待の眼差しをむける。


 ルークとエリザベスは仕方がないと自分達が敵同士なのを隠して地下遺跡の話やこの村の子供を助けた話を始めた。


 ボロが出ない様に話すためルークは殆どの話をエリザベスに任せ補足や相打ち程度に抑えながら話をする。アランはその話を子供の様に目を輝かせながら聞いていた。


 話もひと段落ついた頃、食事が終わる。食事が終わったルークとエリザベスは部屋へ戻っていた。


 食事が終わり数日ぶりのベッドにルークは寝転がり天井を見ていた。エリザベスと特に会話する事もなく部屋は静まり返っていた。


 夜も深くなりそろそろ寝ようかという時、部屋がノックされる。ルークはベッドから起き上がりそれに返事をするとコソコソとした様子のアランが部屋の中へと入ってくる。


「ちょっといいか?」


 部屋の中へと入ったアランはゆっくりと扉を閉めてルーク達に近づく。声のボリュームも抑えておりどこか怪しい様子である。とりあえずルークとエリザベスは彼に近寄る。


 不思議に思うルークであったが要件を聞こうとアランの言葉に耳を傾ける。


「村の数名がお前らが村から出るなら殺そうとしてる」


 アランの言葉を聞いてルークは真剣な表情となる。驚きはあったが事前にある程度予測をしていたためそこまでではなかった。


「理由は簡単だ。この村の事を外に知られたくないからだ。人類にバレても魔族にバレてもろくな事にならないからな。下手をすれば奴隷の様な扱いを受けるか最悪皆殺しにされかねない。この村の一部はそんな扱いを受けて逃げて来た連中もいる」


「で、貴方はそれを私たちに言ってどうするの?」


 アランの話を真剣に聞いていたエリザベスはアランの行動の意図を聞く。アランはニヤリと笑い話を続ける。


「俺は直感でお前らが悪人ではないと思った。だから助けてやろうと思ってな村から出るなら協力するぞ」


「直感ねぇ……」


「俺の直感は当たるんだよ」


 顎に手を当ててエリザベスは考える。しばらくして考えがまとまったのか話し始める。


「わかったわ。けど、私は少しの間ここに滞在しようと思ってるの。脱出は数日後でいい?」


「俺は構わないが脱出は二人同時がいいだろ。ルークはどうだ?」


 二人の視線がルークに集まる。ルークにとってこの村にいるメリットはない。ただ、ハーフの村というのが気にならない訳ではなかった。ルークは数日ぐらいなら滞在しても良いだろうと判断する。


「わかった。俺もそれでかまわない」


「よし。では、3日以内にこの村から脱出出来る様に手筈を整えとく」


 3人はお互いを見合いながら頷く。アランは再びコソコソとした様子で部屋から出て行く。


「なぁ、なんで数日滞在するんだ? 気になるのはわかるがトップが行方不明ってまずいだろ?」


 アランが部屋を出て行った後、ルークはエリザベスへと質問をした。


「ちょっと、気になる事があってね。それに彼にも脱出の準備があるだろうしね」


 詳しく言うつもりはないのかそれだけ言うとエリザベスは自分のベッドへと潜り込む。追求したいルークであったが無理だと感じてルークも部屋の明かりを消してベッドへと入る。


 明日は村の見回りと子供の親の容態を見に行こうと決めたルークは目を瞑る。人類と魔族のハーフは一体どんな生活をしているのだろうかそんな好奇心が湧いてくる。


 

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