第3話 F2

王宮に行ってから数か月、俺は辺境都市周辺の街道近くに念願の薬屋を開いた。

コンセプトとしては飲みやすい、食べやすい薬屋だ。

勇者パーティ時代は薬効優先で飲むのが難しい薬ばかり作っていたので今回からは飲みやすい、食べやすいを目標に薬を調合、それに合わせて食べるとさらに薬効が高まる食品と組み合わせている。

所謂カレーに近いことをしているのだが、この世界ではカレー自体なく、僕が初めての試みみたいだった。


「なあ、薬屋、今からでも悪くは言わねえ薬屋畳んで料理屋に変えろよ。」


「嫌です。

 というか僕は料理人になったつもりは一切ありません。」


「お前さんも頑固だね。

 こんなにも美味しい料理作っておいて料理人じゃないなんて本職が聞いたら泣くよ。」


僕はあくまでも、薬の飲みづらさを解消するために美味しくなるようにしつつ薬効が薄れないように頑張ってるのに、それを料理だなんて言われるのは心外だ。

これを食べ過ぎれば毒にしかならないのに。

本職の人が見れば最も食べやすさを優先した薬だって思う。

そもそもこれはカレーにしてカレーにあらず。

薬効が高すぎて、危険な食べ物だ。


「ソレとお前さんそれだけの香辛料やらハーブやらどこから仕入れているんだ?」


「水瓶の日にひとっ走り一手仕入れているよ。」


この世界では12星座を下にした曜日を3週で一月、10ヶ月で1年とした日程をしている。

360日で一年、そして12日に一回仕入れをすればいいのだから日持ちも良い。

この世界に転生し勇者パーティを追い出されてだいぶ勃つので生活にも慣れた。

でも、魂は故郷をだいぶ恋しんでいたみたいでいつの間にか、地球に行けるようになってたんだよね。


外国人の顔になってたから行ったら行ったで警察に捕まったけど(笑)


「いい加減飯屋に変えろや。

 お前さんの作った飯が食いたくて、領主様が足を運んでるのにお前さんが食わせてくれねえって苦情が来てるぞ。」


「病気じゃない人間にこれを食べさせるとお腹壊すよ。」


「元々薬だもんな、それ......」


今は話しているのは辺境都市最強の冒険者スキン・シャイニング

彼は領主の従弟で使い走りによく来る。

その度に断っているのだが、中々折れない。


___コンコン___


「お客さん来たみたいだから、ちょっと出て行って。」


「探したぞシーザー。

 こんなところで薬屋を営んでいたのだな。」


「これはこれは、マドレーヌ様わざわざお越しいただきありがとうございます。

 急な詰問でお茶も良いのを出せませんがどうぞこちらにおかけください。」


「え?

 マドレーヌって数日前にあった勇者を輩出したマルゲリータ帝国との戦争を終わらせた英雄の?」


僕が店を構える3月ほど前。

勇者パーティを輩出した国の一つがうちに対して戦争を引き起こした。

なんでも魔王討伐を失敗した責任を取らせる名目があったらしい。


半分腹いせのような吹っ掛けでもちろん王様は無視した。

あろうことか決死隊を率いて攻めてきたので全員生かしたまま捕虜にして送り返してやった。

民に罪は無いが、戦争で食い扶持を減らそうって魂胆は目に見えている。

だから我が国は愛情から戻しやったのだと王様の手紙に書いてあった。


その時に、マドレーヌさんに連絡が入ったのだろう。

瞬く間に俺の個人情報は流れ、実家にも言っていなかった潜伏先がバレた。

領主に見つかってる時点で時間の問題ではあったが、予定したよりもだいぶ早く見つかってしまった。

自分の家は貴族家で、跡取り息子でもあるので逃げてきたのに.......


「たった一月で終わる戦争など戦争ではないよ。」


「一月で終わるって言ってもあそこの精鋭たち数千人は出張ってきた聞いたぜ。

 それを全て生け捕りにするなんて正気の沙汰じゃねえよ。」


「そうは言うが君は冒険者と観るが、我々のような軍隊を個人で相手にしたことがあるのかね。

 軍隊は軍隊なりの戦い方をする。

 冒険者とは違って大規模な戦闘を行う。

 頭数が増える分、連携もより綿密に準備を日々行っている。

 今回来たのは経った三千人の精鋭騎士とその倍の兵士、後は農民崩れが一万人要ればいい方だろう。

 二万人は軍からすれば中規模程度の軍隊だが、うち一万は戦闘も知らない素人同然の人達だ。

 ようはヒヨコが寄ってたかって親鳥についていくのと変わりない。」


言いたいことは理解できた。

むしろけがをさせないようにする方に手間取ってしまったと言いたいわけだ。

しかし、農民ですら、練度が低いか。

伍長戦法は取らなかったのかね。

アレをすればだいぶマシになるとは思うが。

そもそも口減らしが目的だから女子供が多かったのかもしれない。


王様から発注依頼があった薬の大半は傷薬と老人や子どもが衰弱したときに呑ませる薬の類だったし、あの時は金に目がくらんで受けたけどよくよく考えればわかることだったな。

居場所には気を付けないとな。


「それで、そろそろ本題に入っても良いか。

 何故、私に何も言わずに出て行ったのかなシーザー。」




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メイン小説

換金スキルとショップスキルでバグ技現代無双〜無限に増える1円玉でスキルを買いまくる~


酔っぱらってダンジョン行ってたらお姉さん持ち帰りしてて朝チュンしてた件~スキル乳化の美肌ボディエステは女性冒険者を虜にする~


こちら二つもよろしければ拝読ください。


スライム道

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