第26話 憎しみ、再会

 準備も終わりルーク達を含めた輸送部隊は前線へ物資を運びに向かう。十分に周りを注意しながら進む。


 前線へ近づくにつれて警戒を高めながら進んでいく。学校で訓練していたとはいえ実際に行うとその空気の違いに緊張気味になってしまう。


 目的地へと向かう途中途中で休憩を挟みながら物資を運んで行く。実践の雰囲気に慣れ始めた頃、騎士の叫び声が耳へ入る。


「敵襲!」


 叫ばれた声の方へ警戒を向けると物陰から獣と人が掛け合わされた様な姿をした獣鬼種の魔族が襲いかかっていた。


 警戒はしていたが前線から距離がまだあるこの場所で襲撃が来るとは思ってもいなかった。もしかしたら、前線であるゼルパ砦が落とされたのかと頭によぎる。


 しかし、落とされたにしては襲撃に来た獣鬼種の数が十数名と少ない。恐らく別働隊が補給を断つために迂回して襲撃に来たのだろう。


 飛び出した獣鬼種の一人が反応が遅れた騎士の一人の喉元に噛みつく。動脈が切れたのか勢いよく血が噴き出る。噴き出た血が次第に勢いを弱め力なく地面へ騎士は倒れた。恐らくもう命は助からないだろう。


 騎士を噛み殺した獣鬼種は直ぐに別の騎士をターゲットにしたが狙われた騎士は上手く立ち回り攻撃を回避する。


「こちらの方が数が多い!3対1以上で相手をしろ!何としてでも物資を守り抜け!」


 隊長の怒号と共に本格的な戦いが始まった。


 ルークな剣の遺物を取り出して獣鬼種と対峙する。獣鬼種が鋭利な爪でルークを引き裂こうと右腕を振るうがルークはそれを力任せに剣で弾く。


 通常の人では力負けするが遺物で強化されたルークには造作もないことであった。


 獣鬼種は爪を弾かれた事によりバランスを崩す。ルークはその隙を逃さず追撃をする。獣鬼種の胴体を狙った斬撃は見事入り大量の血が噴き出る。


 生暖かい血がルークの頬にかかる。


 魔族に勝てる。そう思うとルークの顔が笑みで歪む。


 次の敵を探すため周りを見渡すと複数の騎士が一体の獣鬼種と戦い状況は拮抗していた。数が多いはずの騎士との戦いで拮抗状態になるほど獣鬼種は強い。


「全員!強化薬を服用しろ!物資を何としてでも破壊しろ!」


 今回の襲撃班のリーダー格であろう獣鬼種が叫んだ。それと同時に獣鬼種達は懐から何やら錠剤のような物を取り出して服用する。


 叫んだリーダー格の獣鬼種を見たルークは怒りで頭を埋め尽くした。


 その獣鬼種はエミリーを殺した張本人でガルクと呼ばりていたルークの復讐相手であった。


「ガルクゥゥ!」


 ルークが喉が潰れんばかりの叫び声を上げるとガルク達獣鬼種だけでなく騎士達もルークの方へ振り向く。それを一切気にせずガルクへと突撃する。


 ガルクとの距離はありその間にいた獣鬼種は突出したルークを手頃な獲物とばかりに襲い掛かる。


 多少の怪我を気にする事はなく、襲い掛かる獣鬼を一刀両断しそのままガルクへと突撃する。


 ガルクへと辿り着き渾身の一撃とばかりに力を込めた一撃を叩き込む。しかし、それは寸前のところでガルクの爪で防がれてガルクが後方へ吹き飛ばされるだけになった。


「テメェ、あの時のガキか!」


 ガルクもルークの事を覚えていたらしく、睨みつけながら叫ぶ。


「あの時の殺せなかったが丁度いい。ここで殺してやる!」


 殺意に染まる二人が衝突する。


 二人の攻防に騎士達はおろか獣鬼種でさえ立ち入る事は出来ずにいる。ルークは防御をほぼ捨ててただ怒りに任せ剣を奮い続けた。


 傷が増え続けるルークであったがガルクもまた追い詰められていた。彼はルークの斬撃を爪で防いでいたがその力は遺物で強化されており、腕への負荷は相当なものであった。


 ガルクはこのままでは負けると判断して一旦距離をとり、懐から更に錠剤を取り出して何粒もの錠剤を飲む。


 錠剤を飲むとその効果は直ぐに現れ筋肉が膨張し二回りほど大きく肥大化する。目は充血し真っ赤に染まる。


 明らかに様子が変わるガルクだったがそれを一切気にせずにルークは攻撃を繰り出す。今までは押され気味であったガルクだが逆にルークを吹き飛ばした。


 吹き飛ばされたルークはそのまま木へぶつかり息が口から漏れる。一瞬呼吸が出来なくなり苦しくなる。その隙をガルクは逃さずに腕を振るい追撃を加える。


 反応が遅れたルークは死を悟るがその爪がルークに振り下ろされる前にガルクはそこから飛び避ける。ガルクがいた場所に一本の矢が突き刺さる。


「ルーク! 冷静になりなさい!」


 ペトラの声が聞こえてハッとなる。


「今までの特訓を無駄にする気!」


 再び叫ばれたペトラの声を聞いて少し冷静さが無さすぎたと反省して深呼吸を一度する。あそこまで強化されたガルクを相手に力任せは通じないと考える。


 ルークは剣を赤き刀身へと変えて黒い破片をガルクへと飛ばす。飛ばした破片は全て避けられるがそのままガルクへと突撃する。


 突撃したルークであったが先程とは異なりガルクの力を受け流す様に防御を行いながら剣を振るった。


 吹き飛ばされる事なく攻防が続くが、ガルクの爪がルークの右肩へ擦り血が飛ぶ。痛みによりバランスを崩しそれを立て直そうと後ろへ飛ぶ。


 それを逃さないとばかりにガルクは爪でルークの体を抉ろうと前へ跳ぼうとする。


 

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