第25話 戦争へ
王国へと辿り着くと周りの雰囲気はどこか忙しなかった。魔族の侵攻に対して国が一丸となりそれに対抗をするため忙しく人々が動いている。
王国の騎士学校にたどり着いた一行はすぐに校長に呼び出しをされた。呼び出しを受けて校長室にたどり着きノックをすると直ぐに「入れ」と返事が返ってくる。
中へ入ると校長が席に座り、机の上には大量の紙が置かれ忙しそうに作業をしていた。
「留学が途中でやめになりすまない」
開口一番校長はルーク達に謝る。別に校長が原因で留学が取りやめになった訳では無いのですぐに首を振るい校長の言葉を否定する。
「校長のせいではないので謝らないでください」
「そう言ってくれて助かる。そして本題なのだが騎士達が人手不足で騎士の卵である君たちにも魔族との戦争に協力してほしいと思っている」
あまり時間がないのか校長は直ぐにルーク達を呼んだ本当の話を始める。まだ学生であるルーク達が戦争に参加出来るとは思ってもおらず校長の発言を聞いて生唾を飲む。
「まだ正式な騎士ではないお主達に強制力はない。じゃが人手不足も深刻でこの学校の生徒にも派遣依頼が来ておる。危険度の低い任務じゃがもちろん命の危険があるから断ってもらっても良い」
校長は真剣な瞳でルーク達を見つめる。詳しい任務の内容は了承した者にのみ開示するとの事。
校長の話を聞いてルークは気がつくと腕が震えている。きっとこの震えは恐怖から来るものではなく武者震いの類だろう。思ったより早く魔族と戦えるそんな復讐心に心が黒く燃える。
「私はその任務協力します」
ルークが答えるより先にミカルが了承をする。それに釣られる様にリアも校長に返事をする。
「私も黙って見てるだけなんてできないです。なので参加します!」
落ち着いた雰囲気で答えたミカルに元気よく答えたリア、二人の回答を聞いて嬉しそうに校長は頷く。そして、一同の視線はルークへと集まる。
「参加します」
「留学組は全員参加か。助かるの。では、詳しい話はマルクス先生から聞いてくれ。今ちょうど戦争に参加する生徒達を集めておるからの」
戦争に参加する生徒たちを集めている場所を校長から教えてもらいルーク達はそこへ向かっていく。
そこの場所にたどり着くと100名近い人数の生徒が集まっていた。上級生らしき生徒もいるが下級生の生徒はいなそうだった。
知り合いは居ないかと周りを見渡すとハラルトとペトラの姿があった。懐かしさから話しかけようかと思ったがその前にマルクスの話が始まった。
「まずまだ学生であるにも関わらず戦争に参加しようと決意してくれた君たちに感謝する」
マルクスの話が始まり真剣な表情で一同はマルクスを見つめる。雑談をしたりする者は誰一人としていない。
「今回の任務は後方支援である。魔法科の学生は魔道具の作成の補助。騎士科の学生は兵站業務の補助を行なってもらう」
分かっていたとは言え後方支援である事に少し落胆するルークであったが後方支援も重要な役目であるため決して楽なものではない。
「現状時間も人でも足りない状況だ。直ぐに各自別れて行動してもらう」
マルクスがそう言うと騎士の人達がやってきて生徒の誘導が始まる。
「二人とも死んだら嫌ですからね!」
リアは魔法科であるためここでお別れとなる。戦争に行くのだがリアの表情は明るかった。
「死ぬつもりはない」
ぶっきらぼうにミカルがそう言い返すとリアは苦笑いを浮かべる。
「お互い生きて平和を掴もう!」
ルークの言葉にリアは笑顔で答える。彼女と別れて騎士の誘導に従いルークは任務の場所へと向かった。
後方支援の任務は4人1班となりこなしていた。ルークの班はミカル、ハラルト、ペトラの四人であった。知り合いで固まっていたおかげで気が幾らか楽であった。
後方支援の任務は殆どが雑用で命の危険はなかった。武器防具の修理や手入れをルーク達は主にやっていた。他の班も似たり寄ったりであるらしい。
そんなある日、いつものように武器防具の手入れをしていると騎士の一人がやってくる。
「君がルーク君かね?」
いつもは話しかけられる事もないのだが急に話しかけられて驚きつつも騎士の言葉に頷く。
「急で申し訳ないのだが君の班には輸送部隊の手伝いをしてもらいたい」
今まで武器防具の手入れしかしてこなかったルーク達が急に輸送部隊の手伝いの指示が来てさらに驚く。
「今までの任務より遥かに危険な任務だがやってくれるかね」
ルーク個人としては受けたかったが他の班員の意見も聞かないと返事ができないと考えてハラルト達を見る。ハラルトは親指を立て、他の二人は頷く。
「わかりました。やります」
ルークがそう答えると騎士に案内され輸送用の馬車が並ぶ場所へと案内された。案内された場所では他の輸送部隊の騎士達が自分の装備を確認したり補給物資のリストを確認したりと忙しなく動いている。
案内してくれた騎士はその場から立ち去ると補給部隊の人が一人やってくる。
「君が遺物使いのルーク君だね。私はここで隊長をやっている者だ。君たちは取り敢えずこの馬車の荷物がリストと合っているか照合してくれ」
騎士の挨拶をルーク達が返す前に仕事を割り振られ隊長はその場を後にした。少し面食らってしまったが仕事を渡された以上それをこなさなければならないとリストの照合を始めた。
リストの照合が終わり問題ない事を確認し終えたルーク達は先ほどの隊長に問題がなかった事を伝える。
「ありがとう。後1時間後に出発する。君たちも補給物資を護衛できるように装備を直ぐに整えてくれ」
隊長はそう言うとまた忙しそうにどこかへ行ってしまった。取り残されたルーク達は取り敢えず急ぎ準備を整えるのであった。
「大丈夫かな私たち」
準備もほぼ終わり最終チェックを行なっていると不安そうなペトラがそう言った。ペトラの表情は暗く手は止まっている。
「不安な気持ちもわかるけどただ物資を送るだけだ戦闘しに行く訳ではないからそう問題は起こらないだろ」
ハラルトも手を止めてペトラに笑顔を向ける。覚悟をしている筈だが不安な気持ちは湧いてくる。
「そうよね。ぐずぐず考えても仕方がないものね!」
「二人とも口ではなく手を動かせ。時間はあまりないぞ」
ペトラが前向きになったタイミングでミカルは二人に注意を促す。その言葉を聞いて二人は再び準備を始めた。
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